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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
ExtraStory

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6話 ブラピの一日


 アルトが起きると同時に、ブラピも起きて背伸びをした。

 ちなみに、最近のブラピはアルトの抱き枕と化している。


「おはようブラピ、先に食堂に行ってろ」


 言って、アルトは顔を洗いに行く。

 ブラピはアルトの言葉通り、先に食堂に向かい、大人しく床に座って待った。

 そしてもう一度、ゆっくりと背伸びをして、更に大きな欠伸も。


 しばらくすると、身なりを整えたアルトがキッチンで朝食を作り始める。

 ブラピは朝のこの時間がとっても好きだった。

 特に、アルトが料理を作っている音は非常に心地よい。


 この家に来たばかりの頃は、この音を聞いているだけでレベルが上がったものだ。

 アルトはきっと料理の神様か何かなのだろう、とブラピは思った。

 ちなみに、今はもう音だけではブラピのレベルは上がらない。


 ブラピはまだ幼獣だが、すでに成獣のケルベロスよりも強くなってしまっているのだ。

 と、アルトが犬用の皿を3つ、宙に浮かせて運び、ブラピの前に置いてくれた。

 そう、アルトはちゃんと3つ用意してくれるのだ!


 なんせブラピには首が3つあるから!

 アルトは自分の料理をテーブルに置いて、食べ始める。

 それを見てブラピも食べ始める。


(美味い! 美味いぞぉぉぉ! 今日も最高の日じゃぁぁ!)

(ふふっ、左の、はしたないぞ。もっと味わって食え)

(ふん……真ん中はいつも、気取ってる……)


 声を出さなくても、3つの首は意思疎通が可能だ。

 いつもテンションが高い左の首。

 いつも気取っている真ん中の首。

 いつもテンションが低い右の首。


「ブラピはいつも美味そうに食うな」アルトがニコニコと言う。「作った俺としては嬉しい限りだ」


 ブラピは犬みたいに甘えた鳴き声を出してから、朝食を平らげる。

 朝食が終わると、アルトが片付けをした。

 その後のアルトの行動はだいたい2パターン。


 安楽椅子に座ってユラユラするか、縁側で畑を見ながらのんびりする。

 今日は縁側だった。

 ブラピも付いていく。


 アルトがガラス戸を開けて、深呼吸。

 ブラピはぴょーんと庭に飛び出す。

 そしてアルトを振り返る。


「おう、行ってこい。夕飯までには帰れよ」


 アルトが手を振ったので、ブラピは頷いてからダッシュ。

 屋敷の塀を軽く跳び越えて、村へと向かう。

 外に出ている村人が「あらブラピ」とか、「今日も子供たちと遊ぶのか?」などと声をかける。

 ブラピは全部に返事をして(もちろん「わん♪」と鳴いて)、村の入り口を目指した。


「お、ブラピ、やっと来たか!」

「おっはー!」

「おはようブラピ」


 3人の子供たちが、それぞれブラピに挨拶。

 ブラピは子供たちに頭をすり寄せて、親愛の挨拶。

 子供たちは男の子が2人に、女の子が1人。


 全員10歳前後である。

 3人がブラピの背中に乗る。

 ブラピはまだ幼獣だが、子供3人ぐらいなら余裕で乗せられる。


「よぉし! 今日は森に行くぞ!」


 リーダー格の男の子が言った。

 男の子の名前はケンチー。

 もう1人の男の子はアナト。


 女の子はエリザ。

 ブラピは子供たちを乗せたまま、森に向かって疾走する。

 かなり速度を出しているが、子供たちは落ちたりしない。


 それどころか、きゃっきゃっと楽しそうである。

 子供たちの話題が『好きな人』になった頃、ブラピは森に到着した。

 そしてそのまま森の中をずんずん進む。


「俺はさ、大人になったらリク君と結婚したい」とケンチー。

「忘れてるかもだけど、リク君って男だよ」とアナト。


「バッカ、リク君なら男でもいいだろうが!」

「……まぁ確かに、リク君ってそこらの女子より可愛いし」


「リク君はあたしと結婚するんだけどぉ?」とエリザ。


「お前はこの前まで領主様と結婚するって言ってただろうが」


「一妻多夫制って知ってる?」エリザが言う。「美人はいっぱい結婚していいんだよ?」


「なんだと!? じゃあ俺もリク君とそれから、可哀想だからニナ姉ちゃんとも結婚してやるか」


「じゃあ僕はエレノアちゃんと結婚して、領主様の息子になるよ」


「エレノアちゃんってちょっとアホっぽいけどな」ケンチーが言う。「それより肉祭りの時に正座してたお姉さんが綺麗だったと思うぞ」


 と、巨大なアナコンダが木の上から振ってきた。

 人間の子供だ! ご馳走だ! という感じで。

 手に持っていた木剣で、アナトがアナコンダの頭を叩く。

 そうすると、アナコンダの頭はペシャンコになって、あっさりと息を引き取った。


「切り分けてあげるね」


 エリザが魔力の剣を作って、ササッとアナコンダをブツ切りにする。

 そして3人の子供たちは、分けたアナコンダをそれぞれの『異次元巾着』に仕舞う。

 再びブラピに乗って、彼らは森を進む。

 特に目的があるわけじゃなくて、ただ森でブラブラして遊んでいるだけである。

 そのついでに、蛇肉をゲットした、という感じだ。



 白銀の大鷲フレスベルグは、久しぶりに人間の肉と魂が食べたいと思った。

 だから世界樹の枝から飛び立ち、もっとも美味しそうな人間を探した。

 できれば子供がいい、とフレスベルグは思った。


「純粋で強大な魔力を持った、希有な子供が最高に美味いのだ」


 と、森で素晴らしい魔力を持った子供たちを発見した。


「これは! なんて美味しそうな子供たち! ラッキーだ!」


 フレスベルグは今すぐ彼らを襲いたかったが、一度、呼吸を整えてしっかり相手を見定める。


「ふむ。ケルベロスの幼体が一緒か……。しかし、所詮は幼体。我が輩の敵ではないっ! よし、食うぞ!」


 フレスベルグは勢いよく滑空し、子供たちの1人を攫おうと足を構える。

 ちなみに、3人とも食べるつもりでいるのだが、一気には食べられないので、順番である。

 ケルベロスの右の首が、気怠そうにフレスベルグを見た。


 今頃気付いても、もう遅いっ!

 そうブレスベルグが思った瞬間、ケルベロスの右の首が【魔砲】を口から放った。

 その【魔砲】はフレスベルグの右の翼を完全に消滅させてしまう。

 フレスベルグは地面に落ちた。


「バカな……我が輩は魔物の中でも、かなり上位の存在……ケルベロス如きに……」


 なんとか顔を上げた時、子供たちがフレスベルグを囲んでいた。


「美味しそう……」


ジュルリ、と女の子が唇を舐めた。


「ま、待て……我がは……」


 言葉が終わる前に、フレスベルグの意識は消失した。



「今日ラッキーだな」ケンチーが言う。「こんな大きな鶏肉が手に入ったぞ」


「今夜は鶏祭りだね!」エリザが嬉しそうに言う。「まずは領主様に献上しようか!」


「領主様ならきっと」アナトが言う。「手料理を振る舞ってくれるよ」


 子供たちはフレスベルグを切り分けて、さっきと同様に異次元巾着に仕舞う。

 そして夕方まで森で遊んで、村へと帰った。



 夜、村では蛇肉と鶏肉の祭りが開かれていた。

 ブラピの背中にはエレノアとエリザが乗っている。


「うむ、実に美味い。さすがはアルト様とその村人たち!」


 エレノアが肉を食べながらうんうんと頷く。

 祭りは盛り上がり、みんなが歌ったり踊ったりして時間が流れる。

 そして片付けは明日やるということで、解散となった。


 アルト、エレノア、ブラピが一緒に家へと戻る。

 エレノアはブラピに乗ったまま、眠そうに船を漕いでいた。

 家に帰って、アルトがエレノアをベッドに寝かせる。


「そうだブラピ、お前、瘴気温泉って入りたいか?」とアルト。


 ブラピの3つの首はコクンと頷いた。


「よし、じゃあ近々、入浴剤のグリムを誘って温泉に行くか」


 そう言ったあと、アルトも寝る準備をしてから、エレノアと同じベッドへ。

 ブラピはエレノアがいる日はベッドでは寝ない。

 ちなみに、床にはブラピ専用の寝床が置かれていて、今日はそこで寝るのだ。


(今日も楽しかったぜ! アルト様に拾われて幸せだぞ!)

(その意見には同意だよ左の)

(ふん……こっちだって同意だよ……)


 ブラピは寝る時、3つの首のうち2つが眠り、1つが見張りとして起きている。

 だけど、アルトの家は世界でもトップクラスに安全なので、最近では3つ同時に眠ることもある。


 きっと明日もいい日になる、と思いつつ、ブラピは眠りについた。

 あと、瘴気温泉、楽しみだなぁ、と思った。

 もちろん、3つの首全員で。


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