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天から美少女が降ってきたので一緒に暮らす  作者: 紅羽夜


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第51話「手合わせ」

 しばらくして、輸送車は止まった。

 開けた草原が広がっている。皆輸送車から降りた。

 ゼルストスは鎧を脱ぎ素手で構える。


「脱いでいいの?」

「ええ。一応確認ですが、フェイシスさんて無手でしょ?」

「むて?」

「武器使わないってことだ」

「あ、うんそう。私はこれ」


 可愛らしい握りこぶしを作る。


「対等にやりたいですからね」

「ゼルストスやりすぎんなよ」

「もちろん。ウニュ、もしも怪我したらお願いするよ」

「うん」

「リィド君、素手同士の対決。勝敗はどちらかが降参するか怪我しそうになったらでどうだい?」

「それは当人だけでなく、俺が判断して止めても?」

「もちろんだよ」

「攻撃魔術はなしにしてくれません?」

「おっとそうだね。了解した。じゃ、フェイシスさん」

「きっくは大丈夫?」

「もちろん、本気で来てくれて構わない」

「ぜる、嬢さん準備はいいか?」


 ワンドゥが開始の合図をした。

 お互い仕掛けることなく距離を保つ。

 フェイシスはとこととマイペースに前に歩いたり横に移動したりと謎の行動を取っている。


「な、何やって……」

「ウニュ黙ってな。あいつ笑ってるから」


 ハイバスが口をふさぐ。


「どうしたんだい?来ないのかい?」

「そろそろだけど、大丈夫?」

「大歓迎さ」

「うん」


 直後フェイシスが消えた。


『パン』


 と同時に乾いた音が響く。


「え。え?どういうこと?」


 ウニュには理解できなかった。

 フェイシスが消えたと思ったらゼルストスの目の前にいた。

 ゼルストスはフェイシスの拳を手で受け止めている。

 リィド、ハイバスは動きが見えているので、消えたのではないと分かる。

 初見であるハイバスは言葉を失っている。

 フェイシスは単に高速で移動し、ゼルストスを殴っただけだ。

 ウニュは目で追えず消えたように見えたのだ。


「見て分かるんだけど、一応確認。フェイシスさん強化魔術とか使ってないよね?」

「うん、なにもしてないよー」

「あははは。失礼した。じゃ、続けようか」


 ゼルストスはフェイシスの腕を掴み投げ飛ばす。


 一瞬でゼルストスはフェイシスの前に現れると腹に目掛け拳を振るう。


「あ、早い」


 振るわれた腕を受け止めるのでなく、上に手をかけ踏み台のように利用し上空に舞、背後に移動する。


「まじかよ」


 ワンドゥも目で追うのがやっとな高速戦闘が繰り広げられる光景を疑う。

 着地した刹那フェイシスは全力で土を踏む。土は抉れ、次の瞬間ゼルストスの背中を蹴りを入れる。

 ゼルストスは後ろを確認せず身をよじり的確にフェイシスの足に合わせ拳を振るう。


『バン』


 音と同時に風が舞う。拳と足が合わさった衝撃でだ。

 ゼルストスは足を掴もうと腕を伸ばす。

 その腕に対し足を上げ振り下ろす。


「っと」


 弾かれたゼルストスは後ろに下がり距離を取る。

 手をぶらぶらと振る。


「いいね。実にいい。よっと!」

「きゃ!」


 ゼルストスは笑うと何もない空間を蹴り上げた。

 その瞬間フェイシスが現れた。

 両腕でガードするが遥か後方に吹き飛ばされた。


「おい、どうすんのよあれ?」

「フェイシスは平気ですね」

「だよなー。ったくとんでもねぇな」


 今のゼルストスの蹴りで止めるか否か。ワンドゥには判断しかねるためリィドに確認を取る。


「大丈夫かい?」

「もんだいなーし」


 ゼルストスは一応声をかける。攻撃した本人だからこそ分かる。対してダメージになっていないことを。

 フェイシスの姿が消える。

 ゼルストスの前に現れる。が、かなり手前でお互いの攻撃は当たらない。


「フェイントか」


 ゼルストスは迎撃のために前面を殴りつけていた。繰り出された拳は止められない。

 が、勢いに体を任せ一回転し蹴りを入れる。

 フェイシスは止まった瞬間再度消えた。

 目の前に現れ蹴りを。 

 ではなく、斜めに移動し、ゼルストスから見て横に現れた。


「二段構えか」


 普段のゼルストスならフェイントにあわせて動けば引っかかりはしない。

 が、フェイシスの速度はゼルストスより速い。


「ぐっ」


 とっさに腕で防ごうとしたが間に合わずフェイシスの蹴りが横腹に深く刺さる。


「きゃん!」


 ゼルストスは懐に入った足を掴み殴り飛ばす。

 足を引っ張られ動かされせいで避けることができず拳が脇腹に当たりすっ飛ぶ。


「止めで」

「っと」


 リィドが手を上げ少し声を張る。

 追撃しようとしたゼルストスはかくんと無理に止め態勢がすこしゆらぐ。

 しばし沈黙が場を包む。


「いやー、びっくりです。ウニュ、一応フェイシスさんに」

「あ、うん分かった」


 ウニュは急いでフェイシスに魔術を使う。


「フェイシス、すまないね。あんたを盾呼ばわりしたことを謝るよ」


 ハイバスは頭を下げる。

「?」

「フェシスさん手合わせありがとうございました」

「ぜるちゃんこそありがとうございました」

「リィド君はどうです?」


 ゼルストスの笑み。これはあれだ。

 知らない人間が見ればさわやかなイケメンだが、これは獰猛な肉食獣だ。間違いない。


「俺は近接なんてからっきしなんで遠慮しときます」

「それにしてもフェイシスさん御強いですね」

「こんな可愛くてゼルと平気で殴り合う強さ。何でこんなさえないのとつるんでるんだ?うちにこないか?」

「いーや。リィドじゃないとだめ」

「ごめんねリィド君。後でワンドゥにはきつく言っておくから」

「別にいいですよ。よく言われますし」


 本当に。本当にだ。


「かーそんなに愛されやがって。ん?まてよ?」


 ワンドゥはリィドの肩を掴む。


「お前残り三人仲間がいるんだよな?まさか、全員麗しい女性っていうんじゃねーだろうな」

「っ……」 


 麗しいかさておき、女性である。


「おいいいい。なんて理不尽。いや、うらやましいー」


 ワンドゥはリィドの反応から全員女性。そして、皆フェイシスレベルだと予想。

 リィドの肩をぐわんぐわんゆする。


「あほ、醜い嫉妬なんかかましてるからもてないんだよあんたわ」

「いて」


 ワンドゥに強烈なチョップをかます。


「ハイバスてめー。ちっとは加減しろって」

「じゃゼルストスの説教コースでいいのかい?」

「あ、俺はあいつらの世話しないとなー」


 あいつらとは停めているキュリドーンのことだろう。


「ひとまず戻ましょう。お話は中で」


 再度輸送車の中へ。


「ふぇ、フェイシスさん素敵です」


 ウニュが尊敬のまなざしを送る。


「そうだね。いくら武器なしのゼルストスはいえ五分に近いってのは想像できないわ」

「フェイシスさん、あれ本気じゃないでしょ?」

「?」


 フェイシスは手を抜いたつもりはない。


「普段素手ではないのでは?」

「うん、とっておき使ってるよ」 


 ここでフェイシスが理解した。


「普段は魔術具の手袋使ってますね。と言っても耐性強化なのでフェイシス自身が強化されるわけじゃないです」

「やっぱりね。今度は手袋使ってやりましょう」


 やはり戦闘大好き人間だ。実にご機嫌の御様子。

 しばらくフェイシスの武勇伝で盛り上がった。


「ところで、お二人はどういった経緯で仲間に?」


 ゼルストスの疑問もまさにだろう。

 リィドは今まで通り、説明用の事情を話した。嘘はついていないのだから後ろめたいことなどなにもない。


「リィド君。困ったことがあったらいつでも言ってくれ。喜んでかけつけるよ」


 ゼルストスは涙を浮かべリィドの手を握りしめる。


「あ、ありがとうございます」


 手を放したいが強靭な力で離すことができない。


「ったく勝手にまたそうやって約束して」

「ハイバスは反対しますか?」

「そうとは言ってないだろう」


 やはりフェイシスは万人に愛される聖女なのだ。


「わざわざありがとうございました」

「とんでもない。二人ともまたどこかでお会いしましょう」

「ばいばーい」


 王都で別れることとなった。

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