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私は知らない


色々なことがやっとで一段落したので…


活動再開いたします!!




 学校に着くと、まずするのは昼寝である。やはり夜間のバイトをしていると時間の軸が崩れてしまうし、さらに寝不足が重なり集中なんて1ミリも出来ない。


――別に授業など受けなくても学力がほかの人間と劣ることはない。


 教科書の内容を覚えればなんとかいけるものである。授業中に教室に寝ていても、常習犯の紗那は教師に注意されることはない。安心して眠っている彼女に皆口をそろえて「うらやましい」と言うのだ。その意味がよくわからない。


 教師というものは、教科書や参考書の内容をいかに生徒にわかりやすく、覚えやすく教えるのが仕事である。つまり、テストの問題というものは教科書の内容、参考書の内容が入っているのだ。それ以外の応用というものは数学などの数字を使うものである。暗記問題の場合は、ただ全文を暗記すれば簡単なものだ。数学の場合、いろいろな問題を解けば簡単に解ける。


 生徒に昼食の時間だと告げる学校独特の鐘の音を目覚まし代わりに、紗那はまるで今まで起きていたように何事もなかったかのように弁当を片手に歩きだした。


「あっ!紗那待って!!」


 後ろから早苗が弁当を持って走ってきた。高山の雪(紗那は高山の新雪のような美しさと、簡単には会話さえもできないため、このようなあだ名が付いた)と有名の紗那が唯一一緒にいる早苗は、紗那の手を引っ張り、足を止めさせる。ぴたりと紗那が止まると、早苗は嬉しそうに笑った。そして顔にへばりついた茶色がかった髪を優雅にかつ女性らしく取り、口を開く。


「一緒にご飯食べよっ!」


 すると紗那はわずかに表情を哀しそうに歪め、小鳥のさえずりの様な小さく弱弱しい声でひとり言のように呟く。


「私と一緒に食べるよりほかの人と食べたほうが楽しいんじゃないか?」


 そんな回答が返ってくるとは夢にも思わなかった早苗は、いつもは見せない怒りが含まれたような哀しい表情で、無言のまま紗那の腕を引っ張る。転びそうになりながら、彼女は早苗に引かれて付いて行く。いつもの屋上の扉の前に着くと、くるりと早苗は紗那に向き直った。その表情は、背筋に悪寒が走るほど怒りが感じられた。そして、人差し指を紗那の顔の前に突き出し、階段に響くほどの大声で言う。


「あのね。あたしは紗那と居たいからいるの!まぁ紗那が一緒にいたくないって言うなら無理にいないけどさっ」


「・・・私は、早苗の事を考えて」


 早苗はいきなり指していた右手を振り上げる。高山の雪である紗那はやはり普通の女の子でもあるため、反射的に目を瞑る。しかし、待っていた痛みは来ずに頭の上に何か乗る感触を感じた。温かいものが、空気に触れて冷たくなっている髪を融かして行くような感覚が体を支配していく。そっと目を開くと、優しく子供をなだめるように笑う早苗の顔がすぐ目の前にあった。


「ばぁか。何年一緒にいると思ってるのよ。今更私を捨てるつもり?」


 首を横に振る紗那。彼女の表情はずっと変化しないが、心の中はいろいろな思いが渦巻いているのだろう。くるりと早苗は紗那に背を向けて、屋上の扉を開く。


 雪解けを催促する春の陽のような光が、紗那の顔めがけて差し込んでくる。暗闇の中からいきなり光のある世界から出てきたように、一瞬目がくらみ、光に慣れると扉を開いて待っている早苗がそこにいた。紗那は目を細めて、屋上へと向かった。


その時


「あの・・・ご会談中失礼します」

 あと一歩で屋上へと踏み出せるというところで、後ろから声がした。とこかで聞いたことのあるような、そんな男の声。振り返るとそこにいたのは・・・・


「なんという展開だ」


 紗那は小さく呟いた。案の定というべきか。細身でさわやかな笑顔を浮かべた東条悠だった。明るい所でみると、ルックスは完ぺきで、整った黒髪は好青年の印象を受ける。いや、優等生と言うべきか。


「一体何の用ですか?私たち友情を深めているところなんですけど」


 嘘くさい笑顔が嫌いな早苗はあからさまに嫌そうな表情をした。そして、紗那を守る様に腕を組んで悠の目の前に立つ。さらに嘘くさい笑顔を絶やさない彼は、制服のポケットの中から彼のものではあり得ないような女物のハンカチを取り出した。


「これ、落としましたよ」


 あぁなんという少女マンガのような展開。こいうのって私の性に合わないというか、なんというか、その・・・

”吐き気がする”


 紗那のハンカチを悠から奪い取る様に早苗が受け取った。小さく舌打ちが聞こえたのは、気のせいだろうか?


「んで?用件はそんだけ?」


「あぁ、あとひとつ」


 ゆっくりと、まるで足音をたてないように気をつけて歩いているかのごとく慎重にこちらへ歩いてくる。


紗那は女子的には特に小さいという身長ではないが、彼は長身であり紗那と頭一つ分以上身長差があるため紗那は見上げなくてはならない。


本心ではかなり不満に思っているだろうが、口にも表情にも心境を現さずに目の前の長身野郎を睨み付ける。


「何用だ」


彼は爽やか笑顔のまま、まるで挨拶をするようにさらりとこう言いやがった。


「僕とつきあって下さいませんか?」


空気が急激に冷えた…そんな感じがした。


週一投稿頑張ります!!



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