第四十六話 岐路
サクヤが目を覚ましてから三日が経っていた。
体調は万全とまではいかないがほぼ回復していた。
「サクヤさん体調はもう大丈夫ですか?」
「えぇ、だいぶよくなったわ。
付きっきりでありがとう二人とも。
色々と助かったわ」
サクヤは洗濯された綺麗な軍服に手を通し、大隊長補佐の顔に戻る。
「私は報告に行って来るわ」
そういうと、ショウの顔を一度見て部屋を後にした。
大隊長室ーー
扉を開けるとそこにはゴリアスとローズが居た。
「...以上が私の知るすべてです。
ここから先は気を失ってしまい、ショウか例の少女に確認する必要があります。
が、現状の状態で聞くのは時期尚早かとも思うので、ショウの目が覚めてから確認するのが得策かと考えます」
サクヤはことの経緯を知る限りゴリアスとローズに報告する。
「わかった。
お前がそこまで言うのならそうなのだろう。
少女の件はお前に一任するとしよう。
わかっているだろうが、この件は我ら第七支部にとって非常に重要だ。
くれぐれも判断を誤るなよ」
音を立てそうなほどギチギチに筋肉が詰まった腕を組みながら、ゴリアスはサクヤに指示を出すのだった。
時は少し遡りーー
ローズは約束の一週間を迎え、拠点の人々がいる避難所へと出向いていた。
そこにはミラ、サラを中心に全員が広場に集まっていた。
「約束の一週間だが、答えは出せたかな?」
ローズは自らの意思を示す前にまずはミラ達の意見を待つ。
「私たちは移住する方向性で考えています。
ただ、主要メンバーである者がまだ意識が戻らない状況にあるので、最終的な判断はもう少し待って貰いたいです。
私たちにとってゼノスの管理下に入る事は非常に大きな事なので、無理を言って申し訳ないですが、それからでもいいですか?」
ミラはローズの目を見つめしっかりと伝えた。
「あぁ、私たちはそれで構わない。
もし、なにか入り用であれば遠慮なく言ってくれ。
可能な限り対応しよう」
ローズはそういうと笑顔を見せ、避難所を後にした。
「第六支部とはなにもかもが違うわね。
同じゼノスなのかってくらい」
サラが自分たちの過去の認識と今を比べ、言葉を漏らす。
「そうね、この街で生まれてたらなにか変わってたのかもしれないね」
ミラは少し悲しそうな表情をし、下を向いた。
「でも今はここにいて、ここにみんながいるよ」
アヤメが俯いたミラの顔を下から覗き込み、笑顔を見せる。
「確かにね!アヤメもいるしね!」
ミラは気持ちを切り替えいつもの笑顔を作ってみせた。
翌日ーー
「ミラ!!」
サラが勢いよく走って来る。
「どうしたの?そんなに急いで」
「はぁはぁはぁ、ガレンとルカが目を覚ましたわ」
息を切らしながらサラは笑顔を見せる。
「ほんと?!すぐいきましょ!」
二人は走って病室に向かった。
病室の扉を開けるとガレンとルカは起き上がっていた。
「二人とも。
心配かけてすまなかった。
俺たちもかなりギリギリの戦いだった。
看護師にエマも命に別状はないと言われたよ。
特に俺はだいぶギリギリだったみたいだがな」
ガレンは火傷のあとが残る左手を見つめながら少し目を細めた。
「俺は...俺はもう...戦いたくない...本当に死ぬかと思った。
いや、ガレンがいなきゃ確実に死んでた。
俺には残るものもないけど、死ぬのはやっぱり恐い。
ガレン、ごめん。
俺はもうヴォイドと戦うのをやめる」
ルカは理解してしまったのである。
自らの力量、ヴォイドの恐ろしさを。
身をもって。
「それは自然なことだルカ。
誰も戦う事を強制はしないさ。
戦うかどうかは自分で決める事だ」
ガレンはルカの気持ちも理解できる。
それ故に怒りなどなく、ただただ本人の意志に委ねたのだった。
ルカはただ、打ちひしがれていた。
ミラとサラはそれを見ているしかできなかった。




