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第3話「おふろ」

「好きなものってある?」

「わかんない」

「ですよねー」


 ひとまず普段通りに料理を作った。リィドは唾を飲み込み様子を伺う。


「……美味しい」


 リィドを襲ったのは嬉しではなく、可愛いいだった。

 ここは天国かと、自分の家で自分の料理に喜んでくれる美少女。これを天国と言わずして、どこに天国があるのだろうかと。

 あっという間に完食した。


「どうした?」


 フェイシスの様子がどこか落ちつかない。


「お腹減った」

「……」


 よく食べる子はタイプだ。リィドは張り切って調理を始めた。


「ごめんなさい」

「ううん、大丈夫。嬉しいよ」

「嬉しい?」

「ああ。こうやって食べるのはすごい久しぶりだからさ」

「リィドは一人?」

「そうだ」

「もったいない」

「え?」

「覚えてないけど、きっと今まで食べたどの料理より美味しい」


 心で涙した。

 食事を終え、改めてリィドは自分のことを紹介した。

 そして、重大なことに気づいた。


「ごめん、昼間出ている時に服買えばよかったな」


 明日の最優先事項が出来た。


「お風呂沸かしたから入ってきなよ」


 幾度となく練習したセリフだ。


「お風呂?」

「……まさか」


 フェイシスのきょとんした顔。


「さ、触りますよー」


 女性は好きだが、大好きだが肝心なところで情けがないのがリィドである。


「痛くないか?」

「大丈夫。気持ちいぃー」


 フェイシスはお風呂という知識を完全に消失しているようだ。

 なので、リィドは目を瞑り、極力見ないようにしながら頭を洗う。

 正確にはちらちら見るのだが、ここで死ぬわけにはいかない。


「じゃ、じゃ体はこっちのを使って洗って流したら、ここのお湯に浸かって」

「リィドは入らないの?」

「え?」


 ここでリィドは昨日魔獣討伐に失敗して死んだ、もしくは昏睡状態で寝ているのでは?と疑う。

 結果はもちろん変わらないのだが。リィドは紳士であって変態ではない。記憶がないことに付け込んでそういうことをするなんて言語道断である。

 なので、嬉しいお誘いをきっぱりと断る。


「フェイシス、男女は普通一緒にお風呂に入らないんだよ。仲良くなった恋人同士や家族だけなんだ一緒に入るのは」

「分かった」


 リィドは風呂から出て、水を飲み落ち着く。

 リィドは魔術具を操作し、通信魔術を起動する。元から家にあるものだ。相手はティタ姉だ。


「どうしたの?」

「ごめんなさい、ティタ姉明日お願いがあるんだけど」

「聞くだけ聞いてみましょうか」

「女の子の服とか、生活雑貨の買い物に付き添って欲しいんだけど」

「あ、噂の子か。大丈夫そうなの?」

「今の所は。悪い子じゃなさそう」

「そう。因みにいくら何でも、エッチなことしたりしてないよね?」

「し、しないですよ。俺は紳士なので。まずはお付き合いを始めてって段階踏まないと嫌です」

「ふふ、ごめんごめん。でもそういうことなら、協力します」

「ありがとうございます」


 とりあえず明日は安心だ。

 風呂場を伺うとまだ入っているようだ。女性の風呂は長いもの、もちろんそれくらいの知識は知っている。

 だが、フェイシスはお風呂知識がゼロなのだ。一応声をかける。


「……」


 反応がない。まさかのこともある。


「ごめん、開けるぞ」


 ドアを開けるとそこには誰の姿もなかった。


「なっ、てフェイシス!」


 浴槽の中にに完全に浸かっていたのだ。


「のぼせたのか?引き上げるぞ」

「……リィドどうしたの?」

「まさか、寝てたのか?」

「気持ちいいね、お風呂って」


 お風呂の危険性をたっぷりと説明した後、髪を拭くのを手伝った。

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