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二つ名をしがない盗人から不死身の盗人へ変えてみた

 が、すぐに立ち止まり廊下のど真ん中で立ち尽くすユーマ。その距離は5メートルほどの微妙な間がある。そんな堂々とした動きに虚をつかれ、驚いた表情でそれを見つめる用心棒達。

「な、何者だ!」


「しがない盗人でーす。お宝頂きにきました」


 それを聞いて、柱の陰から慌ててカノンは言う。

「あんた、ば、ばかじゃない!?」

「大丈夫だって」

 用心棒の片方が走って向かってくる。眼鏡の用心棒は、懐から銃を取り出し構えた。

「頭上にご用心」

 そう言うと、ユーマは手投げ矢を上に投げつけ、照明器具に当たった。そのガラスは走ってきた用心棒へ容赦なく降り注ぐ。

「うわっ」

 思わず頭を抱え後ろに飛びのいた用心棒。照明が消えたことで、視界は悪くなり頼りになるのは窓から入る月明かりのみ。


 ユーマはサッとよろけた用心棒に向かい、ダガーで胸をひと突きする。その勢いのまま、相手の体を力ずくで2メートルほど押していき、用心棒の体を盾に、眼鏡の用心棒へ体当たりをする。


「中々、腕が立つようですね」

 突進してくる、元同僚の体を正面から蹴り止め、銃を構える。

「!」

 その体の後ろには、すでにコソ泥の姿はなくなっている。

「残念!」

 背後を取ったユーマに、体制を崩してもすぐに銃口を向ける用心棒。そして、2発銃弾が放たれる。

「うおっ!」

 情けない声をだし、咄嗟に体を捻り避けるユーマ。相手の距離が近くなり、短刀を腰から取り外す用心棒。

「私の名はエリオス。真実を守る者。侵入者をこの扉の先へ通すわけにはいかない」

「…へえ。その先にある真実ってのを俺は欲しいんだよ。少し面白くなってきたな」

 二人は刃物を打ち合わす。その衝撃で何度も火花が散り、目にも留まらぬ速さでの攻防が繰り返される。

「うそ、み、見えない」

 驚愕するカノン。


「おいおい。用心棒さん。様子見はこれくらいにしようぜ」

「あなたを倒す前に名前を聞いておきましょう」

「ああ… あれだ。あれ、かっこよかったな。俺もそうする。『真実を守る盗人ユーマ!』… いや、あんまかっこよくないか。えっと… 真実を盗む、奪う… 世界の覇者…?」

「あんた、この状況でそんなくだらないことを考えてんのよ!」

 はっと何かを思い浮かんだユーマ。

「よし、不死身の盗人ユーマだ」

「全然違う二つ名になった! あんた、そんなこと自分で言って恥ずかしくないの?」

「恥ずかしくない」

 

 ユーマは懐から手投げ矢を取り出し投げつける。

「パターンが同じですよ。目くらましをして、相手の背後をとり攻撃をする」

 エリオスは片手で短刀を振り手投げ矢をはじく。

「じゃあ、正面からいく」

「!」

 そこへ正面から突っ込んでくるユーマの攻撃を交わし反対の手にある銃で撃つ。


 バキューン!


「うっ」

 胸を押さえるユーマ。手の隙間からは抑えきれないほどの血が流れる。

「無防備に近づくからだ」

 膝から崩れ落ちるユーマに対し、ゆっくりと近づきその傍にしゃがみ込む。

「こんな… ところで、俺は… 」

「ここ最近の中では、一番楽しませてもらいましたよ」

 ぐしゃっと力なく倒れる。

「…なんちゃって」

「!」

「同じセリフをお返しするぜ」

 油断したエリオスの胸を刺し、不敵な笑みを浮かべ立ち上がるユーマ。

「な、なぜ」

「言っただろ? 不死身の盗人だって」

 カノンは、口を押える。

「う、うそよ。どうして」


「なあ、エリオス。真実を守る者よ。お前は真実を語る必要はない。なぜここに勇者の財宝があるのかなんて理由はどうでもいいんだ。ただ、使命を全うできなかった。それだけを胸に抱いて、後悔と屈辱の中で死ぬがいい」


 すっと、エリオスの胸元から扉の鍵を取り出す。その手を掴むエリオス。

「き、貴様なんぞに、それを持つ資格はない。ただのコソ泥風情が…」

 掴まれた手を払いのけ、その手を踏むユーマの目は笑っている。

「俺、割とSなんだよねー。あんたみたいな気取った大人見ると地面にひれ伏させたくなるんだ。永遠に起き上がれないだろうけど」

「ッ… ソー… マさ、ま」

 ユーマの顔色が一気に変わる。

 エリオスの銃を拾い上げ弾がなくなるまで相手の体を打ち続けた。

 カチ、カチという銃の音が響く。

 その光景に顔を青ざめるカノン。空になった銃を捨てにこりと笑うユーマ。

「さあ、このカギでお宝へ続く扉をあけようぜ」

「え、…ええ」

 エリオスに刺さったままのダガーを抜き取り、パッと血を振り落して扉の前に立ち止まる。

「さあ、いよいよだ」 

彼は、戦闘になると「ドS」へと変身するようです。

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