第三十六話 抗う者たち
ショウとサクヤは奥に進んでいた。
ドォン
ドォン
ギィヤアアアアアアン!!!
歴戦の過去を持つ二人が初めて聞く咆哮だった。
その咆哮は世界を拒絶する様な、世界を壊そうとしているような、いずれにしても人類には理解し難い恐ろしさを覚える声だった。
「ショウ...」
サクヤは苦笑いをしながらショウに視線を向ける、
「あぁ...こいつはとんでもねぇな」
異様な空気が森を一面を覆い、二人はその異様さをひしひしと肌で感じ取っていた。
その咆哮のした方へ進んでいくにつれて、その空気は密度を増す。
二人は空気が重たく、息がしづらくなっていくのを感じる。
グオォォォォォォォォン!!!
聞き慣れた中型に似た咆哮も聞こえる。
「サクヤ、複数いるだろうが、もしそうなら知能の低いやつから手分けして数を減らそう」
「そうね、ヤバいやつも一体居そうだけど、そいつは後回しにしながら数を減らしましょ」
二人はすでに戦うイメージをつけていた。
ギィヤアアアアアアン!!
未知の咆哮が轟く。
ガキィィィィィン!!
金属が硬い何かに当たる音の大きさがその衝撃の強さを感じさせる。
戦闘音がすぐそこまで聞こえてくる。
少し先に開けた場所にヴォイドらしき影が複数と人影が見えた。
「あそこか!」
ショウとサクヤはスピードを上げる。
「いやあああああああ!!!」
(クソ!間に合え!)
声はすぐそこまで近づいている。
「ミラーーー!!!」
(開けた!!)
(な、なんだこいつは...それに黒髪の女に刀...あっちは茶髪の女...っ!!まずい!!普通に走っても間に合わない)
ショウはなにも言わずサクヤに視線を向ける。
サクヤはショウの意図を汲んだように頷く。
バチバチバチッ
青白い雷が一瞬でショウの体を覆っていく。
ふうぅ
サクヤが一呼吸置くと肌がほのかに赤みを帯びていく。
二人の周りから異様な威圧感が放たられる。
そしてーー
次の瞬間には二人の姿が消える。
残像すら残さない。
二人がこの場に来てからここまで僅か三秒。
微塵の迷いもなく、現場を判断し、行動に移す。
ショウとサクヤがこれまで培ってきた時間、経験が存分に発揮される。
ここの判断の早さと正確さが後の生き死にを左右する。
次の瞬間ーー
ガキィィィィィン!!
ショウは新型の鋭い爪を黒光りするバスタードソードで受け止める。
ミラは覚悟していた。
見たこともない歪なヴォイドの爪に自分が貫かれることを。
(え...この人達は...でも...いつの間に...)
ショウが攻撃を止めたすぐ後、サクヤがほんの一瞬遅れて新型の背後を取り頭から地面に向け掌底を打つ。
ドコォォォォン!!
次の瞬間には新型は頭部は地面にものすごい衝撃で叩きつけられていた。
「あ、あなたたちは...」
ミラは状況が掴めないまま二人に尋ねた。
「そんなことは今はいい!岩陰に隠れてろ!!」
ショウはまずはミラを避難させる。
ミラは頷いて岩陰に身を隠した。
戦場を知るものとして守るものがある戦いでは戦いづらいことを理解しているからだ。
(あのデカいのはやべぇ。
別格だ。本気でいかねえと。
今のでさっきのと合わせてオーバードライブは二回使ったから、あと一、二回が限界だな)
「サクヤ、ここからは本気でいこう。
まずは残ってる新型二体を先に行くぞ」
「おっけー、ギアあげるわよ」
二人は瞬時に動き出す。
(よかった。
誰かはわからないけれど、ミラを助けてくれた。
私はこの大型に集中できる)
アヤメはミラが助かったことにより冷静さを取り戻した。
夜天紫蘭を構え、雷を纏わせ、ゆっくりと息を吐く。
ショウは新型と相対した。
超硬合金製のバスタードソードを構え、雷を武器へ纏わせる。
サクヤはショウとは別の新型と相対する。
構えを取り、精神を集中させる。
それぞれが明確に相対した。
岩陰からその様子を見守るミラは、唖然としていた。
(なんなの、この人達...理解が追いつかない。
いきなり目の前に現れたと思ったら、あの恐ろしい怪物をいとも簡単に倒して、今はもう二体目と戦ってる。
...私も...私もあの場でアヤメをみんなを守りたい。
私も...力が...ほしい...)
ミラは痛感するのだった。
いや、理解してしまったのだ。
持つ者と持たざる者の距離を...




