表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/67

第四十三話 静かな灯火


 アヤメ達はローズが引率していた。

 セブンスロック内部に設けられた避難区画は、想像していたよりも広く、整然としていた。

 無機質な壁と床は軍施設らしい冷たさを感じさせる一方で、最低限の生活を送るための設備はすでに整えられている。

 長い廊下を歩きながら、アヤメは周囲を静かに見渡していた。

「一時的にだが、この避難所を仮住まいにしてもらっても構わない。

 食事は一日三食はこちらから提供しよう。

 衣食住はとりあえず問題ないわけだが、代表者の者は今後どうするかをまた教えてほしい。

 そうだな……一週間後にまた聞こう。

 その時までに教えてくれ」

 淡々とした口調だったが、そこに拒絶の色はない。

 必要以上に踏み込まず、しかし責任はきちんと提示する。

 ローズはそういう人間なのだと、アヤメは直感的に理解した。

 ローズはそれだけを告げると、赤い髪とマントを揺らしながら踵を返し、通路の奥へと消えていった。

「あの人が言う通り、今後を決めないといけないわね」

 ミラは周囲に集まった仲間たちを見渡しながら、静かに口を開く。

 避難してきたとはいえ、ここが永住の地になるわけではない。

 守られる側として生きるのか、それとも――。

「そうね、ガレン達の意見も必要だけど、今いる者である程度決めておく必要はあると思うわ」

 サラは冷静だった。

 感情ではなく現実を見る視線。

 医療者として、そしてこの集落の一員として、状況を受け止めている。

「とりあえず荷解きをして、夜にまた集まりましょ」

 短い提案だったが、誰も反対しなかった。

 今は考えすぎるより、身体を落ち着かせる方が先だ。

 そうして各々荷解きを始めたのだった。


 その頃、病室の一室でリザが目を覚ます。

「こ、ここは……うっ!!」

 身体を起こそうとした瞬間、鋭い痛みが走り、思わず声が漏れる。

 全身に残る鈍痛が、あの戦いが現実だったことを否応なく思い出させた。

「目が覚めたか? まだ動くな」

 聞き慣れた、しかしどこか懐かしい声。

 リザはゆっくりと視線を動かした。

 そこにいたのは、金髪に白いメッシュの入った髪。

 鋭さと落ち着きを併せ持つ金の瞳。

 シルバーのピアスとネックレスが、軍服の下でわずかに揺れている。

 第五支部殲滅部隊第一部隊中隊長。

 ルキ・ドラグニフ。

 ――そして、リザの姉だった。

「ルキ姉……」

「ちょっと心配したじゃねえか。

 でも無事みたいでよかったよ」

 ルキは窓際に立ち、外へ向かってタバコの煙を吐き出す。

 その横顔は、戦場で見せる鋭さよりも、どこか柔らかい。

「ごめん、ルキ姉、心配かけたよな。

 あーし……」

 言葉が続かず、リザは視線を落とす。

 シーツを握る指に、自然と力がこもった。

「あぁ、お前の様子を見れば大体わかるよ。

 まぁでもアイツについていけばリザはまだまだ上にいけるさ。

 根性見せろ。

 今までもそうしてきたんだろ?」

 責めるでもなく、慰めすぎるでもない。

 ルキの言葉は、まっすぐにリザの胸に届いた。

「うん……ありがと、ルキ姉」

 リザは目元に滲んだ涙を隠すように瞬きをし、ゆっくりと前を向いた。


 その頃、集中治療室では医療班が部屋から出てきていた。

「二人の様子は?」

 エルサが、固く組んでいた腕をほどきながら尋ねる。

 視線は扉の奥を離れない。

「命には問題ありません。

 ですが、体の内部から損傷が激しく、通常であれば一ヶ月程度。

 ウィンダス副官の力をお借りしても、早くて一週間から二週間は回復までかかる見込みです」

 淡々とした報告。

 それでも、その言葉は確かに“生きている”という事実を告げていた。

「わかった。

 では、その旨を大隊長まで報告に向かえ」

 エルサは静かに頷く。

 張り詰めていた空気が、ほんのわずかに緩んだ。

「よかった……本当によかった……」

 待合室の椅子に腰を下ろしたリヴィアも、力が抜けたように息を吐いた。

 涙を堪えながら、それでも前を向く。

 戦いは終わったわけではない。

 だが確かに、命は繋がれた。



Tips

キャラクタープロフィール

◆所属:ゼノス第五支部殲滅部隊第一部隊中隊長

◆名前:ルキ・ドラグニフ

◆性別:女性

◆年齢:30歳

◆身長:168cm

◆武器:デスクロー

◆シックスセンス:雷

◆適合率:43%



挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー/女主人公/異能/第六感/チート/異能バトル
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ