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第三十八話 共闘


 

 ギィヤアアアアアアン!!

 アヤメ、ショウ、サクヤを前に、大型は完全に戦闘態勢へと移行した。

 逆立った棘の隙間から、紫色の粒子が噴き上がるように溢れ出し、周囲の空気が歪む。

 まるで空間そのものが、拒絶反応を起こしているかのようだった。


「いくぞ!!」

 三人は同時に踏み込む。

 それぞれが、互いの間合いと役割を理解した動きだった。

 

 だが――大型もまた、同時に動いた。

 地を叩くような重い音とともに、胴体の側面から触手のような器官が複数本、弾丸のように射出される。

 狙いは二つ。

 ショウとサクヤ。


「まずは様子見って感じね」

「あぁ。知性はあるな、間違いなく」

 

 二人は即座に散開し、正面衝突を避ける。

 触手は地面を穿ち、遅れて衝撃波が走る。

 その間隙を縫うように、アヤメが動いた。

 

 呼吸を一つ整え、夜天紫蘭を握り直す。

 刀身に雷が走り、青白い光が弧を描く。


(へぇ、雷か。

 お手並み拝見だな、バケモン)

 

 アヤメは一気に踏み出した。

 蹴り上げられた土が宙に舞い、その姿が一瞬、視界から消える。

 

 次の瞬間――

 

 ゴオオオオオオオオォォ!!

 

 大型の前足が、横薙ぎに振り抜かれる。

 

 空気を切り裂く音が、衝撃そのものとなって迫る。

 アヤメは空中へと跳躍し、紙一重で回避する。

 だが、逃がさない。

 

 ビシュッ!

 ビシュッ!

 

 空中のアヤメを狙い、触手が一直線に伸びてくる。

(これなら……切れる)

 最初の一本を弾き、体を捻る。

 夜天紫蘭が、無駄のない軌道で振り下ろされる。

 ザシュンッ!!

 二本の触手が、同時に切断された。

 ボトボトッ……

 地面に落ちる頃には、アヤメはすでに着地し、そのまま大型の胴体へと駆け上がっていた。

 同時に、ショウとサクヤが動く。

 ショウは雷を纏わせたバスタードソードを、前足へと叩き込む。

 

 ガギィィィィン!!

 

 硬質な甲殻が弾け、一部が砕け散る。

 切れた傷口から、紫がかった血が滲む。

「くっ……硬すぎるだろ」

 確かな手応え。

 だが、致命には程遠い。

 

 一方、サクヤは間合いに入り、掌底を打ち込む。

 

 ドコォォォォン!!

 

 左前足の甲殻に、細かな亀裂が走る。

「……手応え、薄いわね」

 内部に届いていない。

 確実に効いているはずなのに、決定的な破壊に繋がらない。

 それでも、この二人の攻撃は、大型の意識をアヤメから引き剥がすには十分だった。

 

 アヤメは背中へと到達し、何本も生えた触手の根元へと夜天紫蘭を走らせる。

 

 キィィィィィンッ!!

 

 甲高い音。

 刃は確かに入るが、深くは通らない。

(ッ……堅い!!)

 装甲は、前足以上に厚い。

 まるで“要”を守るように。

 

 次の瞬間――

 

 ギィヤアアアアアアン!!!

 

 大型の咆哮が、爆発する。

 鼓膜を叩き潰すような音圧。

 森全体が揺れ、視界が一瞬、白く弾けた。


 ――そして。

 

 世界が、ズレた。

 

 アヤメは、確かに背中から距離を取った。

 ショウは、防御の構えを取っていた。

 サクヤも、衝撃に備えて重心を落としていた。

 

 それでも――


 遅れて、痛みが来る。

「――ッ!?」

 アヤメの脇腹が裂ける。

 避けた“はず”の場所から、血が噴き出した。


「チッ……!!」

 ショウの肩が、遅れて弾かれるように抉られる。

 衝撃は、今の動きと噛み合っていない。


「な、に……これ……!」

 サクヤの視界が、一瞬、揺らぐ。

 踏み込んだはずの地面が、半拍遅れて沈んだ。

(攻撃が……ズレてる……?)

 

 大型の紫の粒子が、より濃く、渦を巻く。

 それは再生でも、単純な硬化でもない。

 位相そのものを歪める挙動。

 “当たるタイミング”が、ずらされている。

 

 大型は、三人を見下ろすように一歩踏み出した。

 

 ドォン……ドォン……

 

 その一歩ごとに、空気が軋む。


「……マズいわね」

 サクヤが、息を整えながら呟く。


「あぁ。

 このままじゃ、削り負ける」

 ショウは歯を食いしばる。

 

 アヤメも、刀を構え直しながら理解していた。

(通じない……

 今の延長じゃ、こいつは倒せない)

 三人の前に立ちはだかる存在。

 それは“強敵”ではない。


 ――災厄そのものだった。

 

 紫の粒子が、さらに濃く広がる。

 そして、大型は再び、動き出した。

 

 ここから先は――

 本当の死線だった。


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ハイファンタジー/女主人公/異能/第六感/チート/異能バトル
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