鉄の塊と書いて飛行機と読む
飛行機は嫌いだ、この鉄の塊が空を飛んでいる理由もわからないし、一度離陸したら着陸するまで生か死しかないことも、なんてギャンブルをしているんだ、と頭を抱えたくなる。少し下降する度に内臓がせり上がってくる感覚、風が原因らしく、大きく揺れる機体。
ああ、これだから飛行機は嫌なんだ。目をつぶりアウターを握り締める私の肩をたたいた友人は「外、見てみなよ」とだけ、今から楽しくて仕方がないという声だった。
友人の方に顔をやると、もう先程配られたイヤホンをつけ、目の前のタッチパネルで見ることができる映画を物色している。
話をして気を紛らわせるつもりだったのに、薄情なやつめ、心のなかで悪態をつきながら、おそるおそる窓の外にピントをあわせる。少し前まで私たちが居た東京は、黒い布にラメ入りの化粧品をぶちまけたような、光る魚がいるらしい深海とはこういうものなのかもしれない、と思わせるようにひろがっていた。
慣れたら快適でしょう、あはは、なにその顔、本当に嫌なら代替案出せばよかったのに、なんで出さなかったの、きみ、変に頑固だからなあ。
良い映画がなかったのか、映画に飽きたのか、彼女はイヤホンを片方外しながらお行儀よく声をおとして笑う。
最後まであなたの近くにいることができるなら、悪くないかもしれないと思ったから。
なんて、不謹慎で少女趣味丸出しのことを言えるわけがない。代替案を出さなかった理由、あらためてあまり褒められたものではないな、と、なんだか、きまりが悪くなって彼女から目を逸らす。
女は度胸でしょ、とだけ呟き、これ以上の追求はやめてくれというふうにヘッドフォンをつける。不謹慎で少女趣味、そんな思考を手放すために眼下に広がる深海に逃げ出した。




