表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
Short Story 攫われた乙姫を救え

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/111

1話 海水浴


「いい天気だぜ」


 俺はパラソルの下、ビーチチェアに転がって言った。

 ここはとある海水浴場。

 透き通るような美しい海と、真っ白でサラサラな砂浜。

 空は高く、白い雲がゆったりと流れている。


「アルト様、天気が良すぎます……」


 水着の上からいつものローブを羽織ったエレノアは、俺の隣でレジャーシートに座っている。

 ちなみに、俺は海パンとガラシャツ、サングラスを装備している。


「アルト君……海水浴なんて……」サビナが俺を見ながらボソボソと言う。「いつまで経っても不良なんだから……」


 よく聞こえなかったけど、「海水浴楽しい」的なことだろう。

 サビナは黒い水着で、少しだけフリルが付いている。

 サビナは俺のとは別のパラソルの下に、眷属のマイルズと一緒に座っている。


 マイルズは海パンだが、上から長袖の薄いパーカーを羽織っていた。

 マイルズは眷属なので、本来ならやや日光が苦手。

 だけど、ちゃんと克服している。


「おりゃー!!」


 少し離れた場所で、ニナたちがスイカ割りをしていた。

 ニナの振り下ろした木剣が、スイカを粉々に打ち砕く。


「姉貴! 手加減しろよ!」


 リクが怒って言った。

 ニナはビキニと呼ばれるタイプの黄色い水着で、リクは普通に海パン。

 ただ、リクが可愛いので一瞬ギョッとするんだよな、その格好。


「はっはっは! さすがは勇者と言ったところか!」


 両手を腰に当て、ディアナが笑った。

 リクを誘ったら、ディアナも漏れなく付いて来たのだ。

 ディアナもニナと同じく、ビキニタイプの水着だ。


「ははは、待て待てロザンナ様~♪」

「いやぁぁぁぁ!」


 アスタロトがロザンナを追い回してる。

 アスタロトは海パン姿で、ロザンナはフリフリをふんだんに使った上、リボンやよく分からない飾りが付いた少し奇妙な水着を着ていた。

 ちなみに水着の色は白と黒。


「はいそこまで」


 ネビロスがアスタロトの足を引っかけて、アスタロトが盛大に転ぶ。

 ネビロスはお姉さん、って感じのシックな水着だった。


「ありがとうネビ!」


 ロザンナは追いかけられて半泣きになっていた。

 ロザンナを誘ったら、なぜかアスタロトとネビロスがくっ付いてきた。

 そして、ブラピが海をのんびりと泳いでいるのが目に入った。


 ブラピと一緒に骨がいる。

 グリムだ。

 俺は誘ってないけど、なぜかグリムも一緒に来たのだ。

 ロザンナが誘ったのかもな。


「さぁてエレノア、そろそろ泳ぐか?」と俺。

「ひぃぃぃ!」


 エレノアはブルブルと震えた。


「お前、そんなんじゃ、いつまで経っても太陽を克服できねぇぞ?」

「きゅ、急には無理です!」


 エレノアは涙目だった。


「まぁまぁアルト君」サビナが優しい笑顔で言う。「わたしたちは、ほら……太陽光チャレンジとか……小さい頃から不良っぽいこと、やってたけど……エレノアは違うでしょ?」


「それは、そうなんだけどな? あんまり甘やかしてもなぁ」


 俺が言うと、「サビナァァァ!」とエレノアがサビナの方に移動し、抱き付いた。

 仲良しだな!

 てか、太陽光チャレンジって不良っぽいのか?

 みんなやってただろ?


「へいへい、お姉さんたちぃ、ボクちゃんたちと、遊ばないかーい?」


 紫の髪をオールバックにした男が、リクとニナに声を掛けた。

 その男は、ジャラジャラとアクセサリーを装備していて、見るからにギャル男って感じの……って、こいつアレじゃね!?


 ロキの信者じゃね!?

 確か名前はプローホルだ!

 とか思っていると、ワラワラとギャル男たちが集まって来て、その中心にはロキがいた。


「ロキさん!」


 俺が声を掛けると、ロキ&ギャル男たちが一斉に俺の方を見た。

 俺を認識したロキが、笑顔で手を振って駆け寄ってくる。


「アルトじゃねーか。何? あんた、ヴァンパイアのくせに海水浴とかしてんのかい!?」


「アルト君は……不良だから」とサビナ。


「ん? あんた見た時あるけど……」


 じぃーっとロキがサビナを見詰める。


「久しぶり、邪神ババア……」

「誰がババアだ誰が! って、思い出した! あんたはクソガキ軍団の根暗娘! 生きてたのかい!?」

「え? ……わたし根暗?」


 サビナが不安そうな顔で俺の方を見た。


「いやいや」俺は右手を小さく振る。「んなことねぇよ。サビナが根暗なら、俺なんか超根暗になっちまうよ」


 俺の言葉が終わると、サビナがホッと息を吐いた。

 さてそれはそれとして、ロキさんエッロ!

 身体、エッロ!

 その上、水着の面積が小さすぎる!

 あと、頭にサングラス乗せてるのがちょっと可愛い。


「古き神よ、初めまして」


 ブラピに乗ったグリムが寄ってきて、ロキに挨拶。

 ちなみにだが、グリムは全裸だ。

 全裸と言っても、骨なので特に問題はないけれど。


「ほう。新しい神か。あたしらの時代にはいなかったな」


 ロキがグリムをジロジロと見ながら言った。

 なんだこいつら?

 神様ごっこしてんのか?

 おいおい、本物の半神サビナがいるのに?

 まぁいいか。


「それにしても、グリムさんがこんなに話しやすい人だと思いませんでしたよ」


 ニコニコと笑いながらリクが言った。

 ここに来るまでに、リクとディアナはグリムと言葉を交わしていた。


「出会いが悪かったのだ、ワシらは」グリムがリクの頭を撫でる。「それより貴様、上を羽織った方がいいのではないか?」


 それは俺も思ったけど、リクって男なんだよなぁ。


「ははは! リクは男だから問題ないぞ!」とディアナ。


「え? 姉ちゃん男か?」プローホルが言う。「半裸のハッスルした姉ちゃんがいると思って声かけたのにぃ!」


「おいアルト」ロキが言う。「せっかくだ、あんたがあたしの背中にオイル塗りな」


 ロキが亜空間からサンオイルを取り出す。

 原理としては『異次元ポケット』と同じだ。


「アルト、ぼくにも塗ってよ」


 ロザンナも手にサンオイルを持っていた。

 でもロザンナの水着、面積が大きいから、背中に塗れないのでは?


「ロザンナに塗るなら先にあたし」とニナ。

「は? 勇者の前も後も嫌だけど?」とロザンナ。


 この2人は相変わらずだ。


「お前ら同士で塗れよ」


 ちょっと面倒臭いのだが?

 俺が言うと、ロザンナとニナが酷く驚いたような表情を浮かべた。

 と、海の向こうから猛烈な速度で何かが迫っていた。

 その気配にみんな気付いて、海の方に視線を向ける。


 なんだ?

 何かが泳いでるのか?

 その何かは一直線にこっちに向かっていて、そしてザパーンと飛び上がり、そのまま俺の胸の上に着地。


「アルト! やっほー!」

「メービーちゃん!?」


 その何かは人魚のメービーだった。

 メービーは下半身が魚で、上半身が人間。

 髪の色は透けるような金で、瞳の色は空の色。

 やや幼さの残る顔立ちだが、結構、可愛いと思う。


 俺のこと好きって言ってくれるから、余計に可愛く思う。

 ただ、おっぱい丸出しなんだよな……。

 自認が魚の魔物だから、人間とは羞恥心が違う。

 ああ、ダメだ、メービー、おっぱいをグイグイと押し当てるんじゃない!


「何この破廉恥な魚」とロザンナ。

「刺身にしちゃう?」とニナ。


「おいおい、メービーちゃんを食べようとするな」


 俺はメービーの頭を撫でながら言った。


「コホン」ディアナがわざとらしく咳払いして言う。「アルト様とその人魚とは、どういう関係か聞いても?」


「ああ。100年ぐらい前か? メービーちゃんは迷子になってて、川を昇って湖でアタフタしてたんだ」

「そこをアルトが助けてくれて、メービーちゃんを竜宮城に連れ帰ってくれたの……って! アルト! 竜宮城が! 乙姫様が!」


 むぎゅー、とメービーが俺を強く抱き締める。

 だから押しつけるなって。


「おい落ち着け。どうした?」


 乙姫様といえば……。

 メービーを助けたお礼に、玉手箱というお土産をもらったのだけど、なぜか「困った時しか開けちゃダメ」と言われたのだ。

 まぁ普通に開けたけどな。

 煙が少し出たけど、特に意味はなかった。


 あの煙、何だったんだろうな?

 演出かな?

 とりあえず、箱には金貨とかが詰まっていた。

 なるほど、金に困ったら開けろって意味かぁ、と納得したのだった。


「パンデモニウムの連中が! 乙姫様を攫ったの! 助けてアルト!」


 うーん、思った以上に深刻じゃん!

 パンデモニウムって治安最悪なんだよな……。

 関わりたくな……いや、待てよ。


「安心しろメービーちゃん」


 俺はニヤッと笑う。

 ここには勇者、魔王代理、冒険者、入浴剤、邪神ババア、半神サビナなどなど、いい感じの戦力が揃っている。

 なんとかなるだろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ