第48話「ワイルドナギラー」
フェイシスはリィドの指示通り、ワイルドナギラーと対峙していた。
特に怪我などはしてない。
リィドはフェイシスに魔獣の戦いを教えてきた。リィド自身が教わったことではるあるのだが隠すことなく全てを教えてきた。
魔獣駆除で大切なことは二つ。
自身が負傷しないこと。
道具や武器など経費や損害をなるべく低くすること。
言うのは簡単だが実現は難しいのが世の常だ。
だがフェイシスの身体能力があれば意外と難しいものではない。
魔獣に気づかれないうちに、対応させる前に攻撃を食らわす。
魔獣の攻撃は避ける。深追いをせず魔獣が攻撃した際反撃する。
一人の時はこの対処を徹底すれば負傷するこはない。
その間にリィドが対策を行う。
リィドはフェイシスに加勢せず木々の中に入る。
「フェイシス、こっちに」
リィドの掛け声でフェイシスは駆けだす。
「しゃがんでくれ」
リィドがその場でしゃがんで見せる。
フェイシスはそれに合わせて滑り込む。
リィドは剣を構える。
ワイルドナギラーはフェイシスを追ってくる。
『ガキン』
リィドは木々のワイヤーを張っていた。
上手くいけばこれで倒せる。
『バキン』
「ちっなんつー力だ」
ワイヤーと爪が衝突し摩擦により一瞬火花が散る。
爪の頑丈さ、ワイルドナギラーの移動速度がワイヤーに勝りワイヤーが引き千切れた。
ワイヤーのおかげでワイルドナギラーの速度が削がれリィドで簡単に対応できる速度にまでなっていた。
リィドはワイルドナギラーの顔面を目掛け剣を振り下ろす。
『カン』
ワイルドナギラーは首を振り剣を受け止める。
牙は爪以上の堅さがあり、剣で斬り落とすことは叶わない。
「フェイシス!」
「とりゃー」
横から気の抜けた声からは想像を絶する強力な一撃をワイルドナギラーの横腹に拳が綺麗に決まる。
『ゴキ』
「きゃん」
鈍い砕けた音が響き、ワイルドナギラーは甲高い悲鳴を上げ木に叩きつけられる。
肋骨などの骨が砕けたのだろう。
ワイルドナギラーはそのまま地面に落下したが起き上がる様子がない。
恐らく暫くすれば絶命するだろう。
このまま放置して悪魔を追っても問題ないが、苦痛の中死を迎えるのも可哀想なのでリィドはワイルドナギラーに止めを指すことにした。
「リィド待って」
「フェイシス?」
フェイシスがリィドの手を握る。
「止めは私にやらせて」
「別に構わないがいいのか?」
「うん、最期まで責任」
「そうか……」
リィドはうつむく。
心の中は滝のような雨。
子供の成長とは実に尊くどこか切ないものだ。




