四-3
第四-3話です。よければブクマや評価よろしくお願いします。
翌朝、繋は言われた通りチジの仕事には行かず、青木の下を訪れた。道中、日下から昨日今日は繋の仕事を愛華がヒーヒー言いながらやっているというのを聞いた。
繋は落ち着いたらご飯でも奢ってあげようと、心に留める。
「緑川さん、来たね」
青木はいつも通り検査室でタブレットを操作していた。
「唯ちゃんはいつ起きるのか分からないが、大体一日に三回は目を覚ます。緑川さんにはそのタイミングで隷属魔法を使ってもらおうと思います。唯ちゃんのご両親は昼過ぎに到着するらしいですが、それを待つ必要はありません」
青木に唯の治療に関する説明を受け、頷く。
「それまでは外出などせずにこの検査室内にいてください。お手洗いは廊下を出て右にあります。飲み物が欲しかったらお手洗いの近くの自販機で買ってください。検査室内は飲食禁止ですけど、廊下なら構いません」
青木からの説明を聞き、繋は検査室の隅にある椅子に腰を掛けた。
検査室では青木や他の医師、看護師たちがせわしなく動き機械を操作したりしている。繋や愛華にした検査のような臨時の案件が無くてもこの検査室は常に忙しそうだ。
それから数時間後、検査室の扉が開き、看護師の佐野が小走りで入って来た。
「青木さん、唯ちゃん起きました」
「わかった」
青木は手に持っていた書類を置き、タブレットだけを持って歩き出した。
「緑川さん、行きますよ」
繋は慌てて立ち上がり、青木についていく。
青木からは緊張感が漏れ出ていて、繋の鼓動も早くなる。
「準備はいいですか?」
唯の下に向かいながら、青木が問いかける。
「えぇ、まぁ、心の準備はできてます」
「緊張してますね。そんなに気張らず、お願いします」
青木は繋の口調から緊張を感じ取ったようで、少し口角を上げる。繋にはリラックスさせようとしているのだと分かった。
唯の病室の扉を開け、対面する。
唯は相変わらず弱弱しくこちらを見ていた。
「唯ちゃんには既に説明してあります。いつでも大丈夫です」
佐野が耳打ちしてくる。扉は閉められ、病室は唯、青木、佐野、繋の四人となった。
繋はベッドの脇に置いてある椅子に座り、唯と目を合わせる。
「私たちは出て行った方がいいかな?」
「いえ、近くにいてもらった方が助かります。もし唯ちゃんが危ない状態になったら、俺には対応できないので」
隷属魔法が成功するかどうかは、繋自身にも分からない。もし、失敗して唯に何らかの異常が現れた場合、医者ではない繋には対応ができない。
青木たちは頷き、扉の前に立った。
唯は繋のことを見つめている。
「唯ちゃん、昨日説明した隷属魔法ってやつ、今からやろうと思うんだけど大丈夫?」
繋が話しかけると、唯は頷いた。
「病気が治ってもずっと隷属魔法は解けないけど、大丈夫?」
唯は頷いた。
それを見て繋も決心し、立ち上がる。
「じゃあ、やります」
繋の言葉に、青木は頷く。
繋は唯に手をかざし、集中する。
愛華を助けた時を思い出しながら、かざした手に意識を集中する。
「隷属させてもらいます。いいですか?」
繋が問いかけると、唯は繋の手と目を見比べ、ゆっくりと口を開いた。
「はい」
唯は掠れた声で返事をする。
その瞬間、繋の手から黄色に光る鎖が飛び出し、勢いそのままに唯の首へと繋がる。青木と佐野は驚愕の表情を浮かべ、唯は目を見開いている。
繋の中に、唯と繋がっているような感覚が流れ込んでくる。
愛華の時と同じだ。隷属魔法は成功した。
繋は鎖を掴み、一呼吸置いてから口を開く。
「唯ちゃん、『生きろ』」
繋が命令すると、鎖が輝き始め、繋は脱力感に襲われる。立っていられなくなり、思わず椅子に座った。
命令された唯は、鎖の光に思わず目を閉じる。数秒後、鎖の輝きが落ち着くと唯は目を開け、パチパチと瞬きをする。
病室には唯を生かす機械の電子音だけが流れる。
「成功、したのかい?」
青木の問いかけに、繋はゆっくりと頷く。
「多分、したと思います」
二人で唯のことを見ると、唯はまだ目をパチパチと動かしていた。
「唯ちゃん、身体の具合はどうかな?」
佐野が唯に話しかけると、唯はゆっくりと起き上がった。ベッドごと起こすのではなく、自分の腕でしっかりと自分を支えながら起き上がる。
「なんか、多分元気です。身体が痛くない」
唯ははっきりと話した。その声は掠れておらず、女子中学生の可愛らしい高い声だ。
「本当に? だるかったり熱っぽかったりもしない?」
佐野の言葉に唯は頷く。
「驚きだな」
青木は後頭部をかきながら呟いた。
繋も安心して大きく息を吐く。この瞬間だけは、隷属魔法の使用に関する不安は消えていた。
「これ、緑川さんがやったの? どうやって? こんなに何ともないの、生まれてから初めて!」
唯は徐々に早口になりながら話し出した。
「はいはい、一旦ストップ。まずは色々検査してから話そうね」
そんな唯を青木は慣れた様子で制する。
「佐野さん、唯ちゃんのご両親に連絡して、その後検査室の準備してください。緑川さんはひとまず検査室に戻ってもらえますか」
青木の指示に従い、佐野と繋は共に病室を出た。
数十分後、青木と唯も検査室に戻り、検査を始めた。唯の検査は、繋や愛華が受けたものと同じように問診から始まり、測定機での検査へと移っていった。
その間、唯は興味深そうに検査室を眺め、青木に色々と質問していた。相変わらず身体は細いが、その様子は元気な中学生そのものだった。
繋はそれを見て思わず笑みがこぼれる。
唯が測定機に入ってから数十分後、唯の両親が到着したという知らせを受け、繋と青木は会いにいった。
「唯は、唯はどうなりました!?」
冴の第一声は焦りと不安に満ちたものだった。
「緑川さんの隷属魔法はちゃんと成功しました。今はどこかに異常がないかの検査中です。あと三十分程かかりますのでお待ちください」
青木は唯の現状を教え、冴を応接室のソファに座らせる。
「唯の容体はどうなんですか?」
冴よりも落ち着いている樹が、冴の隣に座りながら聞く。
「今のところ安定しています。魔力過剰症による症状も出ていませんし、体力も徐々に戻っていくでしょう」
「そうですか、それは安心しました」
青木の言葉に安堵の息を吐いた樹は、繋の方を向いた。
「緑川さん、本当に、ありがとうございました」
樹は深く頭を下げた。少し遅れて冴も同じように頭を下げる。
「いえいえ、別に難しいことをしたわけではないので」
繋は隷属魔法を使った後ろめたさを考えると素直に感謝を受けられず、謙遜した。
その後、青木が唯の両親に今後の入院期間や必要な手続きについての説明をしていると、応接室のドアが勢いよく開いた。
「お父さん! お母さん!」
扉の向こうから、唯が勢いよく入ってきた。
その姿を見た唯の両親の顔は、花が咲いたように一気に明るくなる。
「「唯!」」
冴は唯を抱きしめ、樹はその後ろから元気な唯の姿を目に涙を浮かべながら見ている。
「唯、もう身体は大丈夫なの?」
「うん! どこも痛くないし平気!」
「本当か? 変な感じがしたり気持ち悪くなったりしたらすぐに言うんだぞ?」
「大丈夫だよ!」
三人は幸せそうにお互いの顔を見る。
恐らく、唯の両親は唯が元気に話す姿も立っている姿さえ見るのは久しぶりなのだろう。思い切り笑う唯を見て、二人は涙が溢れていた。
繋と青木も顔を見合わせ、お互い笑みを浮かべながら頷いた。
黄島一家が数分間家族の時間を過ごした後、唯はくるりと振り返り繋のことを見た。
「繋さん、助けてくれてありがとうございました」
唯は先程の冴と樹のように深く頭を下げた。その下げる速度は勢いがあり、若さのエネルギーを感じさせる。
「俺も唯ちゃんが元気になってよかったよ」
そんなエネルギッシュな唯をみると、謙遜する気は無くなり、繋は素直に感謝を受け入れる。
「本当にありがとうございます。なんとお礼を言ったらよいか」
冴も再度感謝を伝えてくる。どうやら元気な唯の姿を見て繋に対する感謝の気持ちが一気に高まったようだ。
「いえいえ、大丈夫ですよ。そんなお礼なんて」
「そういうわけにもいきません。唯のこんな姿を見れて、なんのお礼もしないなんて。せめて今心ばかりのお礼だけでも」
冴はそう言って鞄の中から財布を取り出した。
「いやいや! 本当に、本当に大丈夫ですから!」
繋は焦って財布をしまうように促す。
実際、繋は何の費用もかけずに、禁忌である隷属魔法を唯に使ったのだから、お礼を貰うのは申し訳なさしか感じない。
「でも、そんなこと言っても」
「はいはい、とりあえず唯ちゃんの今後についての話もしたいから一旦座ってもらえますかね? 緑川さんは仕事の方に戻っても大丈夫ですよ」
青木は食い下がろうとする冴の言葉を遮りながら繋に目配せをする。どうやらこの場から繋を逃がしてくれるようだ。
繋は心の中で青木にお礼を言いながら、応接室を後にした。
繋は人から感謝された満足感と人に迫られた疲労感で頭と胸を一杯にしながら、本部庁舎に向かって廊下を歩いていった。
すると、チジの付属研究施設と本部庁舎を繋ぐ渡り廊下で柊と出会した。
「緑川か。青木さんから唯ちゃんの治療が成功したと聞いたぞ。ご苦労だったな」
「ありがとうございます。上手くいってよかったです」
「青木さんは今どこだ?」
「応接室にいますけど、今は唯ちゃんの両親と話をしてますよ」
「そうか、ではまずはお前と話そう。一緒に長官室にきてくれ」
「い、今からですか?」
「そうだ、問題あるか?」
昨日今日と心労が絶えずに疲れたので、繋は早く通常の業務に戻りたいと思っていたところだった。
「行くぞ」
柊は繫の答えを聞く前に歩き出した。繋はため息を吐き、柊についていく。
長官室に着き、柊は部屋の奥にある大きな机に座った。繋はその正面に立つ。
「黄島 唯に関してはしっかりと隷属魔法の使用許可は得た。情報が表に出ることも無い。その点は心配しなくてもいいだろう」
「ありがとうございます」
唯に隷属魔法を使ったことに対する懸念が、一つ無くなった。
「そして、黄島 唯は隷属魔法を受けたことでお前や紅月と同じように危険人物として認定される。彼女は我々からの監視の対象となるだろうな。そのことは黄島の両親にも説明してある」
隷属魔法を受けたことで、唯の身体は変化し常人離れした能力が使えるようになっている可能性がある。あの無垢な少女が危なっかしい愛華と同じ扱いというのは可哀想だが、致し方ないだろう。
「それで、お前への話というのはこれだ」
柊はタブレット端末を操作し、繋に見せた。
画面には見覚えのある表が表示されていた。それは繋や愛華も受けた検査の結果を示した表だった。患者の氏名欄には「黄島 唯」と書かれている。
「これは、唯ちゃんの検査結果ですか? 何か異常がありました?」
「そうだ。異常といえば異常だらけだ。だが、紅月と同じような結果が出ている。隷属魔法を受けた者としては正常な結果なのかもな」
柊はタブレット端末を手元に戻し、話を続ける。
「これによると、黄島 唯は魔力量が異常に多い。平均を大きく上回る紅月の、さらに数倍だ。これは魔力過剰症の影響だろうな。黄島の身体は隷属魔法とお前の命令によってこの異常な魔力量に耐えられるようになったらしい」
柊は画面をスワイプしながら続ける。
「青木さんの話によると、黄島 唯の身体も紅月と同じような性質、つまり魔法で生み出される物のような状態になっているらしい。お前はいつでも紅月と黄島 唯を呼び出せるようになったわけだ」
柊はスワイプの手を止める。
「そして、ここからが重要だ。黄島 唯の魔法は防御魔法。恐らく、これも常人離れした性能になっているだろう。魔力量からして、紅月の刀剣魔法以上の性能を示すかもしれん。幸い、防御魔法は人を傷つけるようなものではないから、それは安心だ」
防御魔法とは、自身の周りに壁のようなバリアを生み出す魔法だ。強化魔法や飛行魔法とは違い、日常生活では大した役に立たないため防御魔法の能力者が重宝されることは無い。刀剣魔法や銃魔法のように悪用もできないので一番需要が低い魔法かもしれない。
繋は柊が何のために自分を呼んだのか分からないまま話を聞く。
「出力の高い防御魔法、危険な能力者が出た場合に活用できるかもしれん。災害の際にも役立つかもしれないな。もしかしたら、建物の倒壊や土石流を防ぐなんていうこともできるかもしれん」
ぶつぶつと独り言のように話す柊を見て、繋は嫌な予感がする。
「ちょ、ちょっと待ってください。まさか、唯ちゃんをチジに入れるなんてこと言わないですよね?」
「何を言ってるんだ? 黄島 唯はまだ中学生だぞ? うちへ入れるわけないじゃないか」
柊の言葉を聞き、繋はほっと胸を撫でおろす。
「だが、黄島 唯は危険人物として登録され、うちでの監視対象となる。機関員にはできないが、異常な魔力量を持つ少女の魔法はぜひ見てみたいものだ。紅月以上の逸材かもしれないぞ」
ワクワクした顔になる柊を見て、繋の背中に汗が流れる。
「緑川、そういうことだから今度黄島の能力を確かめる。そしてゆくゆくは任務同行も視野にいれてもらう。その時は頼んだぞ」
繋の嫌な予感は的中した。
「いや、ちょっと待ってください。能力を確かめて任務同行って、さっきも言いましたけど唯ちゃんは中学生ですよ? 自分でこの仕事を選んだ俺や愛華さんとは訳が違うんです。無理ですよ」
「だから、黄島 唯に仕事をさせるわけじゃない。能力を見て任務に同行してもらうだけだ。中学生だったとしても土日であれば勉学に支障はないだろう。それに監視対象である黄島 唯は我々の命令には逆らえない」
「そういう問題じゃないですって。任務に同行させて唯ちゃんに怪我でもさせたらどうするんですか」
「お前や紅月がついているんだから大丈夫だろう。黄島 唯の主であるお前の腕の見せ所だな」
柊はいたずらっ子のような笑みを浮かべながらそう言った。この笑顔は、繋を入隊させた時と同じものだ。
「いや、でも」
「話は以上だ。仕事に戻っていいぞ」
柊は一方的に会話を切り上げた。そして、もう取り合う気はないという風に繋から視線を逸らし、タブレット端末を見始める。
繋は今日何度目かの大きなため息を吐き、長官室を後にした。
繋が部屋を出る直前、機嫌の良さそうな「ご苦労」という声が聞こえた。
繋がチジに入ってから、柊の傍若無人さを初めて知った。柊は自分が正しいと思ったこと、自分がワクワクすると思ったことは必ずやるという決断力と行動力がある。その判断が大抵組織として間違ったものではないため、そのバランス感覚とカリスマ性で長官の座に就いているようだが、時には今のような判断も独断で下す。繋と愛華が入隊した時に揉めたという話も納得だ。
これを知ってから、繋は柊の隣でよくため息をついている日下に同情するようになった。相当苦労しているのだろう。
繋は長官室を出て、もう一度日下のようにため息をついてから仕事へと戻った。
「へぇー私が知らないうちにそんなことがあったのか」
その日の夜、繋は自分の代わりに仕事をこなした愛華を労うために共に夕食に来ていた。店は愛華の希望で食べ放題の焼き肉店だ。
「そうなんだよ、だからもう大変で。ここ二日でめちゃめちゃ疲れたよ。主に心が」
繋は焼肉を食べ始めて早々に黄島 唯の件を話せる範囲でほぼ愚痴に近い形で話した。
一応他人に聞かれないように個室の店を選んだが、知られたらマズイような隷属魔法のことや唯の個人情報などは伏せた。
そんな繋の愚痴を、愛華は肉を食べながら聞いていた。
「お前、私だけじゃなく中学生にまで手を出すとはなぁ、意外と肉食系なんだな」
「話聞いてた? 俺一応人を救ってきたんだけど。あなたのことも救ってるんだけど」
愛華の軽口に突っ込むと、愛華はケタケタと笑った。
愛華はそこまで深刻な話として捉えていないようだが、その気楽さが今の繋にとっては心地よかった。ここ二日は深刻な話ばかり聞いていたからかもしれない。
「しかし、中学生女子かぁ、同じ隷属魔法受けた者同士、仲良くしたいなぁ。その子とはまた会うの?」
「うーん、どうだろう。多分会うのかな。柊さんがそういう状況にすると思う」
「じゃあ、そん時は私も呼んでくれよ。挨拶したいからさ」
何故わざわざ愛華が挨拶するかは分からないが、繋は了承した。
繋は、愛華のこういう律儀なところが嫌いではなかった。
その日はたらふく焼肉を食べ、帰路についた。愛華は二人前以上をたいらげ、帰り道に吐き気を訴えていた。
家に帰り風呂を済ませて寝ようとしていると、幼馴染の美月から電話がかかってきた。
「もしもし美月? どうした?」
『あ、いや、どうしたってわけじゃないんだけど、ちょっと話そうかと思って』
繋と美月は学生時代、用も無く電話したりしていた。社会人になってからはそんな機会無くなったので、久しぶりの電話に繋は懐かしさを感じた。
『同僚の女の人とはどうなったの? 同棲、してるんだよね?』
美月が腫れ物に触るように聞いてくる。
「あぁ、あの人はもう出てったよ。元々ずっとここに住むわけじゃなかったし」
『あ、そうなの? なるほどね、そうだったんだ』
繋の言葉を聞いた美月の口調は、少し明るくなった気がする。
『そういえば、今日のネットニュースで、チジ附属施設に入院してた難病の子が完治したって書いてあったけど、繋は知ってる? 確か新しく働いてるところってチジだよね?』
美月の話を聞き、電話をスピーカーにしながら調べてみると、確かに唯のことがニュースになっていた。あれだけ大々的に募金を募っていたのだから、ニュースになるのは当然なのかもしれない。
ニュースでは隷属魔法のことは完全に伏せられていた。青木がどうにか誤魔化してくれたのだろう。
「あぁー知ってるよ。色々あってその子には会ったことある」
美月相手に話していいことは限られているため、繋は言葉を濁しながら答える。
『ふーん。なんで会ったの?』
「えーっと、仕事上の問題で、かな」
『なんで? 繋の仕事って別に医療系じゃないよね』
「そうだけど……」
美月に思わぬ追及をされ、繋はしどろもどろになる。
『この子の病気に何か関係あるの?』
「えーっと、それは」
『もしかして、繋の魔法でこの子のこと治したってことだったりして』
図星を突かれ、繋は焦る。
美月は昔から勘の鋭いところがある。それに記憶力が良い。昔、繋が魔法について聞かれた時に隠したことを覚えていたのだろう。
「えーっと、ごめん。ちょっと忙しいから切るね」
『え? 繋? もしかして本当にそうなの?』
「えーっと、とにかく言えないんだ。ごめん。じゃあね、おやすみ」
繋はこれ以上の追及を避け、一方的に電話を切る。
あれ以上聞かれていたら全て言い当てられてしまったかもしれない。
繋は美月に謝罪の連絡を入れ、ベッドに入った。
こういう立場になった以上、嘘を突いたり秘密を隠したりする技術を付けなければならないと思いながら、繋は眠りについた。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
よければブクマや評価、感想よろしくお願いします!




