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チャプター10:「寄り添い合う少女たち」

「……そういえば、オフィサーとマエナは?」


 そんな所に関わる会話が一区切りした所で。レフィンは他二人、彼女たちの長であるオフィサーと、マエナと呼ばれていた少女の所在が気に掛かり。

 二人の姿を探して周囲を軽く見回しながら、ステラに尋ねる。


「二人とも、ここのシャワー借りに行ってるよ」

「……マエナとオフィサーが、一緒に?」


 次にステラが述べたそんな回答に。しかしそれを聞いたレフィンは、さらに訝しむ色で返す。


「うん――あっ、丁度来た」


 それにまたステラが肯定で返した直後。彼女は背後に気配を感じ、そして次に振り向き見つけた「その」姿から、場の皆に知らせる声を上げる。

 空港ロビー空間の向こうより、今に上がった二人。オフィサーとマエナが歩き向かってくる姿が見えた。


「ふふっ、久しぶりに体を癒やすことができましたね」

「あ、あぁ……」


 言葉を交わしながら現れた二人は、どちらもボディスーツの下半身部分だけを、ズボン代わりにツナギのようにして纏い。上半身はインナーのトップだけという簡易な姿。

 その格好と、そして漂うホワとした雰囲気から、湯上りの様子であることは一目で判別できた。


「マエナ……まさか、オフィサーと一緒に入ったの?」


 そんな現れた二人に、間髪入れずに一番にレフィンがぶつけたのは。何か微かな困惑の色を混ぜてのそんな言葉。


「あっ、レフィン。えぇ、ご迷惑を掛けたお詫びに、お体を流させてもらおうと思って」


 そんなレフィンのぶつけた質問に、それを向けられたマエナはほんわりと、そしてキョトンとした色で答える。


「オフィサー、マエナ……『異性』同士でそれは……」

「……」

「えぇ?オフィサーも身は女性ですし、問題ないかと……?」


 そんな回答を受け、次にまたレフィンが向けたのは、少し濁す色でのそんな異を唱える言葉。

 それにオフィサーはバツが悪そうに、そして見れば少し赤らめた顔で、視線を逸らすが。

 マエナにあっては、「ハテナ」という様子で返す。


「ん?」


 そんな少女たちの会話の内容に、含まれたワードに。引っかかる所を覚えたのはアイザックと中尉。

 そして中尉が代表するように声を割り入れ向ける。


「あぁ。オフィサーはね、心が……と言うか元は男性なの」


 そのアイザック等の疑問を察し、次にはステラがそんな明かし暴露する旨を、あっけらかんとした色で紡いで見せる。


「オフィサー」

「あぁ、それは別に伝えて構わない……隠していることでもない」


 その次、レフィンはまずは一度、オフィサーに『そのことを話していいか』確認する声を向け。

 オフィサーはそれに、構わない旨で回答。


「私たち強化人間のボディは、適齢の歳の「女」しか適合しない……そんな『人間で無くなった女』である私たちに、少しでも近しい形となり寄り添うためと、オフィサーはその身を女に変えたの――」


 そして次にレフィンが紡ぎ明かしてみせたのは、そんな事実だ。


 エクスティアの生み出した技術、「強化人間」は。そのボディには適齢の『女』の精神しか適合できないのだという。

 その適齢とは『少女』と定義される程度の若さである事。

 そしてその少女たちはその若い精神で、『人間で無くなり、兵器となる』。


 言葉に漂う通り、それは過酷なもの。


 その少女たちの長となったオフィサーは、その彼女たちに少しでも寄り添うために。

 また別のエクスティアの持つ技術で、男性であったその体を女性へと変じる措置を行った。

 とのことであった。


「半端ではない覚悟だな」

「いや……己に戦う運命を貸した彼女たちに比べれば、自己満足でしかないさ……」


 そんな境遇、身の上が明かされたオフィサーに。アイザックはその覚悟を察し、評する言葉を向けたが。

 それにオフィサーは、憂い自嘲する声色で返す。


「そんなことはありません!オフィサーは元より、並みではないそれで私たちに寄り添ってくれた!その上、私たちのために自らの身を変えることまで……っ」


 オフィサーの憂いに、意義の言葉を上げたのはレフィン。


「だから私は……オフィサーから絶対に離れません……っ」


 そして次に紡がれたのは、レフィンの決意の言葉。


「オフィサーは、私たちにとって支えなんですよ?」

「だから、もうちょっと自分の貴重さを自覚して欲しいんだよね~」


 続け、オフィサーの隣に立つマエナが、柔らかい声でそんな伝える言葉を向け。

 ステラも揶揄う色でそんな言葉を向ける。


「皆……ありがとう……」


 彼女たちの間には、昨日今日のそれではない強い結びつきがある。

 それがその様子からだけでも、明確に伝わってきた。


「だから……もっと私たちの献身を受けて欲しいんですよ?」

「っ……」


 しかし、そこから話題は戻り。

 オフィサーの隣に立つマエナが、次にはオフィサーの体に柔らかい動きですり寄る。


「!、マエナ……っ」

「オフィサーは私たちに寄り添うためにこの体になってくれたんです。だから私たちからも、お近づきになるべきでは?」


 そんなマエナの行動に、レフィンは咎める声を上げるが。

 一方のマエナが宣うのはそんな言葉。


「っ……!ならば……オフィサーっ」

「えっ」


 そんな旨を受けたレフィンは、次には何か火が付いた様子で。

 踏み出しオフィサーに近づくと、マエナが居る側とは反対に位置取り。オフィサーの腕を取って体にすり寄った。


「次は、私がオフィサーの湯浴みにお供しますっ」

「いや、そこまでしなくても……っ」


 そしてまるで競うように宣言したレフィンに、オフィサーは困惑の声を上げる。


「ふふ、レフィンもまた先日で恩が増えましたもんね。じゃあ、皆でオフィサーに尽くしちゃいましょうかっ」


 そんなオフィサーとレフィンのやり取りを反対から見ながら。しかしマエナにあってはまた柔らかい様子で微笑みつつ、そんな揶揄うような言葉を紡ぐ。


 中身は男性である美女を、美少女二人が囲い。ある種では取り合う様子。


 オフィサーは少女たちから、少なからずの「重い感情」を向けられている様子が垣間見えた。


「いつもこうなの?」

「まあねー」


 そんな様子の美女と少女たちを、呆れ混じりの生温い視線で見つつ、尋ねた中尉に。

 ステラはまた生温い声色で、そんな肯定の回答を返す。


「姦しいことで」


 次には中尉は、両手を翳すジェスチャーでまた呆れを示しつつ。アイザックに振り向き共感を求める視線を向けたが。

 方やアイザックは、「いかなる形も自由だ」と。否定も肯定も無い様子で、いつもと変わらぬ淡々とした顔色様子を見せるのみであった。


「何にせよ、本国から君等を担当する省庁職員が到着するまで、もう少し掛かる。それまでゆっくり、好きにしていてくれ」


 そして場を締めくくる様に、もしくは姦しくやり取りをする少女たちを放って置くように。

 アイザックはそんな言葉を紡ぎ伝え、そして身を翻して場を後にしようとする。


「ん?これからまた、何かするの?」


 しかしその動き様子にステラは察するものがあり。

 アイザックを呼び止め、そんな尋ねる言葉を向ける。


「これからまた、「目的」の一つを確保しに行く」


 それに軽く振り返りつつ、しかし歩みは止めず。

 アイザックが伝え返したのは、そんな明かす言葉であった。

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