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30話「オンボロ倉庫」

「これは、ずいぶんと古い建物ですね」

「うん。なんか歴史があるって言うよか単純にボロいって感じだね」


 おっさんと合流して見に来た2つ目の倉庫。

 それはお世辞にも金持ちの所有物には見えなかった。

 ここは所謂倉庫街で、似たような建物が多い。

 その中でも、俺たちの目当てのそいつだけは特別だ。

 見た目におっきい木造の倉庫だけど、全体的に薄汚れてて何カ所も補修がしてある。

 たぶん、木が腐ったりして穴が開いた部分を上から新しい木の板で塞いだんだと思う。

 ぶっちゃけただの廃墟にしか見えないくらいの有り様だった。


「どうもさっきの倉庫の前に使ってた備蓄庫らしいんだがな。この様子なら今はほとんど使ってないのかもしれん」


 おっさんの解説で納得。

 つまり新しいの建てたから古いのは必要無くなったってことだ。

 だから放置プレイされて余計にボロくなったんだろうな。


「つーかさ、どう見ても使ってないって、絶対。だってこんな今にも倒れそうな倉庫になんて、必要な物置いとけないじゃん」

「その可能性は高いな。だが、むしろその方が魔物を隠すのに使っている可能性もある。クシャーナ。何か気配は感じるか?」

「いえ、なにも。魔物はおろか、人間もいませんね」

「見張りも無しか……。まぁ、いい。乗りかかった船だ。一応、中も確認だけしておくか」


 おっさんの言葉に頷く俺とクシャナさん。

 ここまで来て外側だけ見て帰るってのもね。


 3人の意見が一致したところで、俺たちはオンボロ倉庫に近づいてみた。

 うん。やっぱりボロ。

 目の前で見たら意外と風格が、とか無い。

 って言うか、ハイパーバリー無しでも蹴ったら穴開きそう。


「さてと、入り口を探すか」


 とか言いつつ、おっさんは正面のおっきいシャッターがある方とは逆に歩いて行く。

 さすがに表からは目立ちすぎるからね。

 やっぱり侵入って言ったら窓とか裏口が相場だ。

 でも普通はそんなに都合よく鍵が開いてたりはしない。

 おっさんはどうするつもりなんだろうな。

 って言うか、さっきの1つ目の倉庫の窓が開いてたけど、あれはどうしたんだろう。


「よし。ここにするか」


 おっさんが選んだのは割と低い位置にある普通の窓だった。

 たしかにちょうど周りからは見えにくい場所にあるから侵入するにはいいかも。

 それにちゃんとした透明なガラスで中が見える。

 見たとこ一応、現場事務所だったところっぽい。

 机とかあってそんな感じ。

 まぁ、それ以外にたいしたものは無いから殺風景だけど。

 でも、少なくとも窓の向こう側に物がいっぱい積まれてて入れないってことはない。

 うん。いいと思うよ。

 侵入経路としてはばっちりだ。

 ただ窓に鍵かかってるんだよね。

 しかも中からしか開けられないやつ。

 おっさんだってそれくらい確認したと思うんだけど、どうするつもりなんだろ。

 まさかガラス割るつもりじゃないよな?

 俺がそな心配をしてると、おっさんんは腰につけた巾着袋から変な道具を取り出した。

 基本は銃のグリップみたいな形。

 そこに小さいモニターと親指で操作出来るアナログスティックが付いてる。

 で、先っぽから細い針金みたいなのが伸びてる。

 なんだろ。

 何に使うのかちょっと分からない。


「周囲の警戒を頼むぞ」


 おっさんはこっちの疑問なんか関係無しに作業に取り掛かった。

 って言うか、作業なんてたいしたもんじゃなかったけどね。

 おっさんは機械のスイッチを入れてから、針金の部分を左右の窓枠が重なってる隙間に差し込んだ。

 それからアナログスティックを操作すると、針金がウネウネって動き出した。

 おっさんはそのまま針金を操作して、窓をロックしてる鍵のレバーを押し下げた。


「あ。開いた」


 レバーが完全に倒れたのを確認したおっさんが、道具をしまってから窓を動かす。

 思ってた以上に簡単に終わらせたな。

 

「って言うか、なんでそんな機械持ってんの? 明らかにプロ用じゃない?」

「これくらい持ってる奴は持ってる。いいから誰か来る前に早く入れ」


 みんな持ってるのか。

 けっこうワイルドなのね。

 とにかく俺たちは窓から中に入って目立たないように身を低くする。


「ここには何もない。奥に行くぞ」


 おっさんの指示に従ってついて行く。

 事務所のドアを出ると、倉庫としての保管スペースが広がってた。


「やっぱり何もないね」


 倉庫の中は空っぽだった。

 建物自体のボロさに比べて、床だけ妙にきれいに張り替えてある。

 ただ残念なことに、それも有効利用されてない。

 最初に思った通り、今は使ってない倉庫なのかも。

 他に部屋も無いし、やっぱりここもはずれか。


「ふむ。妙なもんだな」


 おっさんは1人呟いて歩き出した。

 建物の角まで行くと、今度は壁沿いに歩き出す。

 突き当りまで歩いたら、一歩隣の位置を折り返して逆の壁まで真っすぐ歩く。

 それを淡々と繰り返すおっさん。

 無表情だけど集中してるし、遊んでるわけじゃなさそう。

 でも急になんなんだよ。

 せめて説明してくれればいいのに。

 と、おっさんは不意に立ち止まって俺たちを振り返った。


「あったぞ。ここだ」


 何が?

 そう思って俺とクシャナさんが歩いて近づくと、その間におっさんはしゃがみこんで床を調べ出した。

 ベタベタ両手で触って何かを探す。

 しばらくしておっさんの手がある一点で止まった。

 そこを強く抑えると、床板のごく一部分だけがくるって裏返って取っ手が現れる。

 おっさんがそれを上に引っ張ると、周りの床板が持ち上がる。

 それは地下に続く隠し階段の蓋みたいなものだった。

 こんなのよく見つけたな。

 って言うか、まず探そうと思った方がすごいよ。

 これも経験則から来る勘ってやつ?


「それじゃ下りてみるか」


 おっさんはにやりってすると、階段に一歩踏み込んだ。

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