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16話「おまじない」

「なんであんな無茶したの?」


ソベストが、怒った表情で葵に話しかけた。


「いや、でも、もし俺が行かなかったら」


(俺は目の前で誰かが死ぬのを見たくないんだよ)


葵は歯軋りをしながら下を向く。


「言い訳なんて聞いてない」


ソベストは葵の話になんて聞く耳すら持たないようだった。


「じゃあグーナや村の人たちを見殺しにしろって言うのかよ!」


葵は怒鳴り声をあげる。先ほどまで歓声を上げていた村人たちも静まり返っていた。


「葵くんが言ったんでしょう?全員が同じ意見だって思うなって」


(だから何だってんだよ。お前には関係ないだろ。なんで俺のことにいちいち突っかかってくるんだ)


「私は誰も怪我してほしくない。それは、あなたも含まれているから」


ソベストは落ち着いて話す。葵は気まずそうに斜め下を向く。


(すげー俺のこと置いてったけどな。まあ黙っておくか)


葵はソベストが自分を置いていったことを思い出したが、ここでは発言しないことにした。変に状況がめんどくさくなっては嫌だからだった。


「俺が、悪かったよ。次からは、もっと考えてから行動する」


葵は深々と頭を下げた。村人たちは安心したのか自分たちの家に向かっていく。離れて様子をいていたグーナがゆっくりとこちらに近づいてくる。


「お前ら話は終わったか?葵、話したいことがあるからこっちにきてくれ」


そう言われ、強引に腕を引っ張れた蒼井は少し抵抗するが、今の状況でソベストと一緒にいるのが気まずいと思い、素直に従うことにした。


****************


「ほお!つまりあなたの世界では光彩技術があるのですね!」


「ああそうだぜ!それに最近の研究では無から有を生む事すらできたんだぜ!すげえだろ!」


「はい!」


葵たちが戦い終わってから姿を消していたユウシャだったが、『ラタクァ』と名乗る自称科学者の中年男性がユウシャを家へと招き入れていた。


「すみませんユウシャ氏。話を戻します。あなたも見ていたはずですが、あの葵氏の『再生能力』、化け物の血が体に入った時にその能力を使えるようになる『模倣能力』の二つがあるとお考えということでよろしいのですね?」


ラタクァはそう説明をする。先ほどの戦いを見てユウシャはずっと考えていたらしい。ラタクァがそれに気付き、今に至ると言うことだ。


「ああ。今の葵の状況に、俺ぁ仮説を立てたぜ。1、葵はこの世界の人物ではなく、違う世界から来た化け物。2、何者かが葵に干渉をしている。この二択だと思うぜ」


指を二本立てながら説明をする。ユウシャはこの世界に来て数日で、わからないことの方が多かったが、ソベストの反応を見て葵の体が普通ではないと言うことを勘づいていた。


「なるほど…わたくしもそう思います。もし、葵氏の能力が『模倣』なのでしたら、」


ユウシャはラタクァの話を遮るように。


「ああ。あいつは、何にでもなれるぞ」


****************


「おい、あれはどういうことだよ」


グーナによって路地裏まで連れてきた葵だったが、口が開いたと思えば胸ぐらを掴まれていた。


「お前、てっきり味方だと思っていたがな」


「お前さっき俺と協力してあいつ倒したやん」


葵は少しヘラヘラしながらグーナへと話す。


「状況的に優先すべきはあっちだと思ったからだ。教えてくれ。お前が俺らに危害を加える存在なのか」


葵はグーナに真剣な眼差しを向けられ少し怯む。だが、葵が危害を加えようとしていないことは事実だ。ここは潔白に証明しようと口を開けた。


「俺はお前らに危害を加えようとはしない。それに、もし俺が悪い奴だったらあそこで見殺しにしてたさ。これでも俺が嘘ついてるように見えんなら、指切りげんまんでもするか?」


葵は自分の無実を証明する。それは嘘偽りない言葉だった。その言葉にグーナは少し納得し、


「まあ確かにそうだな。疑って悪かった。ところで、指切りげんまんってのは?」


葵の潔白証明を認めてくれたのか、グーナが謝罪する。二人は宿に向かいながら話をする。


「俺の故郷のおまじないだよ」


葵が自信満々に、そう答えたのであった。

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