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第二十話 死地


 アヤメがヴォイドと交戦していた、その同じ時刻。

山間部に設けられた小さな拠点では、

乾いた金属音が、異変を告げる合図として鳴り響いていた。

カン、カン、カン、カンッ――!

警告用の鉄板を叩く音が、規則もなく、焦りを孕んで響く。

「――来たぞ!!」

その声に反応し、ジェイド、ガレン、ルカ、エマは一斉に建物から飛び出した。

外気は重く、土の匂いに混じって、微かな異臭が風に乗っている。

物見台に立っていた男が、声を張り上げた。

「南方からヴォイドの群れだ!!」

「数は!?」

即座にジェイドが問い返す。

「……おそらく中型が一体、小型が五体!」

その報告を聞いた瞬間、

誰もが同じ結論に辿り着いた。

――アヤメがいない。

この戦力、この人数。

まともに迎撃できる規模ではない。

「……チッ」

ガレンが奥歯を噛み締める。

「クソ……なんでこんな数が……しかも中型まで……」

エマは蒼白な顔で、唇を震わせた。

「ど……どうしよう……このままじゃ……」

ルカも、喉を鳴らしながら言葉を絞り出す。

「……やるしか……ねぇ……」

その二人の肩に、ガレンは静かに手を置いた。

「聞け」

低く、しかし確かな声だった。

「ここで戦えるのは俺たちだけだ。逃げ出すわけにはいかない。だが……命あっての物種だ」

視線を拠点の奥へ向ける。

「最悪、地下シェルターがある。拠点は……ダメかもしれないが、人は守れる。俺たちも、本当にヤバくなったら撤退する」

一拍、置いてから。

「……それでも、ここは俺たちみんなで築き上げた場所だ。易々と渡すつもりはねぇ」

ガレンは斧を握り直した。

「前衛はいつも通り、俺が前に出る。ルカ、奴らの動きを遅らせろ。エマ、可能な限り位置を制御してくれ」

二人は緊張した面持ちで、はっきりと頷いた。

「ガレン!」

ジェイドがショットガンを構えながら声を上げる。

「俺はいつも通り援護に回る! なんとか……退けるぞ!」

その直後だった。

――ドン……ドン……。

地鳴りのような振動と共に、

黒い影が木立の向こうから姿を現す。

中型ヴォイド、一体。

その周囲を囲むように、小型が五体。

報告通りの数。

報告以上の圧。

グオォォォォォォォォン――!!

中型の咆哮が、拠点全体を揺らした。

「ルカ!! エマ!!」

ガレンの叫びに、二人は即座に集中する。

ルカが両手を地面に叩きつけると、

ヴォイドの足元一帯に氷が広がり、動きを鈍らせた。

「エマ! まずは小型を一体ずつだ!!」

ガレンの声は、戦場を的確に切り取っていく。

「中型は俺が惹きつける!」

ジェイドが前に出た。

ドンッ!!

放たれたショットガンの一撃が、中型の頭部を掠める。

完全な致命傷にはならない。

だが、それで十分だった。

中型の視線が、ジェイドへと向く。

「頼む!! エマ、その間に小型をやるぞ!!」

「……わ、わかった!」

エマは震える手でシックスセンスを集中させる。

ルカの氷で動きの鈍った小型四体を、

土壁で四方から囲い込み、視界と動線を奪う。

さらに、残る一体には三方向だけ土壁を展開し、逃げ場を潰した。

その瞬間を、ガレンは逃さない。

火を纏った大斧を、大きく振りかぶる。

逃げ場を失った小型が身を捩る。

――次の瞬間。

斧は地面に叩きつけられ、

同時に、小型の首が宙を舞った。

しかし、勝利は一瞬だった。

囲まれていた残り四体が、

本能的に土壁を破壊し、散開する。

(……止まると、殺される)

それを理解したかのような動き。

ガレンは歯を食い縛る。

(早く……小型を片付けないと、ジェイドが持たない……)

小型が一斉にガレンへ飛びかかった。

ルカが氷の槍を生成し、次々と撃ち出すが、

決定打にはならない。

ガレンは、斧で、体で、必死に猛攻を凌ぐ。

その隙を突き、

一体ずつ、小型がルカとエマへ向かって走り出した。

「エマ!! ルカ!! 逃げろ!!」

叫びは、間に合わなかった。

小型の一体が、ルカに飛びかかる。

咄嗟に氷壁を展開するが、

爪はそれを容易く砕いた。

威力は削がれた。

だが、止まらない。

――ズシャァァッ!!

肩から腰にかけて、斜めに裂かれる。

「うあぁぁぁぁぁぁ!!」

大量の血が噴き出し、ルカは地面に崩れ落ちた。

ガレンは三体の攻撃を振り切り、

ルカを切り裂いた小型を、不意打ちで叩き伏せる。

「クソッ!! エマ!! バラけるな!! こっちへ来い!!」

「はぁ……はぁ……はぁ……」

エマの呼吸は荒く、足元が定まらない。

恐怖と緊張が、体力を削り取っていく。

「……ガレン……ル、ルカは……?」

「まだ生きてる。だが……このままじゃ確実にまずい」

ガレンは斧を握り直す。

「残り三体だ。なんとかやるぞ。ルカを土壁で囲え」

「……わかった!」

エマは必死に力を絞り、

ルカの周囲をドーム状に覆った。

「エマ、よく聞け」

ガレンは息を切らしながら続ける。

「俺が今から真ん中に突っ込む。動きは止まるはずだ。そこを……どの二体でもいい、囲え。さっきみたいに」

エマは、深く頷いた。

「うぉぉぉぉぉ!!」

ガレンが、三体の小型へ突進する。

――だが。

エマの土壁は、展開が間に合わなかった。

魔力の出力低下。

反応速度の遅れ。

二体は壁を察知し、外へ跳ぶ。

そして――挟撃。

「クソォォ!! エマ!! 逃げろ!!」

叫びは虚しく、

エマの体は動かなかった。

恐怖で、力が抜けていた。

咄嗟に自分を覆おうと土壁を展開するが、

小型の突進の方が、速かった。

ドンッッッ!!!

凄まじい衝撃。

(……重い……痛い……熱い……寒い……)

エマの体は宙を舞い、

背後の木に叩きつけられる。

鈍い音。

枝が、その腹部を貫いていた。

思考は、そこで途切れた。

標的を失った小型は、

何事もなかったかのように、ガレンの元へ戻る。

ガレンは、

三体の小型ヴォイドと、真正面から対峙していた。

――そして、拠点の戦いは、

ここからさらに、地獄へと踏み込んでいく。

                          

Tips1

キャラクタープロフィール

◆所属:なし

◆名前:ルカ・ベルン

◆性別:男性

◆年齢:26歳

◆身長:168cm

◆武器:ランス

◆シックスセンス:氷

◆適合率:13%

挿絵(By みてみん)





                          


Tips2


キャラクタープロフィール

◆所属:なし

◆名前:エマ・シラー

◆性別:女性

◆年齢:25歳

◆身長:158cm

◆武器:ロッド

◆シックスセンス:土

◆適合率:11%


挿絵(By みてみん)

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ハイファンタジー/女主人公/異能/第六感/チート/異能バトル
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