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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

リップガール 体験版

作者: 三篠森・N
掲載日:2026/06/26

 二〇二六年。

 あの侠客(オトコ)が帰ってきた。


「よく帰ってきた、カツオ」


 カツオ。山籠もりを終えたばかりのカラテカである。全国最強を謳うカラテ一門の館長の息子であり、師範。身長一八八センチ、体重一一五キロ。天賦の才に任せた苦労知らずのボンボンは生まれた時からカラテカに囲まれ、カラテで倒してきた。つまりカラテに満たされていた。

 館長である父ビンチョウはカツオをカラテに飢えさせるため無期限の山籠もりを命じ、エリートの知らない無頼、野性という名のオリジナルを覚えさせた。


「ついに天下一武極道トーナメント大会が開かれる。お前も出ろ、カツオ。優勝賞金百万円、そして準優勝者の小指が与えられる」


「誰に負けた、親父」


「お前が勝ち進めばいずれ当たるだろう」


 カツオも山で耳にした。

 ビンチョウがカラテカ以外に敗れたことを。そしてカラテ、柔道、カンフー、どこにも属さぬ無形の格闘家が、各種大会に参加してそのルールでエキスパートを破っているということも。


「こちとら千疋屋のパフェ。コンビニのパフェに負ける訳にはいかねぇんだよ!! カツオ……。まずはカラテで日本一になれ。その次は、カラテで世界最強だ。お前が見せつけろ」


「押忍!」


 その時だった!


「か、館長! 師範! 道場破りです!」


 ガラスを叩き破り、乱入してくる道場破り! 道場破りは既に看板を奪い取り、その看板にサーフボードのように飛び乗って乱入してきたのだ。

 あまりにも常識外れの光景に、道場にいたものはそれを見上げて。硬直した。

 それは、女だった。汚れもくすみも一切ない純白のジャージ、側面を沿うサファイアブルーのライン。

 間違いない。今、武極道界隈で噂の……。


「リップガールだ! リップガールが出たぞぉぉぉ!」


 〇主人公を選択してください

 ▶ リップガール


 道場に着地したリップガールはまずは騒いだ門下生を無造作に殺害し、神棚の下にいる館長ビンチョウ、師範カツオを眺めてリップの塗られた艶やかな唇の端に笑みを浮かべた。カラテ道場において権利書以上に大事な看板を奪い取り、門下生を殺し、土足で道場を穢す! これでビンチョウ、カツオの侠気オーラが高まらないはずがない。


「キラァッ!」


 門下生がまた死ぬ!

 そういえば聞いたことがある。リップガールはヤクザを殺す。ヤクザを殺すことに躊躇いがなく、あちこちでヤクザがリップガールに惨殺されているという。


「キラァッ!」


 門下生がまた死ぬ!

 そういえば聞いたことがある。リップガールは名の通り体から刃を生やし、超人的な身体能力でヤクザを殺すという。


「キラァッ!」


 門下生がまた死ぬ!

 そういえば聞いたことがある。リップガールは呪いをかけられ、全身刃物の体になった。その呪いを解くためにヤクザを殺す必要があり、こうやってヤクザを殺しているという!


「殺してやる。殺してやるぞリップガール」


 門下生が全滅。ビンチョウとカツオはついに構えをとり、侠気オーラを練ってカラテに込めた。リップガールの目の色が変わり、危険な喜色に輝き出す! そういえば聞いたことがある! リップガールがヤクザを殺すのは、ヤクザの持つ侠気オーラを集めることで呪いが解かれるからだと!


「キィラァッ!」


 目にも止まらぬ連撃! 白刃が描く線が面に変わった。ビンチョウの上半身は空気と肉が程よくミックスされたムース状になり、湯気めいて侠気オーラが噴き出した。

 そういえば聞いたことがある! リップガールはただ刃物の体で敵を “切り裂く(リップ)”するだけでなく、時折必殺技じみた攻撃を繰り出すと!


「よくも親父をォォォ!!!」


 カツオはカラテにカラテを練り、全身の筋肉が侠気オーラで活性化した。隆起した筋肉で黒帯が千切れ、激しい侠気オーラが噴出し、顔面は激怒に光る目以外が黒炎に包まれた。この状態のカラテの一撃はヒグマを一撃でハンバーグにする。もはや人間とは呼べぬ姿だった。


「……」


 BLAM! カラテカの間合いの外からリップガール発砲! 眉間、肺、喉に銃弾を叩きこまれたカツオの生命力と共に侠気オーラが掻き消え、血を噴き出しながら道場に倒れ伏した。

 もう道場にヤクザはいなかった。死んだヤクザと、もう数秒で死ぬヤクザを除いて。

 そういえば聞いたことがある……。リップガールの殺しに美学はないと……。

 仰向けに倒れたカツオが見たのは、天井に向かって消えていく自分の侠気オーラだった。門下生のオーラと色が違っていた。


「……」


 RIP GIRL WIN!




【RIP GIRL】


 PRESS ANY BUTTON

  ©2026 Shin N. Sanjoh




 Now Loading…




「こんちは、フェイシャル」


 THE() FACIAL(フェイシャル)

 この世のものとは思えない美貌と美声の持ち主にして情報屋。オタク最後の砦に籠り、インターネットと繋がらないビデオテープや紙媒体の書籍といった旧世代の文化で娯楽を嗜み、そういったものの修理、改造を行うのが表の顔だ。愛想もいい。だがモテない。


「やぁ、リップガール」


 THE() RIP(リップ) GIRL(ガール)

 美人だがモテない乙女。いつでも同じ純白にブルーのラインのジャージ、それでも乙女の嗜みとして唇には薄い色付きリップを塗っている。

 今、ヤクザの中で最もホットな女性であり、ヤクザ専門の殺人者として指名手配されている。手配書も殺意を煽るよう人相悪く手が加えられている。


「今、少しだけ手が離せないんだ。メニューを見ておいてくれ」


「了解」


 【フェイシャルの店/ FACIAL`s Shop】

 オーラ清算/Aura

  買う/ Buy

   装備/Equip

▶   話す/Talk

     またね/Leave


「今、少しだけ手が離せないんだ。メニューを見ておいてくれ」


 【フェイシャルの店/ FACIAL`s Shop】

 オーラ清算/Aura

  買う/ Buy

   装備/Equip

▶   話す/Talk

     またね/Leave


「今、少しだけ手が離せないんだ。メニューを見ておいてくれ」


 【フェイシャルの店/ FACIAL`s Shop】

▶オーラ清算/Aura

  買う/ Buy

   装備/Equip

    話す/Talk

     またね/Leave


「オーラの清算だね。うん、また侠気オーラが回収されているみたいだ」


「あんまり強いヤクザはいなかったみたいだけど」


「うん……。残念ながら侠気オーラの効率を高める強化個体とはほとんど戦わなかったみたいだね」


 旧世代のオフラインデバイスでリップガールが今回回収した侠気オーラを確認するフェイシャル。長いまつげは瞼の小さな動きで大きく揺れる。そして直接顔を向き合わせるよりも、こうして一方的に眺める方がリップガールは恥ずかしかった。

 リップガールはフェイシャルに惚れていた。


「でも二人だけスーパーヤクザがいたようだね」


 Tips スーパーヤクザ

 →ヤクザの強化個体。通常ヤクザを上回る戦闘力を持ち危険度も高いが、侠気オーラ回収率も高い。


「あのカラテカか。二人だけオーラの色が違うカラテヤクザがいたよ」


「もしかして、一人は若くなかった?」


「若かったよ。わたしやフェイシャルより少し年上かな」


「それ、多分最近確認され始めた黒帯ヤクザだ。若いヤクザネイティブの武道家を黒帯ヤクザというスーパーヤクザの亜種に分類しようって言う風潮が情報屋の中で高まっている」


「その黒帯ヤクザは、普通のスーパーヤクザよりオーラ回収率は高いの?」


「ちょっとね。ちょっとだけ高いよ」


「わたしにとっては都合がいいな。今のところスーパーヤクザも黒帯ヤクザも苦じゃなかったしね。ということで、次の仕事なんだけど」


「OK。天下一武極道会だね。偽造の身分証は用意して、出場登録もしておいた。あとは当日会場に行けば参加出来るよ」


「いつもありがとうね、フェイシャル」


「いいんだ。武極道会に参加したスーパーヤクザが黒帯ヤクザ化しているかどうかもわかるしね。それより、買い物はどうだい? 春物コーデが入ったんだ。きっと君に似合うよ」


「……どうせ、侠気オーラじゃないと買えないんでしょう?」


「それは仕方ないよ……。じゃあ、オーラは貯めておくかい?」


「うん、貯めておく。じゃあ、また来るよ、フェイシャル」


▶    またね/Leave




 Now Loading…




 天下一極武道会!

 カラテ、柔道、剣道、相撲、合気道、カンフーなど、暴力を型にハメたヤクザの競技大会! ヤクザの闘争本能が解放され、試合中の殺害も可能だが武とは暴を理性で収めるためのもの。基本的に不慮の事故以外の死亡例は少ない。途中棄権は可能! ただし決勝戦で敗れたヤクザはその場で小指を詰め、優勝者に差し出す必要がある!


「カラテカのカワカミ・キリコ・ジャスティスです」


「押忍。出場者登録されています。控室へどうぞ」


 受付ヤクザに名前と偽装身分証を見せるとすぐにリップガールは控室に通された。

 精神統一、ストレッチ、ゆっくりと型の確認。出場ヤクザたちはそれぞれの方法でコンディションを調整していた。

 そして、指名手配書の顔が悪い人相に改造されているせいで、全国のヤクザが首を狙うリップガールがやってきても誰も賞金首とは気づかなかった。


「……」


 リップガールは部屋の隅でスマホをタッチした。血判の捺された依頼書の写真。文字は小作りで丸みを帯びている。女性の字だった。ヤクザカラテの道場に入門し、入門翌日にシゴキで恋人を殺されたカタギの女性。彼女はリップガールに道場破りを依頼した。ヤクザ専門の殺し屋であるリップガールのもとにはしばしばこういった依頼が届く。

 既にその道場の看板は頂戴したので依頼は達成し、良心的な金銭を受け取ったが、金でリップガールの呪いは解けない。だが黒帯ヤクザの侠気オーラ回収率が高いのならば、黒帯ヤクザを殺してみるしかない。


「おい女ァ」


「……」


「聞こえているのか女ァ!」


「なんスか?」


「その服装はなんだァ! カラテカなら道着を着ぬかァ!」


「ジャージしか持ってないんスよ」


「女ァ、貴様師匠は誰だァ! 武道家の風上にも置けんぞ!」


「失礼、先程からわたしを女、女と言うけれど、レディ、あるいはガールと呼ぶ方が品性があるんじゃない? わたしの知っている最高の男ならそう呼ぶよ」


「なんたる惰弱! 軟弱! 貧弱! そいつも侠客(オトコ)の風上にも置けんぞ!」


 あー……そうかァ……。

 このままトーナメントに参加して一試合ごとに一人を殺すより、この場で殺害開始すれば全員殺せるのだ!


「キラァッ!」


 座った姿勢のまま、因縁ヤクザの腹部に正拳突き! 背中から刃と血が噴き出し、リップガールは吐血の返り血を浴びた。刺された因縁ヤクザの侠気オーラが燻ぶり、霧消した。


「エ?」


「リップガールだァァァ! リップガールが出たぞォォォ!!!」


 立ち上がり、拳を構えるリップガール。その拳の先から、三十センチ程、血が浮かんでいた。不可視の刃。付着した血だけが、その刃の存在をヤクザたちに伝えていた。


「リップガール! 貴様を殺して名を挙げる!」


「キラァッ!」


 突撃してきた柔道ヤクザの太もも、腹に二連パンチ! のけ反った顎にアッパーでトドメを刺し、大きく拳を振ると顔の下半分がミンチになって弾け飛んだ。

 体の前面に夥しい血を浴びてもなお、リップガールのジャージは純白だった。


「キラァッ!」


「ギャバァ!?」


 そう、これがリップガールにかけられた呪い!


「キラァッ!」


「ギャバァ!?」


 先祖が犯した辻斬りの業を背負う全身刃物のリップガールは、好きな服を着ることが出来ない!


「キラァッ!」


「ギャバァ!?」


 実際にはブラとショーツしか身に着けることが出来ない! ジャージのように見えるものは、リップガールを視認したものの脳が「ジャージを着ている」と誤認する“着衣錯視”の能力であり、実際に純白のジャージは存在しない!

 リップガールが浴びた生臭く生温かい返り血は、すべてリップガールの肌を直に伝う。殺しの実感として!


「ブッ殺すぞコラァ!」


 最後に残ったのは優勝候補カラテヤクザ。居合めいた神速の正拳突きは音速を超えるという。侠気オーラの色が明らかに違う。道場破りの際に倒したカラテヤクザよりもさらにオーラの色が濃い。黒帯ヤクザの中でも格別の密度だ。


「キラァッ!」


「ギャバァ!?」


 だがリップガールの戦闘力はその遥か上を行く!

 殺しも殺したり、武道ヤクザ約五十人。参加予定者、リザーバーに至るまですべての武道ヤクザの侠気オーラを回収したリップガールは、血の足跡を残して武道会館を後にした。


「これで新しい服が買えるかな。……R.I.P、ヤクザども」




 Now Loading…




「こんちは、フェイシャル」


「やぁ、リップガール」


 【フェイシャルの店/ FACIAL`s Shop】

 オーラ清算/Aura

  買う/ Buy

   装備/Equip

▶   話す/Talk

     またね/Leave


「今回は少し危険なカチコミだったかもね。武道ヤクザ五十人は女の子にはハードすぎる仕事だ。ケガはなかったかい?」


 ほら、見ろ。リップガールの知る最高の男は、女性を丁寧に扱う。


「別に……」


「照れるなよぉ。君が強いのは知っているよ。本当に苦じゃなかったんだろうね」


「着衣錯視の春物コーデ、まだ残っている?」


「ああ。見本を持ってくるよ」


 質素だが、今のジャージと同じ色のはずなのに印象が一八〇度違う清楚な白のワンピースに爽やかなブルーのアウター。これを着てフェイシャルと一緒に外を歩けたらどんなに素敵だろうか。


「どうする? 買う? それとも獲得オーラは呪い解除のために貯めておく?」


「迷うなぁ」


 かなり遠大な計画になるが、ノルマまで侠気オーラを獲得すれば呪いは完全に解け、全身刃物の体質もなくなって本当に好きな服を着ることが出来る。ここで春物コーデを買っても着衣錯視のバリエーションが増えるだけなのだ。


「貯めておく」


「そっか……」


 むしろ、残念そうなのはフェイシャルの方だった。

 そう。フェイシャルもリップガールに惚れていた。


▶   話す/Talk


「そういえば、ヤクザたちはリップガール狩りに本腰を入れるみたいだ。スーパーヤクザよりも強力なサイキックヤクザ、サイボーグヤクザ、ヤクザニンジャたちが君を探している。黒帯ヤクザとはレベルが違うよ」


「倒して侠気オーラを回収するまでよ」




 Now Loading…




 二〇二六年。

 高度なAIの普及により人類の大半がAIに仕事を代行させ、堕落した世界。

 最後に世界を支配したのはAIが代行出来ない“暴力”を生業とするヤクザだった!


 ヤクザたちは大日本極道帝国の建国を宣言。

 AIとヤクザが支配するこの国で、“先祖の犯した罪”による呪いを背負った若者たちが、戦いに身を投じる――!!


 先祖の人斬りの罪を背負うリップガールことカワカミ・キリコ・ジャスティス。

 呪いを解いて刃物の体をもとに戻し、愛するフェイシャルに抱きしめてもらうため、今日も彼女は戦い続ける!


 To be continued...





体験版はここまでとなります。続きは製品版でお楽しみください。

製品版は2027年内の配信を予定しています。また、開発状況により配信時期が変更となる場合があります。予めご了承ください。


This is the end of the demo.

Please enjoy the rest in the full version.


The full version is scheduled for release in 2027.

Please note that the release schedule is subject to change depending on development progress.




【RIP GIRL】

  ©2026 Shin N. Sanjoh

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