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第三十五話 災厄


 

 アヤメは夜天紫蘭を構える。


 目の前には過去に見たことない大型のヴォイド。


 その皮膚は他を寄せ付けない紫色の粒子を纏い、いくつかの目のようなものが煌々と紫色に光っている。


 その存在自体が空間を捻じ曲げているかのような立ち姿。


 世界がその生物を拒否しているようだった。


 そんな生物を前にしてもアヤメの表情は変わらない。


 まっすぐに見つめる青の瞳はしっかりとその場を戦場にしていた。


 大型ヴォイドはアヤメを視認すると、立ち止まった。


 ギィヤアアアアアアン!!!


 一際大きな咆哮。


 これから狩る相手への宣戦布告のようだった。


 この場の空気が一気に張り詰める。


 同時に後ろから複数の二足歩行のヴォイドが出てくる。


 複数の目を持つ小型の二足歩行。


 そして中型ヴォイドが複数体いる。


(初めて見るヴォイドが何体かいる)


 アヤメは未知の敵に対して警戒を強める。


 夜天紫蘭を握る手に力が入る。


(ミラがいる以上、迂闊に飛び込めない。

 常に間に入る立ち位置を取らないと)


 アヤメは守る戦いを選択する。


 ミラは岩の影から動けずにいた。


(なんなの...あれ...、あんなの...見たことない。

 でもあれがとんでもなくヤバいってことはわかる。

 体が本能的に拒否してる。

 恐いはずなのに視線を動かせない)


 ミラの震える手を止められずにいた。


 アヤメは夜天紫蘭に雷を纏わせる。

 刀身が青白く脈打つように光を放ち始めた。


 夜天紫蘭に触れる空気が少し歪む。


(すごい、この出力でも壊れない)


 アヤメは夜天紫蘭の強靭さを身をもって感じる。


 

 ザッ


 

 土を巻き上げ一番手前の中型へと一直線に踏み込む。

 

 

 グオォォォォォォォォン!!


 

 中型は大きな口を開き、大きな牙を剥き出しにして、アヤメに爪を振り下ろそうとする。


 アヤメは真っ向から懐へ滑り込み態勢を低く保ち、一気に息を吐くと同時に夜天紫蘭を振り上げる。


 

 ビシュンッ


 雷が夜天紫蘭が空気を裂き、その振動が音となって耳に打つ。

 

 

 グオォォォ!!


 

 ドサッ


 

 その手が地面に着く時には血が切れたことに気づかないほどの切れ味でアヤメを避けるように腕ごと真っ二つになっていた。


 

 ブシャーー


 

 血が遅れて噴き出る。


 アヤメはそのまま振り返る勢いをそのままに切り上げた夜天紫蘭を中型に向かって振り下ろす。


 ビシュンッ


 ブシューー


 ものすごい勢いで鮮血が飛び散る。


 その影からもう一体の中型が拳を振り抜いていた。


「アヤメ!危ない!!」


 ミラは思わず叫ぶ。


 手前側に居た複数目のある二足歩行のヴォイドがミラに気付いた。


(ヤバい!逃げなきゃ!)


 ミラは考えると同時に岩陰から飛び出していた。


 横目で飛び出したミラが視界に入ったアヤメはほんの一瞬、ミラに意識を持っていかれる。


 この一瞬がアヤメの反応を遅らせた。


 飛び散った血の影から振り抜かれていた拳は、そのままアヤメに直撃する。


 ドカアアアアン!!


 辺り一面に響く破裂音の様な衝撃音がその威力を物語る。


 アヤメは吹き飛ばされ木に叩きつけられる。



 バーンッ!!



「カハッ」


 アヤメは背中に強烈な痛みを覚える。


 意識はすぐにミラに向き、自然と視線がミラを向いた。


(まずい!ミラを助けなきゃ!)


 

「はあ、はあ、はあ」


 ミラは震える足を騙して、なんとか走る。


(私のせいだ。

 私が叫んだせいで。

 なんてバカなの!!)


 足に上手く力が伝わらない。


 目の前の圧倒的な恐怖。


 迫り来る死を纏う恐怖。


 自分がいかに無力かを感じる状況。


 自分のせいで危険に晒してしまった仲間。


 すべてがミラの足を重くする。


「ミラ!逃げて!」


 アヤメはすぐにまだ力が入りきらない体に無理矢理力を入れ起き上がる。


 複数目の二足歩行ヴォイドはどんどんミラに迫っている。


 先ほどの中型はアヤメに追い討ちをかけに来る。


 直線的に走ってくる中型をアヤメは真っ向から夜天紫蘭で迎え撃つ。


 ビシュンッ


 中型の勢いをそのままにアヤメは夜天紫蘭を振り抜く。


 声をあげる間もなく、中型は絶命する。


 そしてーー


 ドォン、ドォン、ドォン


 ギィヤアアアアアアン!!!


 大型ヴォイドはアヤメを敵として認識し、立ち塞がる。


 大型ヴォイドの紫色に光る目がアヤメを獲物として見下ろす。


(クソッ!ミラを助けないといけないのに)


「どけえええ!!」


 アヤメは少しずつ冷静さを失う。


 力任せに夜天紫蘭を振りかぶり、大型に飛び掛かる。


 大型は防御体制を取った。


 ガキィィィィィン!!


 棘の様なものが一欠片落ちる。


(くっ!刃が通りきらない)


「いやああああああ!!!」


 ヴォイドがもうすぐミラに追いつきそうなところまで近付いている。


「ミラ!逃げて!走って!」


 アヤメは必死で叫ぶ。



「あっ!」


 

 ミラの足が限界だった。

 無理矢理にうごしていた足はきちんと地面を踏めずに、そのまま倒れ込む。

 ギリギリだった緊張の糸が一気に切れる。


 ミラはそのまま立ち上がれず岩にもたれかかった。


「来るな!こっちに来るな!」


 ミラは目の前にあった石を手に持ち、二足歩行のヴォイドへと投げつける。


 二足歩行ヴォイドは加速し、一気に距離を詰めながら爪を立て、ミラに狙いを定める。


「いやあああああああ!!!」


 ミラに向けられた爪はその叫び声に吸い込まれるかのように一直線に向かっていく。


「ミラーーー!!!」


 アヤメの叫び声が木々の隙間を縫い、森を抜けていった。



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