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12話「主人公チック」

「葵くーん」


ソベストは小さな声で何度も何度も葵を呼んだ。だが、返事はなかった。なかなかに洞窟の中は広いらしく、一度行っているはずの道を何回も通っているような錯覚に陥る時がある。だが、その時誰かの声が響いているのに気付いた。ユウシャとは反対方向から聞こえるので、他の人物なのは確定だ。その響いている声の正体は、


「おでんください、何にしますかー。えーっとえーっと、何にしますかー」


正真正銘葵だった。ソベストは何を歌っているのかわからなかったが、元気、ではなさそうだが辛そうではなくて安堵した。葵は歌に集中していてソベストのことにまだ気付いていない。


「え〜っと、葵くん…?」


ソベストが優しく葵に話しかける。そのタイミングでやっとソベストの存在に気づき、落ち込んでいるふりをし始めた。


「あ…さっきは、ごめんなさい。私が悪いことしたのに、自分勝手なことを言って。あと、置いて言ったのも。ごめんなさい」


ソベストは、気持ちを切り替えて自分が悪かったことを素直に謝る。


「俺も、ごめん。確かに、自分がソベストの立場なら置いて行ってたかもしんない。それに、俺を囮に使ったとかじゃないし、正味しょうがないと俺も思ってるよ。ごめん」


お互いに見つめ合い、相手を傷つけてしまったというお互いにある罪悪感の呪いを解くことができた。少し空気が和んだのでソベストは質問することにした。


「さっきの歌ってた歌…」 「よし行こうす。ユウシャはそういえばどうしたのさ」


ソベストの質問を遮るように葵はユウシャのことを尋ねる。


「それは…」


ソベストがある程度の説明をする。謎の高身長の化け物に襲われていること。ユウシャが一人で囮になっているということ。


「それ結構不味くね」


「うん…」


「急いで行こう!」


葵はそういいソベストの手を引っ張り走っていった。


****************


「なあ?お前ってどっから来たんだよ」


そう、ツルハシを持った少年グーナがユウシャに問いかける。だが、ユウシャはうまく状況が説明することができずに言葉が詰まってしまう。


「えっとなぁ…」


ユウシャは困った。このグーナと名乗る少年はなかなかに強い。先ほどのツルハシの投げでユウシャはそう感じ取っていた。もしここで敵だと疑われるような発言、動きをしてしまうと一瞬で殺されてしまう。


「連れがいるからそいつらが来てからでいいか?」


ユウシャは態度を低めにグーナに問いかける。だが、今までの柔らかな表情をしていたグーナの表情が一変して、目のハイライトが消えるような気がした。空気が重くなったように感じる。洞窟の中に響く音が聞こえなくなり、グーナの低くなった声だけがユウシャの頭に流れ込む。


「それは、あの化け物たちのことか?」


ユウシャは今までに感じたことのないような圧に押しつぶされそうになる。本能に直接信号が送られてきて、全身に逃げろという命令が下される。だが、ユウシャはその中でも平然を保っているふりをしてその問いに否定をした。


「んなわけねえだろ。あんなツレはごめんだよ」


「だよなぁぁぁ」


洞窟の空気が一気に軽くなったことを感じた。ユウシャはこいつを怒らせてはいけないと体に刻み込まれた。二人が逃げている時に、奥から声が聞こえてきた。


「ユウシャーーーーー」「ユウシャさーーーーん」


葵、ソベストの二人の声が奥から聞こえてきて、ユウシャは地獄から現世に戻されたかのような安心感が体を包む。


「ここだー!ここにいるぞー!」


ユウシャが大きな声をあげて自分の存在をアピールする。その声に反応し、二人の足音がだんだんと近づいてくるのがわかった。


「よかった!やっと会えたぜ泣」


「心配したんですよ!無茶しちゃって!」


「もう!プンスカプンスカ!」


「葵、さっきはごめんな」


「あ、そういうのソベストで間に合ってます。」


「なんでだよ!」


いつもの、まだ出会って二日目だが懐かしい感じが戻ってきた感じがした。


「これが、さっき言ってたつれ?」


グーナが葵とソベストを見ながらユウシャにとう。


「おい、これとかいうなよ。俺は小山内葵。このこはソベスト。」


「こんにちは」


「お、おう」


グーナが少し引きながら距離を取る。


「どうしたんだよその反応」


ユウシャがグーナにきく。


「なんか…こいつら自分が主人公と思ってそうで痛い」


「お前が言うな」

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