14話「音敏感」
「ついた。ここが俺らの村だ」
グーナに案内され、葵たちは村にたどり着くことができた。
「おお…結構発展してるんだな。でも人が全然いなくね?」
葵が村を見渡してそう答える。ユウシャもソベストも同じ意見だったらしく、無言でうんうんと頷いている。
「今はみんな自宅待機なんだよ。なんせこんな状況だからな」
そう言われ納得したように三人はなるほどと頷く。
「こんな状況って時に私たちを泊めてもらってもいいの?」
ソベストが申し訳なさそうに聞く。
「別に。一つだけ貸家があるからな。部屋が三つあるから好きに使うがいいぜ」
そう三人は貸家へと案内され、無事にひと段落をついた。
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「第二回、作戦会議ぃぃぃぃ!!」
葵が大きな声でそう叫ぶ。慣れたと言わんばかりの真顔で二人は拍手をする。
「いろいろあったけど、とりあえずひと段落と着きました!流石に俺らがずっとここに止まるわけにもいかないので、今後どう行動するかを決めましょう!」
そう聞いたユウシャだったが、少し浮かない顔をしていた。
「俺ぁ、元の世界に、帰りたいぜ。友達だって、妻だっているんだ。もしあの裂け目に巻き込まれていたりなんかしたら…」
元の世界のことを思いながら、一人淡々と語る。
「ま、そうだよね〜」
「私は家が多分ないから、どうにか暮らしていけるようになりたい」
(別に俺は元の世界戻ってもここにいてもどっちでもいいなー。でも痛いのは嫌だ)
「じゃあこうしよう。第一目標、ユウシャの帰宅!第二目標、安全な暮らし!」
葵が二つの目標に絞る。だが、ユウシャは納得がいかないようで、
「別に俺が最優先じゃなくていいぜ。確かに心配だけど、そんな優先しなくても」
「逆に私たちが暮らせるようになってからユウシャさんのことを助けようとしてもやる気が…」
気まずそうにソベストがユウシャにいう。
「ソベ子お前…性格悪いだろ」
「悪くないです!」
「まあとりあえずはユウシャが第一で異論はないね?」
ユウシャは納得がいかなさそうな顔のまま頷く。話終わった後に、外が騒がしくなっていることに気がついた。
「なんか騒がしくない?」
「言われてみれば、そうだね」
「嫌な予感がするな」
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三人は外に出てみると、先ほどまでソベストたちを苦しめていた人型の更新の化け物、高身長野郎がそこに立っていた。
「え!なにあいつきもっ!!」
葵は高身長野郎を見てキモがる。ソベストとユウシャはあの化け物から逃げ回っていたので知っていたが、一人でいじけていた葵は別のところにいたので化け物とは出会していなかったのだ。
「あいつなんでここまでついてきてんだよ!」
「これって、私たちが連れてきた感じですよね」
ユウシャとソベストが目を合わせながら話す。あまり状況が把握できていない葵だが、敵、ということだけはわかっていた。そんな中、一人で足止めをしているグーナの姿があった。
「おい!お前らいいところに!そろそろフィギロス騎士団が到着する!それまで時間を稼いでくれ!」
グーナが大きな声でそう言いながら軽々と高身長野郎の攻撃を避け続ける。
「いや時間稼げ言われましても」
「いいから!」
かなり状況が悪いようで、先ほどは二本持っていたツルハシも一本だけになっていて、もう一本は高身長野郎によって粉砕されいていた。だが、葵たちには戦力がない。一才と言っていいほどに。この中で動けるとなったら葵だろうか。その状況を一瞬で整理した葵は高身長野郎に一人で走っていき、ヘイトをもらうことに専念した。
「おら!こっちだ高身長!」
石を拾って投げるがダメージは一切ない。だが一瞬だけ葵にヘイトが向いた瞬間、避けるのに精一杯だったグーナにチャンスが生まれ、ツルハシで会心の一撃を与える。
「よっしゃぁ!…え」
喜んだのも束の間、擦り傷どころか傷ひとつすらついていない。攻撃のせいで避ける体制に入れず、高身長野郎の攻撃をもろに喰らいそうになったグーナだったが、間一髪のところで葵がタックルをしてグーナが吹っ飛ぶ。そのおかげで高身長野郎の攻撃はからぶった。
「あっぶね!ナイス判断俺!」
冷静に状況を判断できた自分を誉めつつ、次にどんな行動をすればいいかを考える。その時、遠くから離れてみていた二人からの助言が聞こえてくる。
「葵!音だ!あいつは音に過剰に反応している!」
「ナイスユウシャ!」
助言を早速実行しようとし、葵は思いっきり叫んだ。
「ちーーーーーーび!!!」