第四十一話 セブンスロック
戦いから一夜明け、ミラ達の拠点は静かな朝を迎えていた。
「さてと、朝食の準備しよ」
ミラはキッチンに立ち、朝ごはんを二人分用意していた。
長く綺麗な黒髪をゆらめかせ、アヤメが起きてくる。
「アヤメ、おはよ」
「おはよ、ミラ」
二人は朝の挨拶を交わし、アヤメは椅子に腰掛ける。
「コーヒー入れるわね」
「ありがと」
穏やかな朝だった。
朝食を済ませ、二人はサラが待つ医務室へ向かう。
「サラ、おはよ。
二人の具合はどう?」
ミラが入るなりショウとサクヤの様子を確認する。
「正直生きてるのが不思議って感じね。
二人とも相当に体を削った戦いをしたのね。
特に男の方はかなりヤバイ状態だったわ。
できる限りのことはして、命は繋いだけどちゃんとしたところで診てもらった方がいいわ」
サラは冷静に事実だけを話す。
「そうね、正直目の前で起こっていたことなのに、いまだに現実だったのかって思う。
それくらい常識を逸脱した戦いだった...」
(私はなにもできなかった。
ただ、アヤメとこの二人が戦うのを見ているしかできなかった。
いえ、むしろ足手纏いにすらなっていた...)
ミラの手は無意識に握りしめられていた。
ブロロロロロロロロ
表に車が数台停まる音がした。
三人は顔を見合わせて表に出る。
そこには軍服を着た人間が三十人くらいいた。
「こんにちは、私はゼノス第七支部殲滅部隊第一部隊副官、リヴィア・クロート。
単刀直入にお尋ねしますが、ここにゼノスの隊員はいませんか?」
リヴィアは少し心配した表情を見せながら、尋ねる。
「サラ・ミーンよ。
彼らならあそこの建物にいる。
案内するわ」
「ロートシルト中隊長」
リヴィアはツカサの方へ視線を向ける。
「あぁ、俺も行こう。
皆はここで待機していてくれ。
セラフィも一緒に来てくれ」
リヴィア、ツカサ、セラフィーナは、サラ、ミラ、アヤメと一緒に医務室へ向かった。
「これは...」
ツカサは思わず声が漏れる。
第七支部の中でも群を抜いて強いこの二人が、ボロボロになって意識まで失っているからだ。
「な、なにがあったんですか...」
リヴィアも信じられないといった表情を見せる。
「セラフィ、とりあえず二人を見てくれ」
ツカサはその様子を見てすぐにセラフィーナの方を向く。
「うん、わかったわ」
セラフィーナは二人の体を触診していく。
セラフィーナはシックスセンスの力である程度の体の状態を知ることができ、熱を使い自然治癒力を局所的に高めることもできる。
「二人ともかなり無茶をしてるわ。
特にフォレス中隊長は酷い。
生きているのが不思議なくらい体の内部も傷んでる。
たぶん神経系と筋肉が特に。
急いで本部の医療班に連れて行った方がいい」
セラフィーナは力強い視線をツカサとリヴィアに向ける。
「わかった。
とりあえずは人命優先だ。
だが、それはこの集落の人達も同じだ。
見たところきちんとした医療施設は無いようだし、みなさんも一旦セブンスロックまで来ませんか?
ほかにも重症者がいるようですし」
(この人さすがによく見ているわね。
それにこの人言ってることには一理ある。
私たちの戦力を考えてもこの人たちと一緒に行く方が安全にセブンスロックまでいける)
サラは冷静に考えていた。
「私は賛成よ。
ミラとアヤメはどう?」
「私もそれでいいわ」
ミラも賛成する。
「私も大丈夫」
アヤメも賛成した。
「よし、それなら早速準備しよう」
ツカサは部隊に指示をして、拠点の人々、ガレン、ルカ、エマ、そして、ショウ、サクヤを車へ乗せて第七支部本部へ帰るのだった。




