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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
Short Story 死神の残り湯

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6話 ヤミウツのロザンナ


(アルトがぼくを抱き締めているっ!)


 ロザンナはもうニナのことなんて、どうでも良くなっていた。


(勇者じゃなくて、ぼくを選んでくれたってことだよね! 勇者よりぼくが好きってことだよね!)


 ロザンナは変なところでポジティブだった。


(つまり……総合的にぼくの勝ちってこと!)



(魔王の方を止めたってことは、アルトはあたしの味方ってことだね!)


 地面に着地し、空を見上げながらニナはそう思った。

 ニナは比較的、ポジティブな性格をしていた。


(あたしが勝ったも同然ってことね!)



 俺はまずロザンナを雑に風呂に放り込んだ。

 それから、雑にニナを広間の椅子に座らせ、短気は損気だとコンコンと説いた。

 ニナは神妙な表情でコクコクと頷いていたが、本当に理解したのだろうか?


「ふふっ、アルトに叱られるの久しぶり♪」


 なぜか嬉しそうにニコニコするニナ。

 別に叱ったわけではないのだが……。

 俺的には長生きの秘訣を1つ教えた、って認識だったのだけど。

 まぁいいか。


「よし、夕飯、食って帰るだろ?」

「もちろん」


 よく分からないけど、ニナの機嫌はいいようだ。


「何が食べたい?」

「ドラ肉以外かな。食べ過ぎて飽きちゃった」

「分かった。確か前に捕まえたクラーケンが少し残ってたから……」


 俺は頭の中で、いくつかのタコ……いや、クラーケン料理を思い浮かべた。


「料理もいいけどさ」ニナが微笑みを浮かべたまま俺を見る。「久しぶりに吸う?」


 ニナが首を右に傾げ、右手で首をトントンと叩いた。


「お? そうだな。じゃあ、ありがた……」

「ちょぉぉぉぉっと待ったぁぁぁ!」


 風呂から上がったロザンナが広間に入ってきた。

 ロザンナはパジャマ姿だった。

 黒いロングのワンピースで、いくつかの黒いリボンで装飾されている。

 ちなみにうちの衣装室にあったパジャマだ。


「吸うなら! ぼくのを! お風呂でサッパリした綺麗なぼくを噛んで!」

「意外と出るの早かったな」


 あんなにお風呂お風呂って喚いていたのに。


「早くないよ!?」


 ロザンナが驚いて言った。

 あれ?

 そんなに時間経ったっけ?

 壁掛け時計を確認すると、30分ほど経過していた。

 なんてこった!

 体感では10分しか経ってねぇよ!

 短気は損気の話、そんなに長くしてたのか……。


「てか、今あたしの血を吸う話してんの。あんたはまた今度」


 ニナがふんっ、とそっぽを向きつつ言った。


「だぁかぁらぁ、それが気に入らないってぼくは言ってんの」


 ロザンナが言うと、ニナが溜息を吐いた。

 これはまずい。

 2回戦が始まりそうだ。


「2人とも吸うってことで、どうかな?」


 俺が間を取り持つ。


「勇者の後も前も嫌だよアルト」

「あたしだって嫌だし」


 相容れない!

 この2人は相容れないっ!


「じゃあ、トランプで勝った方の血を吸うってことで」


 俺はその場で、異次元ポケットからトランプを出した。

 平和的に勝負させようと思ったのだ。


「いいよ。ぼくはかつてババ抜きの女王と呼ばれたことがあるんだよ?」

「あたしだって、ババ引きの天才って呼ばれたことあるし」


 いや、ニナ、それはダメなんじゃ?

 あと、ゲームはババ抜きなんだ?

 とりあえず、俺はトランプをシャッフルして配る。


 見ているだけというのもアレなので、俺も交じる。

 そしてしばらくババ抜きが進み、俺が最初に上がった。

 ニナとロザンナは真剣にババ抜きを続けている。

 すげぇな、俺、こんな真剣なババ抜き見たの初めてかも。


「ここで……決めるっ」


 ニナはすでに手持ち1枚で、ロザンナが2枚。

 つまりロザンナがババを持っているということ。

 ニナが小さく深呼吸し、カードを選ぶ。

 俺までドキドキしてきたぜ。


「あああああああ! ババァァァアァアアアアアア!!」


 ニナが天を仰ぎ、吠えた。

 ロザンナはニヤリと笑う。


「大丈夫、またババを引かせればいいっ」

「ふん。これで終わりだよ、勇者。ぼくに歯向かったことを後悔しろ!」


 ロザンナがカードを引いて、そして持っていたカードと一緒に場に捨てた。

 そう、つまり、上がったのだ。


「負けたぁぁぁぁぁぁ!!」


 ニナが床をガンガン叩く。

 俺たちは床でババ抜きしてたんだよな。


「それじゃあアルト、吸って」


 ロザンナが身を寄せてきたので、俺はグッと抱き寄せてロザンナの首筋に噛み付いた。


「ぐやじぃぃぃぃいい!」


 ニナがギリギリと歯噛みしながら見ているので、ちょっと吸い難いな。

 とか思ってたのだけど、ロザンナの血、めっちゃ美味いぞ!

 割と夢中で吸ってしまったので、危うく眷属にするところだった。

 危ない危ない。

 いやぁ、俺も純粋なヴァンパイアだから、美味い血を吸うと幸せな気持ちになる。


「き……気持ち良かった……」


 ロザンナがトロンとした表情で言った。


「そりゃ良かった。ロザンナの血、すげぇ美味かったんだけど、ロザンナって種族なんだ?」


 そういえば、俺はロザンナの種族を知らない。

 魔族ってことしか分からない。


「えっと……ぼくはぁ……」ロザンナは余韻に浸っているのか、甘ったるい声で言う。「世界にぼくしかいない……」


 マジか!

 ロザンナも絶滅危惧種だったのか!


「魔力だまりが……知的生命体の負の感情を集めて……そこから誕生した憂鬱と病みの化身、それがぼくだよ……」


 なるほど。

 なかなか魅力的な存在だな。


「あー、ぽいぽい」


 ニナが納得顔で何度か頷いた。


「じゃあ種族名とかは、ないんだな……」

「うん……。良かったら、アルトが決めて……」


 責任重大!

 今後、第二、第三のロザンナが誕生するかもしれねぇし、変な名前は付けられない。

 まぁでも、俺は名付けには割と定評があるんだ。

 村で生まれたの子供の名前とか、俺に決めてくれって言ってくる村人いるし。


「よし、『ヤミウツ』にしよう」

「直球だぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺が種族名を提案すると、ニナが驚いた風に叫んだ。

 種族名とかはあまり凝らずに、シンプルでストレートな方がいいと思うのだが。

 人魚とか人狼とかまんまだろ?

 ロザンナを見ると、ニコッと笑った。


「ヤミウツ、ぼくは今日から、世界に1人だけのヤミウツのロザンナ……」

「気に入ったか?」

「うん! とっても! ありがとうアルト!」


 ロザンナは俺に抱き付いて、それから俺の頬にキスをした。

 おっと、可愛いことするじゃねぇか。


「んぎぃぃいいいいいい!!」


 ニナがなぜか自分の服を噛んで引っ張っていた。

 どうしたんだ!?

 と、エレノアとカリーナがゲートアウトしてきた。


「アルト様!? なぜロザンナと抱き合っているのですか!?」


 エレノアが酷く驚いた様子で言った。


「まぁ色々あったんだよ」


 俺はロザンナを離して立ち上がる。

 説明するの、面倒臭い。


「え? 普通にぼくを呼び捨てにした?」


 ロザンナは驚愕の表情でエレノアを見た。

 エレノアはハッとした表情で固まる。


「ききき、気のせいですよロザンナ様。わたくしはあなた様の忠実な下僕! 呼び捨てなどと、そのようなこと、絶対に絶対にありませんとも!」


 エレノアは膝がガクガクと震えていた。


「大浴場を勝手に開放した件もあるし、お仕置きした方がいいよね?」


 ロザンナが笑顔で言った。


「あ! わたくし最前線に行く用事がありましたぁぁ! 待ってろよドラゴンどもぉぉ!」


 エレノアが【ゲート】でいなくなった。


「あ、えっと、アルトさん……あたくしはその……」


 カリーナが照れた風に俺を見た。


「とりあえず夕飯食って、なんなら泊まっていけよ。聖女たちが集まるまで」


 送り迎えするの面倒だし。


「は、はい! ありがとうございます!」


 カリーナが勢いよくお辞儀した。


「あたしも! あたしも泊まる!」

「じゃあぼくも! ぼくも泊まる!」

「ああ、泊まっていけ。でも喧嘩したら追い出すからな?」


 俺はかなりいい気分だったので、快くみんなを泊めることにした。

 その後は特に何もなく、平和に時間が過ぎ去った。

 俺は夜中にコッソリと魔王城へと移動し、瘴気風呂に入った。


「おや、アルト様、奇遇ですね!」

「エレノア、お前、また入ってんのか」

「ええ! だってアルト様、このお風呂本当に気持ちいいですし、それに魔力が増えるんですよ!」


 確かにかなり気持ちいい。

 ただ、魔力が増えたような感じはしねぇな。

 と、他のアンデッドたちもゾロゾロと入って来た。

 夜中でも盛況なだおい。


「はぁ~」エレノアが長い息を吐く。「ロザンナはこの素晴らしい風呂を【浄化】するとか、正気とは思えませんね」


「確かにもったいないな」


 俺はふと思った。

 この風呂を作ったのがグリムなら、あいつをどっかの秘湯に入れちまえば、そこが瘴気温泉になるのでは?

 幸いなことに、俺はいくつかの秘湯を知ってるしな。


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