表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/105

4話 魔王城の俺の部屋。俺の部屋?

10話まで毎日更新します!

投稿時間は18時です。


「いい、天気だな……」


 言ったあと、曇っていることに気付いた俺である。


「はっ! まるで我々の心を映すかのような、素晴らしい曇天でありますな!」


 お前の心は曇ってんのかよエレノア!

 ついでに眼も曇ってんぞ!

 そして、周囲の連中は俺がまだ何か言うだろうと待っている。

 どうしよっかな。

 昔読んだ小説の、お気に入りの台詞でも言ってみようかな?


「死ぬには良い日だな」

「よぉし! 貴様ら自殺し……」


 ゴツン、と俺はエレノアに拳骨を入れた。

 何を言おうとしてんだお前はっ!

 エレノアが地面にぶっ倒れる。

 いや、ちょっと格好つけた俺も俺だけど!


「あのエレノア様が……一撃で……」

「お、恐ろしいお方だ……」

「同族にも……まったく容赦がない……」

「幼い同種にあの攻撃……我々が逆らったらきっと殺される……」


 周囲の連中が怯え始めた。

 やべぇ、俺は子供でも平気でぶん殴る男認定されちまった。


「も、申し訳ありませんアルト様」エレノアが半泣きで言う。「うぅ、お言葉の途中で口を挟んでしまい……」


 エレノアは立てないようだったので、俺はスッとエレノアを抱き上げた。

 お姫様抱っこである。

 ふふ、これで俺は優しい男だと伝わっただろうか?


「謝罪しているエレノア様に……トドメを刺す気なのか……」

「なんて恐ろしい……顔の通りだ……」


 なんでそうなるんだよっ!

 抱き上げてるじゃん!?

 どう見ても優しく抱き上げてるじゃん!?


「うぅ、わたくしはこの後、地面に叩きつけられるのですか? うぅ、しかしわたくしは、アルト様の言葉を遮ってしまった……覚悟はできています」


 そんな覚悟すんなよぉぉぉ!

 てゆーかお前、そんな極悪非道な男と結婚する気でいるのか!?

 俺はゆっくりとエレノアを地面に立たせた。

 まだ魔王城に入ってすらいないのに、どっと疲れた。

 四天王の肩書きが重すぎる。


「もういいから、早く行こうぜ……」


 俺は溜息混じりに言った。

 あれだな、なるべく他人と関わらないようにしよう。

 そしてエレノアの案内で、俺は魔王城の俺の部屋へと辿り着いた。

 なんで魔王城に俺の部屋があるんだろうね?

 初めて来たんだけどなぁ、魔王城。

 俺の部屋は広く、高価な品で溢れていた。

 メイドが5人ほど室内を掃除していて、俺を見てその場に土下座した。


「ら、楽にしてくれ……」


 俺が言うと、メイドたちは少し怯えた様子で掃除を続けた。


「まったく、アルト様をお連れすると言っておいただろう」エレノアが怒った風に言う。「未だに掃除が終わっていないとは。万死に値するぞ!」


「いや値しねぇよ!? 俺は気にしてないからな!」


 エレノアとは会って間もないが、なんとなく性格が分かってきた。

 俺が気にしていないと伝えなければ、エレノアはメイドたちに罰を与える可能性がある。

 エレノアは心が狭いというか、あまり余裕がないように感じる。


「アルト様が優しくて良かったな貴様ら! 今日はアルト様の優しさに感謝して過ごすのだ!」


「「はい! もちろんでございます!」」


 メイドたちが深々と頭を下げつつ、声を揃えて言った。


「うん。もういいから早く掃除してくれ……」

「よし貴様ら……もぐぅお?」


 俺はエレノアの口を背後から塞いだ。

 話がややこしくなるから、少し黙っていようね?

 それから五分程度で、掃除が終わる。

 どうやら、もうほとんど終わっていたらしい。

 メイドたちが俺に挨拶して、部屋を出た。


 何かあったらサイドテーブルのベルを鳴らして欲しいと言い残して。

 本当に疲れたなぁ。

 俺はベッドにゴロンと転がった。

 大きなベッドで、非常に柔らかい。

 俺が普段使ってるベッドも、悪い品じゃないけど、これはその倍は心地よい。

 よく眠れそうだ。


「ああそうだエレノア」

「はい。何でしょう?」


 エレノアはソファに腰を下ろそうとしていたが、俺に呼ばれたので思い留まった。


「お前、太陽は克服してるよな?」


 真っ昼間に俺の家に来たので、まぁ間違いなく克服していると思うけれど。

 フードとローブで身体を隠してはいたけど、克服していなければ夜に動くものだ。


「ええ。最近やっと克服できました。それが何か?」

「会議が終わったらピクニックにでも行こうぜ。太陽の下、泉とかで泳ぐのもありだな」


 エレノアにもっとこう、楽しいことを覚えて欲しい。

 性格の矯正ってほどではないが、せめて心に余裕を持って欲しい。


「え? そ、そんな恐ろしい修行を……?」エレノアが怯えた様子で言う。「ま、まだわたくしには早いかと……さすがに長時間、太陽の下ですと……灰になってしまいます……」


 克服できてねぇじゃぁぁん!

 俺なんか全裸で日光浴しても平気だぞ!


「も、もっと基礎的な戦闘技術から、その、指導して頂ければと……」


 あ、そういや、戦闘指導するとかテキトーなこと言ったんだったな。

 普通に忘れていた。

 まぁ、ピクニックは却下である。

 最後の女性ヴァンパイアが灰になったら、真剣にヴァンパイアが絶滅する。


「そういや会議っていつからだ?」


 俺は話題を変えることにした。


「はっ、あと3時間ほどでしょう。その間、城でも案内しますか?」

「いや、ゴロゴロする。エレノアも来いよ」

「ま、まだわたくしには、早いかと……」


 エレノアが顔を真っ赤にして言った。

 そういう意味じゃ、ねーよ。

 マジでゴロゴロしようって言ってんだよぉぉ!



 会議室に入室すると、俺が最後だったらしい。

 5席ある円卓の、1席だけが空いているから。

 ちなみに、座っているのは四天王と参謀だ。

 今回の会議を招集したのが参謀だと、手紙に書いていた。

 円卓に座っている4人の背後に、それぞれの副官が立っている。

 よって、この会議室には俺とエレノアを含めて10人が集まっている。

 みんなの視線が俺に集中した。

 こ、こえぇぇぇ。

 だが弱いとバレたら困るので、俺は表情を動かさないよう努めた。


「ささっ、アルト様、こちらの席にどうぞ」


 エレノアが空席に俺を案内する。

 俺はゴクリと唾を飲んでから、席まで歩く。

 一歩が重い。

 いや、なんか処刑台に向かってる気分だな。

 処刑台に向かったことないけど。


「きゃるるん♪ なんて極悪な顔付きなのぉ!」


 円卓に座っている1人が言った。

 人間の女性に見えるが、背中に妖精の羽が生えている。

 むしろ、妖精をそのまま人間サイズにした容姿だ。

 ってことはティターニアだな。

 妖精たちの女王で、人間サイズなのだ

 海のように深い青色の髪が綺麗だ。

 髪はたぶん腰ぐらいまで伸びているのかな?

 顔立ちは美人系で、見た目の年齢は人間の18歳ぐらいか。

 俺はヴァンパイアより人間と過ごした期間が長いので、年齢の例とか人間を使うんだよなぁ。

 まぁどうでもいいけど、どうせ自分用だしな。


「えぇぇ? 妾が褒めたのにぃ! 無視する方向なのぉぉ?」


 ティターニアが驚いた風に言った。

 無視はまずいな。

 こいつらと揉めたら俺、死ねる。

 よし、ゴマをすろう。

 全力で!


「いや、君のあまりの美しさに見とれていたんだ」


「あっらー!」ティターニアが頬を染める。「良い奴じゃない! 一度も会議に出ないサボり魔だけど、いい奴じゃないのぉ!」


「最古のヴァンパイアがいい奴のはずが、あるまいよ」


 別の奴が言った。

 うん、人狼だな。

 見たまんま、人狼だ。

 二足歩行の狼人間。

 毛の色は濃いグレイで、瞳の色が暗い赤。

 身体が大きく、毛で覆われているけどマッチョなんだろうなぁ、って体型。


「そうよねぇ、200年前の戦争で、最後まで魔王様と一緒に戦って」ティターニアが弾んだ声で言う。「人類に、勇者たちに、激烈なダメージを与えたんだもんねぇ♪」


 んんんんっ!?

 俺の知らない武勇伝が語られてるぅぅ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ