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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
Short Story 秘密結社と邪神ババア

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4話 大人になって見たら違って見える


 エレノアは屋根の上の気配が気になって仕方ないので、寝るのを止めて窓から外に出た。

 そのまま飛行し、屋根に立った。


「遅いぞ。約束の時間はとっくに過ぎている」


 屋根の上にいた男が言った。

 黒い服を着た男で、顔も黒いマスクで半分隠している。


(わたくし何か約束してたか?)


 エレノアは一瞬、真面目に記憶を探ったが、すぐに「いや、そもそもこいつ知らないし」と気付いた。


「俺が『黒の魔道士』だ」と黒ずくめの男。


「わたくしはエレノアだ。気軽にエレノア様と呼べ」

「名前などどうでもいい。さっさと案内しろ」

「貴様、偉そうに言うな。ぶち殺すぞ?」

「あん? 俺の魔力が必要なんだろ? 敬意を払え小娘。というか、なぜ着ぐるみ姿なんだ? 気になって仕方ないのだが……」


 黒ずくめの男の言葉通り、エレノアはコウモリを模した黒っぽい着ぐるみパジャマを着ていた。


「暖かいのだ」とエレノア。

「そ、そうか……」と黒ずくめの男。


「それで貴様、わたくしの部屋の上で何をしている?」エレノアが言う。「貴様の気配が気になって眠れん。死ぬかどこかに消えろ」


 黒ずくめの男は目を丸くして、2秒ほど沈黙した。

 そして、恐る恐る言う。


「……もしかして、小娘よ……。結社の迎えではないのか?」


 その言葉に、エレノアが首を傾げる。


(ケッシャとは? わたくし、最近その言葉を聞いたような気がしないでもないが……)


 よく分からないし、まぁどうでもいいか、とエレノアは結論付けた。


「くっ! ならば死ね! 他人に知られるわけにはっ!」


 黒ずくめの男が右手に魔力を溜め、エレノアに向けて【魔力砲】を放った。

 エレノアは右手の甲で軽く【魔力砲】を払った。

 エレノアが軌道を逸らした【魔力砲】は明後日の方向に飛んで行き、街の外の平原に当たって小さな爆発が起きる。


「ば、ばかな! 俺の【魔力砲】が! くそ! これならどうだ!?」


 黒ずくめの男が巨大な炎の球を上空に創造。

 蒼炎一歩手前レベルの威力だ。


「ええっと、確かアルト様に剣しか使うなと言われていたが……」


 エレノアは武器を部屋に置いたままだった。


「とりあえず殴るか」


 エレノアはパッと距離を詰め、黒ずくめの男の腹部を軽く殴った。

 そうすると、黒ずくめの男は気絶して崩れ堕ちる。

 空の大きな【ファイアーボール】はエレノアめがけて落下を開始。

 エレノアは空を見上げ、指をパチンと弾く。

 そうすると、【ファイアーボール】は綺麗に霧散した。


「結局、こいつは何がしたかったのか」


 エレノアは屋根の上で気絶している黒ずくめの男に視線を移す。


「特に強いわけでもないのに、わたくしに襲いかかるとは実に愚か!」


 ふはははは、と高笑いするエレノア。


「確か犯罪者を引き渡すと、功績になったはずだ」


 エレノアは黒ずくめの男の足首を掴んで、宿の部屋に運んだ。


「ノア、そいつは何だ?」


 物音で起きたディアナが目を擦りながら言った。


「あー、確か黒の魔道士と名乗っていたぞ」とエレノア。


「なに!?」


 ディアナが驚いて飛び起きた。


「Sランクの犯罪者じゃないか!」ディアナが言う。「とんでもない功績だぞ!」


(この程度でSランクだと? 人間の犯罪者はレベルが低いようだな)


 まぁどうでもいいか、とエレノアは目を擦る。

 とにかくこれで、安眠できるというもの。


「そういえば領主様は?」とリク。


「夜の散歩だろう」言いながら、エレノアは自分のベッドに入る。「今日はいい夜だ」



 今日はいい日だな!

 俺はレーヴァテインを右手で握って、強くそう思った。

 さぁて、それじゃあ魔力を送ってみますか!

 ふと、八岐大蛇のことが頭を過ったけど、まさかまた武器の中に何か入ってるなんてことはあるまい。


 うん、きっと問題ないはず。

 俺はレーヴァテインに魔力を送った。

 そうすると、レーヴァテインは槍に姿を変えた。


「おお!」「素晴らしい!」「さすがは邪神様の武器!」


 レーヴァテイン愛好家たちが勢いよく席を立った。

 更に魔力を送ると、今度は杖に変形。

 やっぱカッコいいぜ!

 また魔力を送ると、レーヴァテインは剣に戻った。


「伝説の武器の変形をこの目で見られるとは!」


 プローホルが涙目で言った。

 そんなに感激したのか!

 よし、サービスだ!

 俺は更に魔力を送り、ガンガン変形させる。


「その調子で早く邪神様を復活させてくれ!」


 プローホルが言って、俺は魔力を送るのを止めた。

 ん?

 こいつらの言う邪神って、これの持ち主のことか?


「どうした!? 魔力が尽きたのか!?」とプローホル。


 いや魔力はまだあるけども!

 それよりも!


「邪神ババ……いや、邪神が中にいるのか?」


 俺はレーヴァテインを見ながら言った。


「もちろんだとも!」プローホルが言う。「邪神様を復活させることが我々の使命!」


 なんでそんな使命負ってんだよ!

 てかマジで中にいるの?

 なんで?

 邪神ババアは死んだんじゃねぇのか?

 もしかして別の邪神か?

 だとしたら、もう触らない方がいいな。


 俺の微々たる魔力で邪神が復活するとは思えねぇけど、リスクは避けた方がいい。

 長生きの秘訣だ。

 とか思考していると、レーヴァテインが俺の魔力を吸い始めた。

 やべぇ!

 そう思って俺はレーヴァテインを手放す。

 レーヴァテインは床に突き刺さり、次の瞬間には黒い魔力が溢れる。


 あああああああ!

 この魔力知ってるぞぉぉぉぉぉ!

 邪神ババアだぁあぁぁぁあ!

 俺が心の中で慌てていると、レーヴァテインの隣に美しい女性が姿を現した。

 その女性は銀髪ロングで、髪の先っぽを編み込んでいる。

 琥珀色の瞳は勝ち気で、顔立ちは美人系。


 いや、それより何より、スタイルがめちゃいいんだよ。

 ちょっと古い言い方だと、ボン、キュ、ボン。

 胸があってくびれがあって尻がでかい。

 年齢は人間だと20代後半ってとこか?

 普通に好みなんだが?


「マジかよ、あたし復活したんか?」


 女性が言った。

 その声には聞き覚えがある。

 ちなみに、女性の服装は白を基調にしたベアトップミニドレス。

 黒いレースで飾られている。

 靴は白のハイヒール。


「あと2万年はかかると思ったけど、外部から凄まじい量の魔力が供給された。マジチョベリグ」


 女性はキョロキョロと周囲を見回した。

 てゆーか、チョベリグって言葉、万年ぶりに聞いたぞ!

 死語も死語だろ!

 確か意味は超ベリーグッドの略だったっけ!?


「邪神様!」「邪神様、復活おめでとうございます!」


 レーヴァテイン愛好家たちがその場に平伏し、口々に女性の復活を祝った。

 正直に言おう、俺は子供の頃、この女性のことを邪神ババアと呼んでいた。

 けれど、自分が大人になってこの人を見ると、普通に綺麗な女性だ。

 もっと言うと好みだ。

 まぁでもこの人、性格が終わってるからなぁ。


「あんたは? どっかで見たことあるような?」


 うーん、と邪神ババアが俺を見詰める。

 1万年近く経過しているので、分からないだろうなぁ。


「久しぶりだな、邪神ババア」

「誰がババアだこのクソガキがぁぁ!」


 邪神ババアが拳を振るう。

 子供の頃は怖かったけど、今だと別にって感じだな。

 俺は右手でパシッと邪神ババアの拳を受け止める。

 邪神ババアが酷く驚いたように目を丸くした。

 いやいや、俺だって成長するからな?


「テメェ! 止めてんじゃねぇぞ! MK5だわこれ!」


 エムケーファイブって何だっけ!?

 邪神ババアが怒ってレーヴァテインを握って、そのまま俺を斬ろうと横に薙ぐ。

 俺は身体を霧にして回避。

 レーヴァテインの斬撃で建物がスパッと斬れて、切れ目から外が見えた。

 あ! 思い出したぞ!

 MK5は『マジでキレる5秒前』の意味だ!


「ヴァンパイアミストだと!?」と邪神ババア。


「ちょっと落ち着けよババア」

「テメェ! あたしをババア呼ばわりとはいい度胸じゃないか!」


 邪神ババアがレーヴァテインを握っていない方の手を天井に向け、簡単な【魔力砲】を放って天井を消滅させた。

 おぉ、月が綺麗だな。


「広いところで相手してやる。寝起きの運動にちょうどいい」


 ギラギラした目で邪神ババアが言った。

 それから空に浮こうとしたので、俺は慌てて笑顔を浮かべて言う。


「俺だよ俺! アルトだよバ……いや、ロキさん!」

「アルトだぁ!? そりゃ近所のクソガキの名前……ってお前アルトか!?」


先週は更新できなくてすみませんでした!

普通に間に合いませんでした!

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