エピローグ
エピローグです。
「私のこと攫った人について、分かったことありますか?」
美月は紅茶を一口飲んでから柊に聞いた。
晴れた週末、とあるカフェに美月、柊、愛華、唯の四人が集まって女子会が開催されていた。。
戦闘部隊に入隊後、周りの人間とマメにコミュニケーションを取っていた美月が他三人に呼びかけ、親睦を深めるために企画したのだ。
忙しいという理由で断ろうとしていた柊からは不定期で少ない休日を聞き出して強引に誘い、休日に柊と会いたくないという愛華には「とても美味しいケーキを出してくれる店を知っている。来てくれるなら奢ってもいい」と言って誘い出した。唯は最初から乗り気でこの日を楽しみにしていたようだ。
「あまり無いな。ただ、合成魔法という魔法の使用者として登録されている人物が捜査線上に上がっている。まだ足取りは掴めんがな」
柊はアメリカンコーヒーを口にしながら答えた。
「おいおい、休みの日まで仕事の話するのはやめようぜ。気が滅入るよ、なぁ唯ちゃん?」
愛華がジンジャエールを飲み込んでから話す。
「えっ? えーっと、私はどちらでも」
唯は突然の質問に困惑し、逃げるようにストローでリンゴジュースを吸う。
「そうだね、仕事の話はやめようか」
「そもそもさぁ、今日なんでこのメンバーにしたんだ? なんか話したいことでもあんの?」
愛華がそう言うと、柊もティーカップを置いて口を開いた。
「それは私も気になっていた。親睦を深めるというのなら私がいない方が都合がいいだろう。それに、仕事の話ならこんな場所ではできないぞ」
柊が辺りを見回す。
このカフェは多くの席が屋外に設置されていて、道行く人や川を眺めながらお茶を楽しむことができる。開放的な空間でリラックスできると評判だが、内密な話をするのには向かない。
「うーん、親睦を深めたいっていう思いは本当なんだけど、実は皆さんに聞きたいことがあって」
少し気まずそうに話す美月に全員が注目する。美月はモジモジとして中々話し出さない。
「何を聞きたいんだ? お前の上司として、何か悩みがあるなら相談に乗るぞ」
「何モジモジしてんだ? 言いたいことあるなら早く言えって」
「美月さん、どうしたんですか?」
三人から催促され美月は意を決して口を開く。
「実は、みんなが繋のことをどう思ってるか聞きたくて!」
声量を少し上げて話す美月を、三人はポカンと見つめる。
「緑川のことか? どう思ってるかって、真面目な奴だと思っているが」
「私も、繋はいい奴だと思ってるけど」
「良いお兄さんだと思いますよ」
美月は三者三様の意見を聞き、首を横に振る。
「そういうことじゃなくて、じゃあ、愛華さん、あなたに聞きます!」
美月は突然愛華を指さす。
「え? 私?」
「愛華さんは過去に繋と同棲していたと聞きましたが、その時特に何も思わなかったんですか?」
唐突な質問に、愛華は首を傾げる。
「何もって、どゆこと?」
質問の意図を読み取れない愛華に対して、美月は少し顔を赤くしながら小さく口を開く。
「その、なんというか、好きだなーとかそういう、恋愛的なことです」
どんどんと歯切れが悪く小さくなる美月の声を聞いて、愛華はようやく意味が分かったようだ。
「あぁーそういうこと? いやー別に何も思ってないな。もちろん、料理も洗濯もしてくれて良い奴だとは思ってたけど、私はもっと力強い男の方がタイプだなー」
平然と話す愛華に、美月は呆気にとられたような顔をしている。
「二人はどうですか?」
美月は柊と唯を見る。二人は目を丸くして顔を見合わせ、柊が先に口を開く。
「どうと言われても、私はただの緑川の上司だ。良い仕事をする奴だとは思っているが、恋愛的にどうのこうのという感情は抱いていない」
「私も、特に何も思っていませんかね。結構年齢差もあるので」
柊と唯も当然と言ったように話す。美月はそれをポカンと見つめている。
「青柳は、緑川のことが好きなのか?」
数秒後、柊にそう言われた美月の顔はみるみる内に赤くなる。
「だって、みんな繋と距離が近かったから、そういう感じなのかなって、勝手に」
美月は俯きながらぶつぶつと独り言を話している。
柊はそれを見て少し口角を上げ、コーヒーを一口飲んでから口を開く。
「まぁ、機関員同士の恋愛は禁止ではないがな。仕事に支障が出ない程度に楽しんでくれ」
柊の追撃で、美月の顔は更に赤くなる。
愛華は心底楽しそうに、唯は少し心配そうにそれを眺める。
その後は、美味しいケーキを食べながら四人の会話は弾んでいった。会話の内容は半分以上美月へのいじりと恋愛話だ。愛華はフルーツタルトを食べた後にショートケーキを追加で頼んだ。
結果的に四人の親睦は深まり、その日の女子会は美月が意図した形ではないが成功した。
この女子会とここで話した内容については繋に絶対に教えないと四人で硬く約束し合い、女子会はお開きとなった。
約束はずっと守られ続けたが、その日以降繋と美月が二人で話していると、自然と周りから人がいなくなることが増えた。
これが愛華による気遣いだということは、繋は知る由もない。
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