第四十七話 復活
病室には、窓から差し込む夕陽が静かに広がっていた。
一日の終わりを告げる橙色の光が、白い壁と床を柔らかく染め、室内は穏やかな暖かさに包まれている。
医療機器の電子音だけが、一定のリズムで鳴り続けていた。
ベッドの脇には、エルサとリヴィアがいた。
二人は今日も、変わらずショウの傍にいた。
エルサはベッドに寄り添うように椅子へ腰掛け、ショウの手を両手で包み込んでいる。
そのまま、夕陽に照らされながら、浅いうたた寝に落ちていた。
ここ数日、まともに休めていないことは誰の目にも明らかだった。
リヴィアはその様子を見て、静かにブランケットを手に取る。
音を立てないよう、そっとエルサの肩へとかけてやった。
――その瞬間。
エルサが握るショウの手が、微かに動いた。
「う、ぅ……」
掠れた声が、静かな病室に落ちる。
「ショウ!!」
エルサは反射的に手を強く握り返した。
眠気は一瞬で吹き飛び、涙を滲ませながら顔を上げる。
ショウはゆっくりと瞼を開く。
最初に映ったのは、見慣れた病室の天井だった。
「俺は……」
声はまだ弱いが、確かに意識は戻っている。
「ここは本部の病室です」
リヴィアが一歩前に出て、落ち着いた声で告げる。
ショウはゆっくりと上半身を起こし、エルサとリヴィアを視界に収めた。
「エリー、リヴィア……あれからどれくらい経ったんだ?」
「ショウ達がここを経ってから二週間くらいよ。
ほんとに心配したんだから」
エルサはそう言うと、堪えていた感情が一気に溢れ、ショウを抱きしめた。
「そんなに寝てたのか……悪かったよ。
エリーはほんと昔から泣き虫だな」
ショウは、まだ完全に動かない腕を無理に持ち上げ、エルサの頭をそっと撫でる。
その仕草はぎこちないが、確かに“いつものショウ”だった。
リヴィアは、その光景を一歩引いた場所から静かに見守っていた。
胸の奥に溜まっていた不安が、少しずつ溶けていくのを感じる。
「アヤメはどうした?
じーさんとこに報告にいかねぇと」
「拠点の人たちでしたら今は避難所に全員います」
リヴィアは即座に答える。
「もう少し休んだら?」
エルサは名残惜しそうに、ショウの身体を再び寝かせようとする。
「いや、もう充分休んだ」
ショウはそう言ってベッドを降り、着替えに手を伸ばした。
「わかったわ。
じゃあ私は一度部隊へ戻るわね。
リヴィアはショウについて行ってあげて」
「もちろんです」
「ありがとうな、エリー」
エルサは笑顔で頷き、病室を後にした。
「よし、それじゃあ俺たちも行くか」
ショウとリヴィアは並んで病室を出る。
大隊長室ーー
「――以上が報告だ。
じーさん、俺が戦ったヤツはマジでヤバかった。
アイツがもう一度現れたら倒せるかわからない。
部隊の強化が必要だ。
それからXだが、名前はアヤメだ。
アヤメは今はまだ荒いが確実に第七支部の誰よりも強くなるぜ。
それほどの素材だ」
ショウの言葉には、軽口の裏に確かな危機感があった。
「よくわかった。
軍の強化についてはワシも同意だな。
具体的な案を考えておこう。
それからアヤメの件についてはサクヤに一任している。
その件については一度サクヤと話すといい。
最後に……よく生きて戻った!
お前もサクヤも。
それでこそ第七支部だ!」
ゴリアスは豪快に笑い、ショウの背中を叩く。
「大隊長!中隊長はまだケガ人です!」
リヴィアが即座に止めに入った。
大隊長室には、ほんのひととき、柔らかな空気が流れたのだった。




