天才魔法使いファニーの痛快冒険譚
かつて世界は、魔法と剣が支配する混沌の時代だった。
神々は遠く、王は眠り、民は闇に怯えて暮らしていた。
だが、そんな絶望の時代に、空からふわっと舞い降りたひとりの少女がいた。
彼女の名は――ファニー・シュテルン。
天才で、無敵で、ちょっと(いや、かなり)おバカな魔法使い。
甘いスイーツを武器に、今日も爆発とともに事件を解決(という名の破壊)していく。
恋する剣士、うざいライバル、しゃべる猫、そして四天王から魔王まで――
世界を揺るがす壮絶な戦いの果てに、彼女が見つけるものとは一体……?
これは、愛と笑いとドカーンが詰まった、痛快ファンタジー活劇である!
第一章:魔法少女、戦場に咲く
西方諸国を震撼させる暗黒の時代が幕を開けていた。村々は魔物に焼かれ、王都は閉ざされた城門の内で息を潜め、四方の空には暗雲が渦巻き、雷鳴が神託のごとく轟いていた。人々が希望を失いかけたそのとき、空から颯爽と舞い降りた一人の少女がいた。
「みんなー!あたしが来たからには、もう安心していいよーっ!」
その名はファニー・シュテルン。金のツインテールが風にたなびく、年齢不詳(本人曰く永遠の17歳)の天才魔法使いである。白と紫のフリルをふんだんにあしらったドレスに、魔力を封じた十字のステッキ「カオス・キャンディ」、そして肩には喋る黒猫のミーちゃんを乗せていた。
「……また勝手に『安心』って言ってるニャ。前回のドラゴン戦、村ひとつ消し飛ばしたの忘れたニャ?」
「えー?あれは爆炎魔法がたまたま風に煽られただけだし!むしろ被害はドラゴンのせいじゃない?」
そんな軽口を叩く暇もない。ファニーの目の前には、無数のスライムとゴブリンたちが、ギャアギャアと喚きながら群れをなして襲いかかってくる。視線の先で、村の子供たちが怯えているのが見えた。
「やれやれ、雑魚掃除からスタートか……ミーちゃん、爆裂☆お菓子パーティー、行っちゃおっか!」
「またそれニャか……もう知らないニャ!」
ファニーがステッキを振りかざすと、空間に巨大なマカロン、キャンディ、チョコボールが次々と出現。それが発光しながら回転し、次の瞬間、凄まじい音を伴って爆裂四方八方へ!
「爆☆発☆スイーツ☆デスティニー!!!」
スライムは甘い香りとともに飛び散り、ゴブリンたちは頭にドーナツが直撃して昏倒。辺り一面、チョコとカスタードの海と化した。
「ふふん、これがあたしの“スイーツ魔法”の真髄よ!」
そこに、優雅な足音とともに現れたのは、紅のドレスを身にまとい、真紅の瞳を冷たく光らせる少女。ファティマ・フォン・リヒテンベルク。高貴なる名家出身の令嬢魔法使いであり、ファニーのライバルであった。
「……相変わらず品のない戦い方ね、ファニー。爆発でしか物事を解決できないなんて、魔法使いとしての美学を疑うわ」
「おやおや、ファティマお嬢様じゃない。お城のティータイムはもうおしまい?」
その瞬間、空気が震えた。二人の天才魔法使いの視線が交差し、あたりのゴブリンたちが恐怖に震える。
だが、時を同じくして、森の奥から一閃。銀の剣が稲妻のように走り、背後から忍び寄っていたゴブリンの首が、音もなく宙に舞った。
「遅れてすまない。ファニー、背後の隙は甘いままだな」
漆黒のマントを纏い、青銀の目を輝かせる剣士、アッシュフォード・グランツ。貴族出身ながら旅を選び、数多の戦場を駆け抜けた伝説の剣士。彼の瞳には、ファニーの無鉄砲さと光り輝く強さが、たまらなく愛おしく映っていた。
「アッシュフォード様っ♡ って、いきなり首刎ねるのやめてよね〜!女の子の前だよ!?」
「……すまん、だが貴様にその“女の子”らしさがあるとは思えない」
「ひどぉい!!」
そんな掛け合いをしている間にも、空は黒く染まり、森の奥から不吉な風が吹き込んできた。
──ゾォ……ゾゾゾ……
そして現れたのは、巨大なマントを羽織ったアンデッドの群れ。その中央には、全身を宝石で飾ったヴァンパイアと、骨だけの魔導士リッチが並び立っていた。
「貴様ら……“魔王軍”の中ボス、《紅き夜の吸血鬼ヴァルス》、そして《死霊王リッチ・マルディス》!」
「ふははは……貴様らにこの地を渡すことは叶わぬ……全てはグロスゴリア2世様の御心のままに……」
戦いの火蓋が切られた。その先には、四天王――炎帝カイザー、雷帝サウザー、氷帝シュヴァルツ、風帝エルフィン――そして、全てを支配する“最凶最悪”の魔王・グロスゴリア2世との激闘が待ち受けている!
だが、ファニーは笑う。
「いいよいいよ〜、どんだけ強くたって全部ぶっ飛ばせばいいんでしょっ!スイーツは世界を救うのよッ!」
この物語は、天才魔法使いファニーちゃんが、世界を救うために悪を蹴散らし、恋にバトルに魔法にスイーツで大活躍する、痛快バトルファンタジーである――!
第二章:ファティマさんはツンツンしてるだけなんだからね!
スイーツ爆発によって、村は救われた。……いや、正確には「魔物の被害からは救われたが、代わりにマシュマロが天井から滴ってくる災害に見舞われた」と表現すべきかもしれない。
「ううっ……家の中が全部チョコレート色に……」
「ママ、地面がプリンだよ〜」
「おお……我が家の蔵が……お菓子の海に沈んで……ワインとチョコのマリアージュや……」
村人たちの悲喜こもごもな声を背に、ファニーは気まずそうに鼻をこすった。
「えーっと……ま、まあいいじゃない? 命が助かったし!あたしの魔法って、ほら、命にやさしいっていうか~!」
「ニャあ……完全に無責任の化身ニャ」
肩のミーちゃんが重いため息をつく。ファニーは猫の尻尾を指でくるくるといじりながら、遠くで腕組みをしているファティマを横目でちらりと見る。
ファティマ・フォン・リヒテンベルク。知識も才能も気品も、全てにおいてエリート中のエリート。だが、その美しさと完璧さの奥には、とてもめんどくさいツンツンな性格が潜んでいた。
ファニーは歩み寄って、あえて大きな声で言った。
「ねえファティマ〜、ありがとうね〜! あたしが村を守ったあと、ちょろっと助けに来てくれて!」
「……ちょろっとじゃないわ。私がいなければ、あなたのスイーツ爆弾で村が完全消滅していた可能性があるのよ」
「え〜? でもファティマが来る前に、ほとんど片付けちゃってたも〜ん♪」
「……ッ、こ、このっ、無神経マカロン女っ!」
「誰がマカロンだコラァ! それはおいしくてかわいいやつだぞ! 光栄に思えっ!」
周囲の空気がまたも緊張感を帯びる中、剣士アッシュフォードがため息混じりに割って入った。
「やれやれ……また始まったか。魔物より騒がしいな」
ファニーがアッシュフォードのマントに隠れるようにピョコッと移動すると、急にうっとり顔になる。
「アッシュフォード様ぁ〜♡ あたし、村を守るためにめちゃ頑張ったの〜。褒めてくれてもいいんだよ?」
「……お前は褒めると調子に乗るからな。今日のところは“まあまあ”だ」
「うわっ、ツンデレきた! これはもう両想いの証拠だよね!?」
「……違う」
「照れてるぅ〜! ねぇファティマ、今の聞いた〜!?」
「聞きたくもなかったわ!!」
そんなコントのようなやりとりの最中、どこからか黒い霧が立ち込めてきた。ミーちゃんの毛が逆立つ。
「……おい、あの感じ、ただの霧じゃないニャ。これは……“死霊の瘴気”ニャ」
「まさか……中ボス、まだ残ってた!?」
ファニーがステッキを構えると、地面がごごごと揺れ、真っ黒なマントをまとった影がゆらりと現れた。その頭蓋骨には金の王冠。背には蝙蝠の翼。そう、さきほど逃げ去ったと思われた中ボス級魔物が、ちゃっかりリベンジに現れたのだった。
「ぐはははは……! 我は不死王リッチ・マルディス! 甘く見ていたな小娘ども……我が真の力、見せてやろうぞ!」
「もう出番終わったって言ったじゃーん! しつこい男はモテないってば〜!」
「黙れスイーツ魔女ッ! お前の甘ったるい魔法など、我が死霊魔術の前では無力……!」
「ふっふっふ、それが甘いって言ってるのよ、骨太じじい!」
ファニーはくるりと宙で一回転しながら、魔法陣を描いた。空にカップケーキのような模様が浮かび上がる。
「炸裂カスタード・カタストロフィー!!」
死霊軍団に降り注ぐ大量のプリン弾。その熱量とカロリーでリッチの部下たちは蒸し焼きになり、リッチ本人もプリンまみれで地面に埋まる。
「おのれええええええええええええ!!!」
「ファティマ〜、今の見た!? 完璧なプリン落としだったでしょ!」
「プリンで魔物倒すとか、ほんと理解不能……!」
「理解しなくていいの、感じればいいのさ……!」
かくして、村は再び救われた(ただしカロリーは天元突破)。リッチ・マルディスは「もう出番なさそう」と消え、ファティマは「なんで私がこんな奴と一緒に旅してるのよ」と天を仰いだ。
だが、彼女たちの旅は、まだ始まったばかりである。
その遥か彼方の山脈の奥――
四天王のひとり、《炎帝カイザー》が不敵に笑っていた。
「ほう……スイーツの魔法使いか。面白い……焼き尽くしてやろうではないか……」
次なる戦いは、もっと熱く、もっと甘く、もっとド派手に!
天才魔法使いファニーちゃん、次なる爆発に向けて、ただいまスイーツ仕込み中!!
第三章:灼熱の炎帝カイザー、燃ゆる誇りとスイーツ魂!
その日、世界は再び燃え上がった。
ファニーたちは、火山帯の奥地「灼熱の地・フレイムラント」に足を踏み入れていた。赤黒く染まる空、唸りをあげる溶岩の海、そして遠くには巨大な城――“炎の王宮”がそびえている。そこに待つは、魔王軍四天王の一人、《炎帝カイザー》。かつて七つの国を一晩で灰に変えたという、伝説の炎術師である。
「うぅ〜〜、暑い〜〜〜〜! ちょっと、誰かアイスないの? スイカバーとか!」
ファニーはドロリと溶けそうな顔で、魔導書をパタパタと扇ぎ代わりに振り回していた。額には汗が光り、ツインテールもぐったりと力なく垂れている。
「おまえは炎帝と戦いに来たのか、それともバカンスに来たのか……?」
アッシュフォードは呆れ顔でマントをファニーの頭にかけたが、すぐに彼も暑さにやられたのか「……重い」とぼそり。
「ファニー、ちゃんと水分補給しろニャ。体温が3度上がると、魔力制御に異常が出るニャよ」
「だってー、空気が焼けてんだもーん……あ、でもアイス魔法って無かったっけ?氷帝シュヴァルツとかが使いそうなやつ」
「今はそいつ関係ないニャ!」
一行が愚痴をこぼしながら進んでいると、突如、火山の奥から大地が震えた。火口から吹き上がる業火。その中心から、ゆらりとひとつの影が立ち上がった。
その男は、筋骨隆々。上半身裸で燃えるような紅蓮のマントを背にまとい、頭には獅子の仮面。全身から尋常ではない熱気を放ち、辺り一面の岩を蒸発させていく。
「待っていたぞ、スイーツの魔法使いよ……我が名は、《炎帝カイザー》!」
「うおっ、思ったよりムッキムキ! え、なに? 筋トレ界の四天王?!」
「愚か者……我は炎を統べる王。甘き戯れに現を抜かす貴様など、この地で炭に変えてくれる!」
カイザーが拳を突き上げた瞬間、天から流星のような火球がいくつも降り注いだ。地面が割れ、マグマが噴き出し、ファニーたちは一気に退避を強いられる。
「なにこれ!? 初手が地獄すぎない!?」
「貴様に慈悲などいらぬッ!」
その叫びとともに、カイザーは「焔皇陣・双陽牙」を発動。両腕に燃え盛る剣を出現させ、ファニーめがけて突進する。反射的に防御魔法「マシュマロウォール」で受け止めたが、剣はマシュマロを貫き、ファニーを地面に叩きつけた。
「ぐ、うぅっ……熱っつぅぅぅうううう!!?」
「ファニーッ!!」
アッシュフォードが急ぎ駆け寄ろうとするが、カイザーはその前に立ちふさがる。
「剣士よ……貴様の相手は後だ。我の戦いは、あの娘との“誇りの激突”なのだッ!」
焼けつく岩に倒れ込んだファニーは、傷だらけの手でステッキを探りながら息を荒くしていた。髪は焦げ、スイーツ色の衣装にも穴が開き、甘い匂いが漂う……が、さすがに今回は笑ってごまかせる雰囲気ではなかった。
「ちょ……ちょっとだけ……マジでピンチかも……」
すると、ふわっと耳元に声がした。
「ファニー……甘く、考えすぎたわね」
声の主は、紅のドレスが灰に汚れるのも構わず、ファニーの前に立ちはだかったファティマだった。彼女は静かに魔法陣を展開し、冷たい氷の矢を空へ放つ。
「貴女がボロボロになると、私の負けみたいで気分が悪いのよ……。だから今だけ、助けてあげる。勘違いしないでね!」
「ファティマ……!」
「次に倒れるなら……私の魔法でよ」
氷の矢が炸裂し、カイザーの炎と激突する。しばし拮抗ののち、二人の魔法は相殺され、爆風が舞った。
その間に、ファニーはゆっくりと立ち上がる。ステッキを強く握りしめ、焦げたツインテールを振りかざす。
「もういい。あたし、決めたよ。どんなに強くても、どんなに暑くても……スイーツの力をバカにしたら許さないっ!」
魔力が迸る。ファニーの背後に巨大なケーキの幻影が現れた。生クリームが渦を巻き、ストロベリーの光が戦場を照らす。
「これが……あたしの本気魔法! スイーツ奥義――ギガギガ・デコレーション・インフェルノ!!」
ケーキが爆裂し、クリーム弾が無数に炸裂。高温と融合した超スイーツエネルギーがカイザーを直撃。火と甘さの究極融合が、ついに四天王の一角を飲み込んだ――!
「ば、馬鹿な……この我が……お菓子で……がはっ!!」
カイザー、戦闘不能。焼けた大地にパリパリのクレームブリュレを残して沈黙した。
「勝った……勝ったよ、ミーちゃん……!」
「すごいニャ……スイーツで灼熱の帝王を倒すなんて……前代未聞ニャ……」
ファティマはふんと鼻を鳴らした。
「調子に乗らないでよね。私が止めなきゃ、溶けてたくせに……」
「えへへ、でも助けてくれたじゃん? ツンデレってやつだ〜!」
「違うわ!!!」
戦いの後、フレイムラントは静寂を取り戻した。四天王の一人を退けたことで、魔王軍に一撃を加えたのは間違いない。
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかった。残る三人の四天王――雷帝サウザー、氷帝シュヴァルツ、風帝エルフィン。そして、すべての闇を束ねる存在、大魔王グロスゴリア2世が、確実に牙を研いでいた。
だが、ファニーは笑う。
「だいじょーぶ! だってあたし、天才だからっ☆」
この物語は、まだまだ加速する!
第四章:雷鳴轟く空中決戦!ツッコミ不在の電撃地獄!
燃え尽きたフレイムラントを後にし、ファニー一行がたどり着いたのは、大空に浮かぶ天空都市。空気は薄く、雲は高速で流れ、そして何より……風がうるさい。ピューピューどころではない。ビュウビュウ、バギュルルルル、パァァン!!と謎の爆音が四六時中鳴り響いていた。
「ねぇこれ、静かな環境でお昼寝とか絶対ムリな場所だよね?」
耳を塞ぎながらファニーがボヤく。髪は風にブォォンと持っていかれ、ツインテールが空中でほぼ羽ばたいていた。
「この強風、魔力を帯びているニャ。気を抜くと空に吸い込まれるニャよ」
「だぁ〜から来たくなかったのよ……風の神殿とか、オシャレだけど絶対面倒なギミックあるに決まってるんだから」
ファティマはスカートを押さえつつ、凛とした顔で前を見据える。
一方、アッシュフォードはというと……
「……マントが全部上にめくれて前が見えん」
「マント脱げよ! 美形がずっとコントしてんの地味にキツいから!!」
ツッコミとボケの嵐が吹き荒れる中、突然、空が一瞬で暗転する。
空中に巨大な魔法陣が浮かび上がり、バリバリと雷光が奔った。雲が裂け、その中心から黄金の鎧をまとった青年が現れる。空中を滑るように飛翔し、電撃をまとった双剣を構えるその姿――まさしく雷帝、《サウザー・ヴォルテクス》!
「ようこそ、天の領域へ。貴様らの旅路はここで終わる……雷と風の裁きのもとに!」
「うわ〜、出た! 100人中97人が中二病って言うタイプの登場台詞!」
「黙れ、スイーツ使いの魔女……! この空では我が“速度”こそが力。おまえの甘さなど、雷光で焦がし尽くす!」
「いいね〜! でも、あたしの“甘さ”は焦げるほど強いんだから!」
そう言うが早いか、サウザーは一瞬で姿を消した。
「どこいっ……ッ!?」
バヂッ!――次の瞬間、ファニーの頬がビリッとしびれ、雷が弾けた。気づいたときには、もう別の場所にサウザーがいる。
「“雷迅”……雷帝が誇る超高速魔法ニャ!」
「くぅ〜〜っ、やっぱり来たか! スピードバトル!」
サウザーはさらに加速する。次はアッシュフォードへと雷光を走らせた。
「遅い……」
しかし、彼は真正面からその雷を剣で受け止め、キィンと火花を散らす。
「おまえ……俺の剣が雷を通すとでも?」
「ほほう、貴様、ただの剣士ではないな。……だが、速さは力だ!」
そしてまた一閃。サウザーの姿は消えた――が、今度はその背後からファティマの呪文が炸裂する。
「雷遮結界!」
展開された結界にサウザーの雷撃が吸い込まれ、わずかに動きが鈍る。
「今よ、ファニー!」
「おっけー!! スイーツ加速モード、いっくよぉ〜〜っ!」
ファニーの足元に現れる巨大なロールケーキ・ホバーボード。その名も「スイート・サーファー改」。魔法の力で空中滑走しながら、彼女は目にも止まらぬスピードでサウザーに接近した。
「スイーツ魔法奥義・電撃マカロン・メガトンアタック!!」
「なにィ!?」
ぶつかる!と思いきや――
すかっ。
ファニーは空振りした。サウザーは寸前でかわし、逆に背後から渾身の雷撃を浴びせる。
「“雷閃陣・クロスボルト”!!」
「うぎゃあああああ!? しびびびびびびびび!!」
ファニー、空中で爆発四散(※演出)。マントとステッキがぐるぐると落ちていく。
「ファニーっ!!」
ミーちゃんが空中で彼女をキャッチしようと飛び出すが、体重差でファニーの上に落下。
「ぬぁあああ!? ミーちゃん、ちょっ……重っ!!」
「うるさいニャ! こっちも命がけニャ!」
「このままじゃ……スイーツごと墜落ぅうぅ!!」
しかし、そんな彼女をしっかり受け止めたのは――
「間に合ったか……おい、重いぞ」
アッシュフォードの腕だった。
「うぅ〜〜アッシュフォード様〜〜♡♡♡ 抱きしめられたぁ〜〜!!」
「……もう少し静かにしろ。鼓膜が焼けそうだ」
一方そのころファティマは、サウザーとの高度な魔法戦に突入していた。雷と氷の光が交錯し、雲海を貫く。
「この娘たち……ここまでやるとは。ならば、我が真なる雷をもって――!」
サウザーが上空へと飛翔し、巨大な雷雲を召喚する。
「来た……本気技ニャ! “雷神招来”ニャ!」
「こっちも本気出さなきゃでしょーがぁ!!」
ファニーはステッキを高く掲げ、今度は真剣な表情を見せた。傷だらけの姿で、泥んこだらけのドレスで、それでも彼女の瞳は燃えていた。
「これは、すべてのスイーツ魔法を統べる、究極の甘味――」
空に浮かび上がる、巨大なドーナツの魔法陣。中心に光が収束していく。
「奥義中の奥義! スイーツ最終魔法・ギガギガギガ・ドーナツ・トルネード・ヴァニラフラッシュッ!!!」
巨大ドーナツが雷雲を吸収し、逆にそれを“砂糖雷”に変換。甘くてビリビリする世界一危険なお菓子がサウザーを直撃した!
「グワアアアアアアアアアア!! か、甘ッ!? でも辛ッ!? なにこれッ!?!?」
雷帝、戦闘不能。
ファニーは息を切らしながら、空中でガッツポーズを決めた。
「どんな速さでも、スイーツの前には勝てないのよぉぉぉっっ!!」
……なお、そのあと空中から普通に落ちた。
テンペストに平和が戻ったころ、サウザーは地面に寝転びながら空を見上げ、呟いた。
「まさか……こんな戦いがあるとは……。だが悪くない……少し甘いものが……好きになれそうだ……」
一行は次なる地、「氷の国グレイシア」へと向かう。
次に待ち受けるは、氷帝。冷酷無比で完璧主義な彼の正体とは……?
そしてファティマの過去との意外な繋がりが、明かされる……?
スイーツとバトルと恋と笑い! まだまだ止まらない、ファニーちゃんの大冒険!!
第五章:氷結の国と温泉と、涙が凍る恋の一撃!
雷帝サウザーを退けた一行は、天空都市から北の大地へと降り立った。そこは一面、白銀の世界。凍てつく風が吹きすさび、木々は氷の結晶に閉ざされ、空気さえ音を立てて凍るようだった。
「ひぇ〜〜〜!! むりむりむりっ!! さむいさむいさむいーーっっ!!」
ファニーはガクガクと震えながら、毛糸の帽子とマフラーに顔を埋めていた。服の下にもカイロが何枚入ってるのか分からないレベルで着込んでいる。モコモコすぎて、もはや誰だか分からない。
「おい……誰だその雪だるまは」
「ファニーだよ! よく見てよ、かわいい目してるでしょ!? これ、保温仕様なんだよ!? NASA並の断熱!」
「……動きがドーム型の物体ニャ」
ミーちゃんも小さな肉球をコタツ型魔法アイテムに突っ込んでぬくぬく。ファティマはというと、寒さにも全く動じず、美しく整った赤のロングコート姿で雪を踏みしめていた。
「まったく……寒さごときで騒がないでちょうだい。美しくないわ」
「うっ……この温度で“美しさ”とか言ってる時点で精神が鍛えすぎなんだよこの氷貴族!!」
「……今それ、褒めた?」
「全力で煽ってんの!!!」
そんな中、アッシュフォードはやや無言気味。静かに雪を踏みしめながら、周囲の気配を探っていた。
「……あの建物、見えるか。氷霊の神殿だ。たぶんあそこに“氷帝”がいる」
その指差す先、雪の彼方にそびえ立つのは、純白の氷で作られた神殿だった。光を反射してきらきらと輝き、幻想的な美しさを放っている。
「ま〜た、バトルかあ……でもその前にさ、ねえねえ、ちょっと寄り道しない? なんかこの辺、“伝説の温泉”があるって聞いたんだよね〜?」
「えっ、温泉ニャ!? この気温で!?」
「うん、氷の下に天然の地熱で湧いてる秘湯があるんだって! これはもう……入るしかないよね!!」
*
──数十分後、そこは楽園だった。
凍てつく雪原の奥、岩の間から湧き出す奇跡のような温泉。《氷華の湯》。湯気がもうもうと立ち込めるその湯船で、ファニーたちは凍えた身体をゆっくりと溶かしていた。
「ふぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……生き返るぅ……! やっぱ世界を救うには温泉って必要不可欠だよねぇ……」
「……まぁ、これはこれで……気持ちいいニャ……」
ミーちゃんは浮き輪に乗ってぷかぷか浮いていた。アッシュフォードは湯船の端で目を閉じ、静かにくつろいでいる。
そしてファティマはというと──
「……まさか混浴とは思わなかったわ……!」
赤くなった顔を必死で隠しつつ、露天風呂の岩場の奥で距離を取っている。ファニーがにやにやと近づいてくる。
「ふっふっふ、これはチャンス……ファティマのレアな弱点発見〜☆」
「……一言でもそれ以上喋ったら、吹雪で凍らせるから覚悟しなさいよ……」
「ヒィ! お湯で溶かしてもらおっかなぁ〜!?」
「溶かせるレベルじゃないわよ!!」
……そしてその後、案の定、ファニーは軽く凍らされた。
*
温泉を後にし、彼らはついに《氷霊神殿》の最深部へとたどり着いた。
そこにいたのは――蒼い氷の玉座に静かに腰かけた、一人の青年。
髪は白銀、瞳は深い蒼。装飾を削ぎ落としたシンプルなローブを纏い、その身から発せられる冷気は、空気そのものを凍てつかせるほどだった。
「……待っていた。スイーツの魔法使い……そして、リヒテンベルクの娘」
ファティマの肩がわずかに震えた。
「……あなた……やっぱり……」
「そうだ。私はかつて、貴女の兄の弟子だった者……氷帝、《シュヴァルツ=ノイン》。師の仇を取るため、今ここで貴様らを凍てつかせる」
「兄様の……弟子……だったの……?」
「ファティマ……?」
ファニーが驚いて声をかけるが、ファティマは唇を噛み、前へと進み出た。
「あなた……兄を殺したの?」
沈黙。
シュヴァルツの瞳に、わずかな哀しみが宿る。
「違う……彼は“理想の魔法”を追いすぎた。私はそれを止めようとした。だが、止められなかった。そして今も……あの時の答えを探している」
「……!」
だが、その瞳が鋭くなる。
「だが感傷に浸る時間はない。“力”の真理を貴様らに問う。それが、私の……答えだ」
氷が鳴いた。
瞬間、神殿が凍てつく光で覆われる。ファニーはステッキを構えた。
「よしっ、感傷タイム終了! いっくよーっ!」
シュヴァルツの魔法は、まるで芸術だった。空間ごと凍らせる「氷牙陣」、踏み込んだ瞬間に動きを止める「零度領域」、さらには空中に巨大な氷槍を創り出す「氷槍舞踏・葬奏」!
「これ……ちょっと洒落にならないヤツだよ!? マカロンぶつけても溶けなーい!!」
ファニーが飛び回りながら、スイーツ魔法で応戦するが、ことごとく凍らされて無効化されていく。
「クッキーが……凍った……こんな虚しさ初めて……!」
「ファニー! 後ろだニャ!!」
「えっ、後ろ……あっぶなっっ!!」
氷の刃がファニーのツインテールをかすめ、髪の一房がバッサリと凍り落ちた。
「ぎゃーーーっ!! ツインテールに歴史的損傷!!」
だがそのとき、ファティマが前に出る。
「……ファニー。あなただけに背負わせないわ。これは……私の過去との決着でもあるから」
魔法陣が展開され、二人の魔法が融合する。
「スイーツ&エレガンス・魔導連携――氷菓幻想・フラッペ・パルフェ・エターナルブリザード!!!」
ド派手なスイーツと、精緻な氷魔法が混ざり合い、世界を染め上げる甘美な極寒の奔流がシュヴァルツに直撃!
「……ッ、これが……“共鳴”……か……」
戦場は凍てついたまま、静寂に包まれた。
やがて、氷の奥からゆっくりとシュヴァルツが膝をつく。
「……完敗だ。だが……どこか……少しだけ……あの方に、似ていたよ、君たち……」
そう言って、彼は笑った。寂しげで、でもどこか温かく。
ファティマは、その言葉に小さくうなずいた。
「ありがとう、兄様のこと……忘れてなかったのね」
氷帝、沈黙。神殿は静かに、雪のように崩れていく――。
戦いを終え、雪原を進む一行。
ファニーは大きく伸びをしながら言った。
「ねー! 次こそ暖かいとこ行こうよ! そろそろ“風帝”とか! 爽やか系イケメンが希望〜〜!」
「また惚れる気ニャか!? 何人目ニャ!?」
笑いと共に、彼女たちの旅は続く。
残る四天王はあと一人。そして、その先に待ち受けるのは、かつてない闇の力……大魔王・グロスゴリア2世!
だが、どんなに道が凍りついても、彼女の魔法は甘く、熱く、そして自由である!
第六章:風よ、過去を攫え――忘れられないものがある限り
四天王、最後の一人。
風帝・エルフィン。その名を聞いた時、ファニーの動きはわずかに止まった。いつものように軽口を叩くでもなく、ふざけた魔法名を叫ぶでもなく、彼女は静かに、遠くを見つめていた。
旅路の果て、彼らは緑深い森を抜け、風の神殿へと向かっていた。そこは天と地の狭間に浮かぶ、透明な浮遊の大地。目に映るすべてが風に揺れ、音すら風に溶けて消えていく、幻想的な空間だった。
「空が……逆さになってるニャ」
「ほんと……なんか夢の中にいるみたい」
ファティマが静かに囁き、ミーちゃんがふわふわと浮遊している。アッシュフォードは剣に手を添えつつも、どこか遠い目で景色を見ていた。
「……ここは、“風の民”の聖域だ。昔、俺が一度だけ来たことがある」
「えっ……アッシュフォード様、ここ知ってるの?」
「ああ。……それに、この神殿の主、“風帝エルフィン”とも――面識がある」
ファニーがわずかに目を伏せた。
「……あたしも、少しだけ」
静まり返る空気。やがてミーちゃんが、ぽつりと呟いた。
「……ニャあ……もう、隠せないニャな」
■風の記憶
それは数年前。
まだ「天才魔法使いファニー」と呼ばれる前、少女ファニー・シュテルンは、「風の民」の隠れ里にいた。
孤児として育った彼女は、制御不能な魔力を持っていた。魔法を使えば爆発し、感情が高ぶれば雷が走り、寝言でさえ近所の井戸を蒸発させるほど。
その危うさを見かねた里の長老は、風帝エルフィンに彼女の“基礎訓練”を託した。
そして出会ったのだ。
風のように優雅で、美しく、どこか寂しげな少年、エルフィンに。
「魔法ってのはな、“消す”ことから始めるんだよ。風は見えないからこそ、強いんだ」
彼はファニーの魔力を抑え、心を静める術を教えてくれた。
彼女にとって、初めて「怖がられなかった人」だった。
だがその日々は長くは続かない。
魔王軍の襲撃で里は壊滅。ファニーはひとり取り残され、逃げるしかなかった。
――そしてそれっきり、エルフィンは姿を消した。
■風帝との再会
風の神殿の最奥、神殿の中心部に、その人はいた。
透き通るような白金の髪と、淡い碧眼。身を包むは風の衣。彼の存在自体が風の一部であるかのように、すべての空気がその周囲でそっと渦巻いていた。
「……久しいな、ファニー。君は変わらないな。昔と同じ、風に逆らう瞳だ」
「エルフィン……」
ファニーは、かすかに笑って、でも目を逸らした。
「……どうして、あのとき黙っていなくなったのよ」
「……君を守るには、僕が魔王軍に加わるしかなかった。それが、あの時の最善だった」
静かに語るエルフィンの声には、かつてと同じ、優しさと諦念が混じっていた。
「でも今、僕の使命は終わる。君がここに来た以上……僕は君と戦わなければならない」
「じゃあさ――本気でやるよ」
ファニーの瞳に宿る光が強くなる。
「昔はさ、抑え方ばっか教わったけど、今は違う。“ぶっ放し方”は、あたしの専売特許なんだから!!」
■風帝戦・開幕!
風が爆ぜた!
エルフィンは、空間そのものを裂く“風刃”を無音で展開し、空中を自在に飛び回る。
一方ファニーは、次々と空にスイーツ魔法を召喚!
「マシュマロ・トルネード!!」
「風圧で全部飛んでってるニャ!!」
「ぐぬぬぬぬ!! あたしの努力がスカッと無に……!」
ファティマとアッシュフォードも援護に入るが、風帝の動きは神出鬼没。攻撃はすべて空を切り、どこからともなく耳元で囁く声が聞こえる。
「ファニー。君の“暴走”を止められるのは、僕しかいないと思ってた」
「ふざけんなっ! 今のあたしは、もう止まらないよ!!」
風の刃が飛ぶ。ファニーの腕が裂ける。地面に落ちた彼女を、アッシュフォードがかばうように抱き上げた。
「無茶をするな……!」
「アッシュフォード様……っ」
ファニーがうるんだ目で見上げる。
「……あのね、さっきの温泉で、ちょっと言おうと思ってたけど……」
「……ああ。俺も……言おうと思ってた」
重なる視線。時が止まる――が。
「……って、今言う!? この状況で!? もうちょい後でもよくない!?」
「おまえが言い出したんだろう……」
「ムード台無し〜〜〜!!」
戦場で恋愛コントを繰り広げる中、風帝がぽつりと呟いた。
「……ふふ、やっぱり君は、変わらないな」
そして、ゆっくりと腕を広げる。
「風の理は、自由だ。だから……君が望むなら、もう僕は止めない」
風が静まり、彼の身体が透け始める。
「エルフィン……?」
「……この身は、“風の器”としての役割を終えた。だが君が来てくれたことで、心だけは……自由になれたよ」
最後にファニーに微笑みを残して、風帝エルフィンは、そっと空に溶けていった。
■そして、風が止んだ
風の神殿は崩れ、静寂が訪れる。
アッシュフォードは、まだ少し赤い顔のまま、言った。
「……続き、聞いてもいいか?」
「うん……。あたしも、ちゃんと、言いたい……から」
ファニーは静かにうなずき、その言葉を続けるのだった。
ついに最終決戦へ――!
四天王、すべて撃破。
ファニーたちは、魔王城へと向かう。
待ち受けるは、最凶にして最悪――大魔王グロスゴリア2世!!
でも、怖くなんてない。だって――
「今度は、あたし一人じゃないからっ!」
次回、最終章へ!
最終章:スイーツよ、世界を救え!さらば、ファニーちゃん!
世界は今、終わりかけていた。
黒き雲が天を覆い、大地は腐敗し、魔力の渦が空を裂いていた。
中心にそびえるのは、魔王城。その頂で高笑いするは、全ての元凶――大魔王グロスゴリア2世。
「フハハハハハ!! 人間どもよ、甘さなどくだらぬ!! 苦味こそが、世界の本質なのだ!!!」
全身漆黒の甲冑、頭から角、背中にコウモリの羽、そして……スイーツ全否定の姿勢。
ファニーは、キィッと眉を吊り上げた。
「甘さを……否定したな……?」
「どこに怒る要素あるニャ!? 甘味魔法使い、怖いニャ!!」
ファティマが横で呆れていたが、ファニーはステッキを構え、スカートをバサッと翻す。
「世界を支えるのは“愛”と“笑い”と“糖分”なんだよ!!」
そして始まった、最終決戦。
■怒涛のバトル、そして――
魔王グロスゴリア2世の力は規格外だった。
地を割る“ダーク・カカオ・クエイカー”。心を支配する“ビター・マインド・インベーダー”。攻撃するたびに甘味耐性が上がる“アンチスイーツバリア”。
「やばい……どんなスイーツ魔法も効かないっ!!」
「そうだ。我は糖分を拒む者……人類すべての歯医者の意志を束ねし存在!!」
「うわぁああ、今こそ禁断のフロス・オブ・ドゥームとか使ってきそう!!」
だが、ファニーはひるまない。
ファティマも立ち上がり、魔法を連携。
ミーちゃんは敵の肩に飛びつき耳を噛み、アッシュフォードは魔王の刃を真正面から受け止めた。
「ファニー、行けっ!! 俺が押さえる!」
「でもアッシュフォード様っ!」
「……今だけは名前で呼べ」
「……アッシュフォードっ!!」
二人の目が合う。時間が、ほんの少し止まる。
「俺は……君を守ると決めた。どんなに無茶でも、めちゃくちゃでも、君の“やりたい”を信じたい」
その言葉に、ファニーは胸を震わせる。
「……そっか。なら、“あたしのやりたいこと”って、もう一つだけだよ」
「なんだ?」
ファニーはにっこり笑って、言った。
「世界を救ったら……キスして♡」
「お前は……やっぱり最後までぶっ飛んでるな」
でも、その目は優しかった。
■最後の魔法、そして勝利へ
ファニーはステッキを高く掲げる。
「今こそ解き放つ……スイーツの極致……!」
すべての魔法が集束する。ファティマの理知、ミーちゃんのツッコミ魂、アッシュフォードの愛、そしてファニーの……とんでもない発想力。
「最終魔法――ラグジュアリー・スイーツ・グランド・フィナーレ・バースト・デラックス!!!!!」
甘味の嵐。巨大ケーキが宇宙から落ちてきて魔王を直撃。ドーナツ型の重力フィールドが魔王を閉じ込め、最後はとどめのチュロス・レーザーで撃破!
「グ……グラニテェェェェ……糖分、恐るべしぃぃぃぃぃっっ!!!」
大魔王、爆☆散。
甘味の力が世界を救った瞬間だった。
■そして――世界は笑った
戦いのあと、世界に平和が戻った。
空は澄み、風は優しく、草木は甘い香りを帯びていた(※これはファニーの魔法が残ってた副作用らしい)。
王都ではファニーたちを祝福するパレードが行われ、チョコと花で埋め尽くされた通りを、彼女たちは歩いた。
「よかったね、ファティマ。やっと美しく笑える場所ができたね」
「ええ。……まあ、あなたの魔法、味はさておき、色彩だけは美しいわ」
「いま味って言った!? 味“だけ”じゃないの!? ねえ!?」
ミーちゃんはチョコケーキの上で爆睡。
そして、ファニーとアッシュフォードは、そっと人気のない丘の上へ。
「……ねえ、約束、覚えてる?」
「……ああ」
ファニーは少しうつむいて、もじもじしてから言った。
「……あたし、ほんとは怖かった。自分の魔法が、誰かをまた傷つけるんじゃないかって……」
「でもお前は、“人を笑わせた”んだ」
アッシュフォードはそっと、彼女の髪を撫でる。
「俺は……君が笑ってると、なんか……ほっとする」
「……へへ。あたしも。アッシュフォードがそばにいると、安心する」
そして――
ふたりの影が、重なる。
空に、優しい風が吹いた。
■後日譚:その後のファニーちゃん
・ファニーちゃん、世界を救ったご褒美に**「魔法省公式・糖分制御特級魔導士(おやつ食べ放題)」**に認定される。
・ファティマさん、地元で**“氷の女王(実はちょっと面倒見がいい)”**として尊敬されるも、毎晩ファニーから手紙が届き「もうやめて」と泣く。
・ミーちゃん、ついにしゃべる猫として絵本デビュー。「おかしでせかいをすくったねこ」として世界中の子どもに愛される(印税でプレミアムキャットフードを箱買い)。
・アッシュフォード様、ファニーとの“婚約”を報告した際に魔法省が爆発(祝賀パーティーでファニーが新作スイーツ魔法を暴発させた)
■最後に
世界は、甘くて、笑えて、ちょっと切ない。
でも、誰かを想い、手を取り合えば――
未来はきっと、
スイーツみたいにおいしくなる。
「というわけで! 以上、**『天才魔法使いファニーちゃんの痛快バトルファンタジー』**でしたぁあああ!!」
「もう誰も止められないニャ……」
「次回作!? あるの!? えっ!? あるのっ!?(ガタガタ)」
\THE END/
(※このあと、特典冊子「ファニーちゃんの恋のレシピ ~爆発するマカロンの作り方~」が大人気となるが、それはまた別のお話)
◆作者あとがき◆
(※このページはまじめに読む必要は一切ありません)
やっほー☆彡
というわけでここまで読んでくれてありがとね!作者の「なんかノリで書き始めちゃった人」です!
正直に言うと、この作品、最初は「天才魔法使いが爆発する話」ってメモに書いただけだったんだけど、気づいたら魔王倒してました。
なんかスイーツで世界救ってるし、剣士は急に色気出すし、猫はしゃべるし、貴族令嬢はツンツンしっぱなしだし、作者だけ置いてけぼりだよコレ!!!
最終章書いてる途中で「このテンション大丈夫?」って5回くらい冷や汗かいたけど、「まあいっか!」って突き進んだら感動巨編(※当社比)になってた。
いや〜、勢いって大事ですね(小並感)
ちなみにファニーちゃんの爆裂スイーツ魔法シリーズは、執筆中ずっとお腹が空く副作用がありまして、章をひとつ書くたびにドーナツ3個食べてました。おかげで作者のレベルが2キロ増えました。ボス戦のときはチーズケーキで回復したので、実質RPG。
あと一応言っておきますけど、登場キャラは全員ノリで生まれました。
スライム?とりあえず出しとけ。
雷帝?なんか速ければよくない?
大魔王?歯医者の集合体です。
なにこの設定!?って冷静になったら負け。これは“感じる”作品なのです!!
■最後にちょっとだけ真面目に
読んでくれたあなたが、少しでもクスッと笑って、ちょっとだけ元気になってくれたら嬉しいです。
魔法もスイーツも出せない現実世界だけど、「笑う魔法」だけは誰でも使えるので、ぜひ明日も元気に爆発してください(※比喩です)。
それではまたどこかで!
\甘くてアホで最高の物語を、あなたに!/
著者:ちゃらんぽらん堂 代表取締役 スイーツ爆裂担当 脳三級