13話「勘悪子嫌」
「今はまだあいつに気づかれてないみたいだけどどうする?」
葵がみんなに尋ねる。だが、ここにいる誰も思いつく策はない。逃げる、否。出口がない。戦う、否。倒せるような相手ではない。隠れる、否。敵は音に敏感。この最悪の状況でなに一つ案が思い浮かばなかった。
「てかさ、おま最初いなかったよね?」
「あー俺?」
グーナに問いかける。グーナは自分が話に参加していると思っていなかったようで、いきなり話しかけられて少し驚いている。
「まあ、そうだな」
「どっから入ってきたの?」
「あっこら辺から、ビューーって」
「なるほどね」
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「まあ、出口がわかったら余裕で出れるよね」
あっさりと攻略できたことの嬉しみと、残念さがソベストの頭の中で戦っていた。
「お前らってここに次元災害に巻き込まれたんだろ?えーっと、なんだっけ」
「ユウシャだよ」
名前を忘れられたことに少し怒りつつも我慢して名前を答えた。
「ああそうユウシャ。こいつとか明らか違う次元だし」
「あの〜、先ほどからたくさん出てくる次元の話、なに」
葵がグーナへと質問する。
「お前そんなことも知らねえのか。お前も違う次元か?ま、んなわけねえか」
グーナがガハハと笑う。
(勘の悪いガキは嫌いだよ)
「まあ簡単に言えば違う世界線?みたいなもんだよ。俺らが住んでる世界にこんな変なのいないだろ?こいつが俺らからしたら別の次元だ」
「誰が変なのだよ」
「変なのだろ」
「小せえもんな」
「小さくねえ!」
グーナ、ユウシャ、葵で話が盛り上がってしまい、ソベストが会話に入り込む隙を無くしてしまっていた。
「あ、そう言えばみんなさりげなく歩いてるけどどこに向かってるの?」
話題を頑張って探してソベストがグーナに優しい口調で聞く。
「俺の村だよ。お前らどうせ家とかないだろ?」
確かに、ここにきてから家と呼べるような場所はない。ソベストの家は裂け目の近くだったので残っている可能性は限りなく低い。ユウシャの宇宙船も謎の巨大生物に潰されている。葵の家な言うまでもない。そんな状況を素早く理解し、自分の村へ案内することができるグーナは、なかなかに大人の行動ができているように思える。
「本当!いいの?そんな簡単に」
ソベストがグーナに尋ねる。今までのグーナの発言などを聞いて優しくないと思っていたのか、先ほどの発言にすごく驚いているようだった。
「いいよ。別に。助けた方がなんか主人公っぽいし」
「んな理由だと思ったよ」
ユウシャががっかりしたような態度をとりながらそう答えた。