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天から美少女が降ってきたので一緒に暮らす  作者: 紅羽夜


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第46話「仕掛け」

 作戦会議をしていると目的地の村に到着した。


「他所の人が珍しい何用ですか?」


 恐らく魔族であろう男がリィド達に気づき声をかける。

 口調こそ穏やかだが背には長い槍を背負っているのが見え、その屈強な肉体から察するに武器を交えると確実に力負けする。


「ギルドの依頼で悪魔を討伐しに来たリィドとこちらフェイシスです」


 必要はないが狭い村の中疑われたままだと揉め事の元になるのでギルドの身分証を出す。

 相手にはそれが本物か偽造か調べる術はないが提示する行為が重要である。


「なるほど、ギルドの方でしてたか。ありがとうございます。では村長の元へ案内しますね」

「あ、すみません。依頼達成まで宿を借りたいのですが……」

「ああ。うちの村には宿はないんですよ」

「へ?」


 これは非常にまずい。宿がないということは野宿しかない。


「あ、安心してください。宿はないですが、村長宅に泊まることができるので」

「なるほど」


 村の最奥一番広い家に案内された。


「レグルそちらは?」

「村長こちらはギルドの依頼で訪ねてきたリィドさんとフェイシスさんです」

「おお、儂はこの村の村長のグランドルです。はるばる遠い所からありがとうございます」

「もしかしてギルド長から?」

「ええ。ザス殿から派遣儂らは座して待てばいいと。頼もしいことです」

「はぁ……」 


 軽い世間話を終えると客室に案内された。

 個人の家なので部屋が一つしかなかった。

 寝床だけでなく食事も提供してくれるとのことだ。

 金を払うと言ったが村長はザスにいろいろお世話になっていることもあり不要だと言われた。

 持ち合わせもかなり心元ないのでありがたくお世話になることにした。


「なんか久しぶりだな」

「?」


 少し前は自身の音以外しなかった。

 そしてフェイシスが降ってきた。

 気づけば空いていた部屋は満室になった。

 フェイシスと二人になることはあれど二人きりになるのはかなり久しぶりのことだった。


「フェイシスが来て最初の頃はこんな感じだっただろ」


 別の部屋があるのに寝ぼけてリィドのベッドに潜りこんでくる。


 慣れないうちは眠れぬ夜もあった。


「みんないなくいて寂しい?」

「な訳あるか。静かで嬉しいさ」

「……みんな嫌い?」

「……嫌いなら一緒に住まないぞ」

「そっか」

「あ。そうだ」


 リィドは鞄を漁る。

「?」


「これ」


 リィドはフェイシスに手渡す。


「首飾り?」

「ああ。バタバタしてたからさ」

「急にどうしたの?」

「えっと、それは使い切りの魔術具だ」


 魔術具店で買ったものだ。

 使い切りの魔術具は値段が安い。


「効果は行動不能になった時の解術だ」

「解術?」


 魔術には相手を拘束したり、意識を奪うなど相手を行動不能にする類が多数ある。

 それらの魔術を使われた行動不能になった時解術してくれる。

 解術とは魔術の効果を消す行為を指す。

 フェイシスの身体能力は高いため、ワイヤー等に縛らてなどの行動不能になることはほぼ考えられない。

 フェイシスの機動力を削ぐのなら魔術を使うべきだ。

 なので魔術を警戒すべきだとリィドは判断し魔術具を渡した。


「……バタバタしてたからさ。お祝いというかさ……」


 フェイシスの過去が分かった。

 一番最初の目的だったのだ。それが達成されたお祝いだ。


「……ありがとう」


 フェイシスはにっこりと笑うと首飾りを首につける。


「……リィドやってー」


 上手く留めることができずリィドに助けを求める。


「……ほら」

「ありがとう。悪魔退治頑張る」

「そうだな」


 夕食は食べたことのないものばかりでフェイシスは目を輝かせた。

 翌朝二人は早速悪魔がいるとされる森に向かった。

 村長らにも伝えたが今日は調査と罠を設置するだけで戦うことはしない。


「フェイシス、いつもの森とここの森。大きい違いがあるんだが分かるか?」

「?」


 フェイシスはしばらく思考する。


「こっちの森のが暑い?」

「そうかもしれないが、違うな。同じ森でも、シェラザードは平地で、こっちは山岳地帯。こっちの森の方が標高が高い」

「高い……あ」


 フェイシスは手を叩く。記憶の引き出しに衝撃が走る。


「お山の高い所は空気が薄くて寒い」

「そうだな」


 リィドたちからの一般教養として習ったことがあった。


「あれ?でもここは暑いよ?」


 習ったことと違う。


「ここの山は火山だから暑いんだ」

「あー」

「で、ここで注意する魔獣なんだけどな」


 囲まれたら厄介なチェーンワンディ。

 人類にかなり近い魔獣である。

 雑食でかなり知能が高い。人間の道具の使い方を学習し使ったりなどもすることがあるほどだ。

 最も特徴的なのは尾である。

 チェーンワンディの雌の尾が二本生えており、形状が鎖のような輪が連なっている形状をしている。

 獲物を群れの雌達が取り囲み、尾を絡ませ檻の如く逃げ道をなくす。

 そして、群れの雄が中で獲物を捕らえる。

 狩り以外では木にしがみつくのに利用したりする。

 人間が注意すべきは知能、群れでの行動、顎である。

 チェーンワンディは人間の骨を軽く砕く程度に力はある。

 囲まれないようにしつつ各個撃破が望ましい。


「リィドできたー」

「ありがと」


 リィドとフェイシスはいつくかの木に登り罠を設置する。

 正確には塗布であるが。

 チェーンワンディとして、木の枝にグランモースの神経毒を塗った。

 この毒は麻痺する程度で殺すことない。戦力を削ぐのが目的だ。

 一週間もすれば塗った毒は効果がなくなるので後始末も楽だ。

 二人は上へと向かう。

 ワイルドナギラーについてフェイシスに伝える。

 ワイルドナギラーは肉食で獰猛な魔獣だ。

 四足歩行で歩行速度がとてつもなく速い。

 地上で速いのは勿論のこと、真価は森の中、木々に囲まれた環境下だ。

 木を蹴り飛ばし木と木を高速で飛び回り上から獲物に飛び掛かる。

 口元には長い牙が二つ生えており、人間など容易く貫かれる。

 足の裏には愛らしい肉球を携えている。

 木々に着地する際の衝撃を吸収する役割を持っており、さらに厄介なことに魔法器官にもなっている。

 魔法器官からは雷が放出される。

 獲物に覆いかぶさった時に放出し相手を痺れさせ、移動時に瞬間的な爆発力を産みさらに高速で移動が可能になる。

 ワイルドナギラーは群れなどは形成せず個で活動しているので予測が難しいため専用に罠などは設置しない。


「こっちも終わったー」

「ちゃんと印つけたか?」

「うんばっちし」


 足止め用の罠を地面に設置が終わった。

 印は解除する時の目印である。

 専用のワイヤー近くの木に括りつける。魔力を流した際に特定の色に発光する。

 目印を残している理由は後に罠を解体する予定だからだ。

 残したままでは、万が一通過した人間や、無害な魔獣を怪我させる恐れがある。

 現在、村の人間は魔獣被害のために森に入ることを止めているので問題はないが、解決後は普段通り山に入るだろう。被害を出さないためのマナーである。


「おっし。悪いけどフェイシス先行してもらえるか?」

「りょーかい」


 経験からの予測は比べるべくもなくリィドに軍配があがる。しかし、勘や気配の察知ならばフェイシスの方が鋭い。

 魔獣と遭遇は仕方ないが、悪魔との曹禺だけは避けたい。なのでフェイシスに先行してもらう。

 夕方になり、特に問題なく設置が終わった。

 悪魔討伐の作戦は、悪魔を発見しだい奇襲で攻撃。

 理想はその場で倒しきる。

 失敗した場合、もしくは魔獣との戦闘が避けれらない場合は後退するフリをし罠にかけ敵の数を減らし隙を見て悪魔に攻撃である。

 二人は村に戻り村長に経過を伝え明日勝負をしかけるため、騒ぎになったとしも野次馬で近づかないようにお願いした。

 そして夕食を取った直後に二人は眠りについた。

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