第二十九話 手がかり(前編)
「それでは、これから特別部隊における会議を開始する」
静かな会議室にサクヤの声が響く。
「まずこの特別部隊の目的だが、先日の通り、Xの場所の特定とスカウトが目的よ」
サクヤが手に持ったペンがホワイトボードを滑る。
「まずは指揮系統から説明しておくわ。
全権は私が持つ。
ただ、現場ではショウ、あなたが判断、指示を行いなさい。
その上で更にドラグニフはショウの指示に、ゴルディックはロートーシルトの指示にそれぞれ従う事。
そして、交渉は私が行うわ」
まずは基盤を作り上げていく。
「次は場所の特定をしないといけないけど、現状の手掛かりは....」
とサクヤが少し言葉に詰まる。
「現状なしか」とショウは資料を見つめている。
「その現場以外にXの情報は?」とツカサが尋ねる。
「ないんだよなー」とショウは椅子でくるくると回りながら両手を頭の後ろで組み、足を組んでいる。
「いきなりの手詰まり....ということですね」とサティが髭を触りながら腕組みしている。
「とりあえず周辺の聞き込みにでもいくっすか?」とリザがパンと手を合わせる。
「そうね、じゃあショウとドラグニフは街を。
ロートシルトとゴルディックは街の周辺を探索。
それじゃあ解散」
とサクヤが話をまとめる。
そして、各々に部屋を出たのだった。
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ショウ、リザは街の中で聞き込みを行っていた。
「アニキー、なかなか情報出てこないっすねー」
リザは疲れた様子を見せながら歩いている。
「だなー。
断面を思い返すと腕もそうだが、武器も相当なもんだと思うんだよなー。
生半可な武器じゃあんなふうには切れねーよなー」
ショウは地面を見ながらつぶやく。
「アニキ!いいこと思いついたっす!」
「さすがにそんな腕の良いやつが街に居たら噂になると思うんす。
けど、そうじゃないってことは外から来たってことっしょ?
じゃあ門番のやつに聞いたらなんか知ってんじゃないっすか?」
「おぉー、リザ!お前頭いいな!そうだよ!それだよ!」
ショウはリザの頭をわしゃわしゃと撫でた。
リザは満足げな笑みを見せる。
「よし、そんじゃあいきましょ!」
二人は門へと向かった。
「あ、居ましたね。
ちょっと行ってくるっす」
リザは走っていく。
ショウが歩いて向かっていると、リザがショウの方を向いて笑顔で手を振っている。
そして、戻ってきた。
「あの人、その日に1組だけ武器を持った人間を見たらしくて、黒髪の女の子と茶髪の女の子の二人組だったらしいっすよ」
「やったな!一個目の手がかりだ!」
「あ、それから行きは持って無かったけど帰りは持ってたらしくて、それ以外に大きな荷物も特に持ってなかったみたいっす」
「重要な手がかりだな。
それなら武器を街で調達した可能性が高い。
よし!武器屋を当たるぞ!」
ショウとリザは武器屋に向けて走り出した。
「いくつか目星は付くな。
この街で武器屋は多いが腕の良い武器屋となると、結構絞れる」
「ですね!」
何軒か回った後。
「ここが最後だな」
「ここまで手がかりなしっすもんね。
ここでなかったらまた振り出しっすねー」
リザは落胆した表情をしている。
「大丈夫さ!これでいけたら、メシでも奢ってやるよ」とリザの肩をポンと叩く。
「まじっすか!俄然やる気出たっす!」とリザは満面の笑みを見せる。
「ほんとお前って人懐っこいというか、なんというか」とリザの満面の笑みに妹のような可愛さを覚えるのだった。
そして二人は最後の鍛冶屋の前に着く。
「ここに来るのは久しぶりだなー」とショウは店を見渡す。
「え?来たことあるんすか?」とリザは顔を下から覗かせる。
「あぁ、ここは俺がまだ学生だった頃によくエリーと来てたんだ。
武器の手入れをしにな」
二人は扉を開ける。
ギィィーカランカラン。
「おやじー、いるかー」
「おぉー、久しぶりだなー!
今日はいつもの彼女はいねーのか?」
「今日はいねーし、彼女でもねーよ。
それより、今日は聞きたい事があるんだ」
「聞きてぇこと?そうか、なら奥で話そう」と店主は奥へ二人を誘導する。
そこには訓練場のような場所が広がっている。
「懐かしいだろ」と店主は昔のショウとエルサを懐かしむ。
「あぁ、それで聞きたいのは、最近ここに武器を買いに来たやつの話だ」
ショウはそれを聞いた店主の反応を見る。
「それをおれが話すと思うか?」
店主の表情が少し強張る。
「だよなー、でもまぁいいや。
だからこそ、おれはおやじが好きなんだけどな」
ショウはニッと笑ってみせた。
「ガハハハっ、言ってろ」
店主はショウの背中をバンバンと叩く。
「アニキ!あれ見てください!」
リザが奥にある黒い岩を指差す。
「あれは...」
ショウとリザはその岩を見にいく。
「この切断面...間違いねぇな」
「おやじ、一個だけ教えてくれ」
「なんだ?」
「そいつに何の武器を作ったんだ?」
店主は少し考える。
「...まぁ、それくらいならいいだろう。刀だ。
それにお前さんなら切り口を見て大方わかってたんじゃねぇか?」
ショウはニヤリと笑い
「まあな。念のためだ。
じゃあな、おやじ!また来るわ」
ショウは手をひらひらとさせて、リザと店を出るのだった。
店を出るとリザがキラキラした目でショウに顔を向ける。
まるでエサを待つ子犬のようだとショウは少し面白くなる。
「よし!それじゃあいくか!」
「よっしゃあー!さっすがアニキー」
リザはショウの背中に飛びつく。
「さっ!いっきますよー」と右手を挙げて喜ぶリザ。
「ったく、ほんとお前は」と言いながらそのままリザをおぶって店へ向かうショウとリザであった。




