11話「タフガキ」
「こんにちは。小山内葵です。今は異世界にきて二日目!なんやかんやありましたけど元気もりもりです!とはいえ先ほどのような痛い経験は__」
葵は吐き気に襲われる。ひたすらひたすらしゃべった。痛みを思い出さないために。仲間を気づつけてしまったという罪悪感を感じないようにするために。だが、少しでも振り返るだけで尋常じゃないほどの苦しむが葵を襲いかかってくる。
「はぁ…はぁ…」
葵は数秒間天井を見つめて今までの生活を振り返る。
「腹、減ってるはずなのに、何にも食べたいとは思わないなぁ」
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「葵くーーーん!どこーーー!」 「葵ーーー!」
ソベストとユウシャは高身長野郎から逃げながら葵のことを探していた。高身長野郎は動きはそこまで早くなく、ところどころ天井が低いところがあるので足止めはできているようだった。だが、
「あいつの拳の威力半端なくねーか…?」
狭いところに来たら拳を思いっきり振るい天井だけでなく近くの壁までも衝撃で破壊される。
「あれをくらったら多分一発ですね」
ソベストが冷静に判断しているがそんなことを言っている場合かと言わんばかりの顔をしたユウシャが提案を投げかける。
「俺に、一つ試させてくんねーか」
「まぁ、別にいいですけど」
ソベストは不安そうにユウシャの提案を許諾した。
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「真っ赤なおっはっなっのー、あーおいくーんーはー。いーつも元気ーなー、かっこいいーひーとー」
葵は地面に横になり、天井を見つめながら歌っていた。もうほぼ完全に回復したと言っても過言ではない。だが、葵は一つ悩んでいることがあった。
「暇だ。こういう時ってなんか謝りに来たりするもんだよね!?おーいー早くこいよーーー」
葵は先ほどの痛みの辛さのどは忘れ、今はただ孤独を苦しんでいた。
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「くっそ…追い詰められちまったぜ…」
ユウシャはひたすら一人で逃げ回っていたが、行き止まりに遭遇してしまい、完全に逃げ場がない状況だった。高身長野郎はひたすらユウシャを見つめている。そして、拳を振り上げた瞬間、
「はっ!動きが単調なんだよボケ!」
そう言いながらユウシャは身軽な体で股下を通り抜け拳を回避した、ように思われたが、殴った拳とは逆の腕でユウシャは軽々と掴まれてしまった。
「アレッ?」
想定外の状況にユウシャは声が裏返る。咄嗟にソベストに助けを求めようとしたが、別行動をしているため近くにはもういなくなっている。
「あぁ、これって相当まずっ」
そういい、掴まれて抵抗できないままもう一方の拳で殴られそうになった瞬間、ユウシャの耳の近くを鋭い何かが飛んでくる。
「間一髪の救出!主人公だぜやっぱり俺は!!」
そこに助けてくれたのは、葵。ではなく、ツルハシを片手に持っているまだ子供の少年だった。
「お前みたことない面だな。敵か?敵なら殺す!」
ユウシャに向かってなかなかの怒声を浴びせたが、ユウシャは落ち着いて応答した。
「俺はユウシャだ。助けてくれてあんがとよ。お前のなま___」
そう言いかけた途端、怒り狂った高身長野郎が立ち上がり、もう一度拳を振り上げ風圧でユウシャと少年は吹き飛ばされてしまう。
「いててて…俺の名前だったな!俺はグーナだ!よろしくな!!」
そう元気よく少年、グーナは自分の名前を言った。
「お前…タフだな…」
ユウシャは少し引きながらそう話した。