第六十話 実力者達 隠と守
D班の二次試験が終わりを迎え、受験者達は静かに訓練場を後にしていった。
興奮と疲労、達成感と悔恨。
それぞれが異なる感情を抱えながら、足取り重く、あるいは呆然としたまま退場していく。
その様子を、シロエは少し離れた位置から眺めていた。
白い髪が風に揺れ、その表情は相変わらず凪いでいる。
視線は次の班へと、すでに向けられていた。
やがて、E班が訓練場へと姿を現す。
先頭を歩くのは、ひときわ目を引く大きな体躯の男だった。
群を抜くその体格を揺らしながら、堂々と前に立つ。
今期の四席、ドーグ・アンカー。
手には巨大なランスを携え、その重量感が彼の存在感をさらに際立たせていた。
「この班は突出した者は見られないけど、ある意味一番バランスが取れているわね」
エルサは資料に目を通しながら、淡々と評価を口にする。
「そうだな、特に三席、四席がいる。
こいつらがどうまとめるかも見ものだな」
ショウもまた、視線を資料と訓練場とに行き来させながら、注視していた。
「あれ?でも三人しかいないよ?」
アヤメが不思議そうに、見える人数を数える。
その疑問に答える間もなく、試験は始まった。
今回投入されたダミーヴォイドは、中型二体、小型一体。
地面を揺らすような重い音と共に、三体が一斉に受験者へと突進してくる。
それを見た瞬間、ドーグが即座に声を張り上げた。
「僕の後ろへ!!」
号令と同時に、グラウンドランスを構え、力の限り地面へと突き刺す。
鈍い衝撃音が響き、ランスは深く地中へと食い込んだ。
次の瞬間、地面がせり上がり、四方へと展開されるバリケード。
即席とは思えぬほど堅牢な防壁が、仲間達を包み込む。
突然の変化に一瞬動きを止めたダミーヴォイド。
その隙を、逃す者はいなかった。
気配もなく、男が現れる。
凍りついたワイヤーが空を裂き、一瞬でダミーヴォイドの動きを封じ、絡め取った。
「四人目?!どこに居たんだ?」
ショウが思わず声を上げる。
灰色の髪を揺らし、無言で立つ青年。
今期の三席、シオン・グレイ。
アイスワイヤーブレードによって拘束されたダミーヴォイドは、完全に身動きが取れなくなっていた。
「今だ」
シオンがドーグ達の方を向き、そう言ったような気がした。
「彼、姿を隠すのがすごく上手いね。
全然気づかなかったよ」
ツカサは驚愕を隠せず、思わず感嘆の声を漏らす。
「全員総攻撃!!」
捕縛を確認したドーグは、迷いなく後方へ指示を飛ばした。
一点に集められたダミーヴォイドへ、集中砲火が浴びせられる。
攻撃は次々と放たれ、逃げ場のないダミーヴォイドはただ耐えるしかなかった。
激しく抵抗していた動きも、次第に鈍っていく。
最後に残った中型が、緩み始めた拘束を引きちぎろうと、体を激しく揺らす。
それを見たドーグは、静かにグラウンドランスを引き抜いた。
右手に握り締め、巨体を大きく捻る。
そして――投擲。
唸りを上げ、空気を切り裂いたランスは、そのまま一直線に飛翔する。
次の瞬間、最後のダミーヴォイドの胸を貫いた。
その瞬間。
ビーーーーー!!
終了の合図が、訓練場に高らかに鳴り響くのだった。
Tips1
◆名前
ドーグ・アンカー
◆性別
男性
◆年齢
18歳
◆名前
シオン・グレイ
◆性別
男性
◆年齢
18歳




