15話「騎士団適応」
葵が叫んだその瞬間、高身長野郎の視線が一気に葵の方へと向く。その瞬間、自分へと殺意が向けられていると一瞬で気付いたが、気付いた時にはもう遅く、葵は右半身を失っていた。
「あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
喉が痛くなるほどに叫んで叫んで叫びまくる。それは切断される痛みよりもはるかに痛く、叫びすぎたことにより視界のほとんどが黒くなっていく。
「葵!!」
グーナが反応できないほどに高身長の攻撃は早く、二回目の攻撃が来そうになっても反応できずにいて、まだ再生が間に合っていない葵が攻撃を喰らいそうになった瞬間、
「フィギロス騎士団!!ただいま参上!」
そこに現れたのは、鎧の装備をガチガチに来ていた『フィギロス騎士団』の姿があった。その鎧の音に反応して、高身長野郎の攻撃が止まった。
「やっと来てくれたか!こいつは音に敏感だ!」
グーナが状況を説明する。
「わかった。あとは俺らに任せてくれ!グーナ!少年!」
そういい、高身長野郎にフィギロス騎士団が突っ込んでいく。葵はうまく頭が回っていないが、少しづつ体が再生してきていることに気がついた。意識が少しずつ回復してきて、状況が掴めてきた葵。
(なんか鎧着てるやついる。異世界って感じだな。やっぱり剣とか使うのかな…は?)
あおいが驚いた理由は、騎士団が取り出したものは剣なんてものではなく、レーザー銃のようなものだった。
「先ほど拾ったこの機械、剣を振るより断然強いな!」
そう言いながら騎士団は銃をブッパなし続けている。が、一弾も当たっていない。銃の使い方に慣れていないようで、照準が全然あっていない。
「んだこれ全然当たんね」
そう言いながら銃を乱射していた騎士団だったが、すでに高身長野郎が接近していた。
「おい!そいつの一撃はやばい!」
「…は?」
そう反応する間もなく騎士団の左足が吹き飛ぶ。あおいと同じように叫ぶ。だが、鎧を来ていたおかげかあまりダメージは大きくない。だが、あまりの痛みに失神してしまった。
「おい!おいってば!」
他の騎士団が助けに行くが間に合わない瞬間に、少し離れたところから大声が聞こえてきた。
「いてえんだよクソやろーーーー!!!!」
その大声の正体は葵だった。体は再生し切っていないが痛みは治ってきていた。もう人が目の前で死ぬのをみたくないと思った葵の最善の判断だった。その瞬間、再び高身長野郎は葵に向かって走ってくる。
「騎士団!丸のところを覗きながら化け物に向かって撃て!」
遠くからみていたユウシャからの助言を聞き、覗きながら照準を合わせて打つ。その瞬間、高身長野郎の肩が撃たれ、ピンク色の血を流す。一時的に体制を崩し、動きが止まる。銃に打たれたことによってでた血が葵の失って右半身に付着し、一気に再生が始まる。
「は」
先ほどまで灰のように黒かった右半身が再生し、血液が右半身をすさまじい速度で流れていることがわかった。
「すげ、力が、溢れてくるって、こんな感じなのか」
そういい、再び葵に向かってきている高身長野郎に思いっきり腕を振るい、頭を殴る。その拳の威力は化け物に近しい、もしくは同等の威力だった。その振るわれた拳に高身長野郎を何メートルか吹き飛ばした。
「うお初めて殴ったし、威力強くね?」
葵が自分の拳に驚いている中、顔の右上あたりが削られた高身長野郎がのっそりと立ち上がる。
「やっぱり打撃系には耐性があるっぽし?」
そう言いながら状況を整理するが、改めて自分の腕をみた葵は少し恐怖する。血管が浮き出ていて、その血管を凄まじい速度で流れている高身長野郎の血液らしきものが確認できる。
「なんかやだこれ」
「おい!今のはどうやってやった!あいつにもっかいぶっ放せるか?」
騎士団が葵に質問する。
「いやー多分あいつ打撃効かなそうだから俺意味ないかも!あなたたちの銃しか効いてなさそいうっすよ!」
「葵!俺が合図する時にそいつを上にぶっ飛ばせるか!」
そのとき、吹き飛ばされてうまく動けていなかったグーナが全線に復帰し、葵に指示を出す。
「あいあいさーリーダー!」
葵は再び大声を出し、倒れている高身長野郎の周りをなるべき音を立てて走り出した。案の定大声や足音に反応してきたところを見計らい、騎士団が大きな声を出し葵から意識が離れる。
(さすが騎士。状況判断と対応がすごいな)
その瞬間に葵の拳が下から上へと振るわれる。高身長野郎はその攻撃を交わすように地面を思い切り蹴って空高く飛んだ。葵は動くのをやめた。攻撃をかわされたことに驚いたからなどではなく、
回避をするというのが狙いでもあったからだ。葵はニヤリと笑い、大きな声で名前を呼ぶ。
「グーナ!」
その合図に答えるようにレーザー銃を構えて空中にいる高身長野郎を撃ち抜く。空中にいるため防御や回避が難しく、もろに攻撃を受けた高身長野郎はそのまま吹き飛び地面へと倒れた。
「おおおお!すげえええ!」
グーナのエイムの良さに葵は興奮する。高身長野郎の肩、頭の一部、足に命中していて気を失っているように見えた。
離れていたユウシャ、ソベスト、村の人たちが集まってきて、騎士団、グーナ、葵たちへの拍手が送られる。
「すごいぞ!あなたたちのおかげで村は救われた!!」
だがそんな中、一人だけ怒っている表情をしている少女がいた。それは、ソベストだった。