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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
1章

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30話 断れないことだってあるさ


「なんということだ……」


 ニナと戦っていた騎士団長が動きを止め、空を仰いだ。

 他の騎士たちも、同じように空を見ている。

 数名が武器を取り落とした。


「アルト……ただの合図に……やりすぎ……」


 脳天気なニナですら、頬をヒクヒクさせている。

 なんなら、ケイオスよりアルトの方が強いんじゃないの? とニナは思った。

 白い炎の存在を、ニナは知らない。

 だけれど、目の前で空を焼いているそれが、魔法の極致であることは理解できる。

 もし地上でアレを使っていたら、この王都ぐらいなら余裕で消し飛ぶ。


「まぁ、アルトがそんなことするわけ、ないけどさ」


 ニナにはアルトが白炎を完璧にコントロールしているように見えた。


「って、合図だから逃げなきゃ」


 ニナはフッと我に返り、猛烈なダッシュで騎士たちの間を抜ける。

 騎士たちの多くはまだ空を見ていた。


「賊が逃げたぞ!」と誰かが叫んだ。


 でも、ほとんどの騎士がその声に反応できなかった。

 そう、だって、ニナより遙かに恐ろしい何かが空で燃えているのだから。


「あ、そっか。あたしが簡単に逃げられるように配慮してくれたのねっ! さすがあたしの未来の旦那!」


 ニナは嬉しい気持ちで、王城を出てポンティたちと待ち合わせている山へと向かう。

 山は少し遠いが、ニナが全力で走ればそれほど時間はかからない。

 王都は城塞都市になっているので、高い壁に囲われている。

 しかしニナは壁を何度か蹴って、アッサリと壁の上へと移動。

 そこから外へとジャンプして、お腹がヒュンとなりつつ、地面に着地。

 そして再び走り出す。


◇


「アルト……これほどの力を持っていたの?」


 魔王城の上空で、ロザンナが呟いた。

 ロザンナは凄まじい魔力の炸裂を感じ、急いで外に出たのだ。

 そして、すぐにこの魔力がアルトのものであると理解。


「てゆーか、何してるのかな?」


 普通に生きていたら、こんな大魔力の魔法を使うことはない。

 であるなら、戦闘だろうか?

 相手は誰?


「まさかケイオスと戦ってる……?」

「それはないでしょう」


 いつの間にかロザンナの隣に浮いていたアスタロトが言った。


「言い切れる?」

「はい魔王様。ケイオスは現在、あっちで国を滅ぼし……」


 アスタロトが指を指した方向で、激しい魔力の炸裂があった。


「「!?」」


 ロザンナとアスタロトがビクッと身を竦めた。


「アルトの使った魔法と似たような系統だけど……これはドラゴンブレス?」

「そうですね……。ケイオスでしょう……」


 沈黙。

 アルトの放った魔法は強力で、凄まじい魔力が込められていたが、ケイオスのブレスはそれ以上だった。


「こんなのと……戦わなきゃ……いけないの?」


 ロザンナの声が震えた。

 少なくとも、ロザンナは一対一でケイオスと戦って勝てる気はしない。


「これほどとは……」アスタロトが苦笑い。「アルト殿の実力も大概、規格外ですが……ケイオスは更に……」


「絶望的な戦いになりそうだけど、それでも、アルトの今の実力が知れて良かった」

「はい。アルト殿がいれば、なんとか戦えそうです」

「逆にアルトがいなければ、ぼくたちは無残に殺されていたね」


 アルトにはケイオスと戦う気がサラサラないのだが、ロザンナもアスタロトもそれを知らない。


◇


 俺は塔を降りて外に出て、空を見上げた。

 うん、白炎消えてねぇぇぇぇ!!

 俺は小さく首を振った。

 やっちまったなぁ。

 俺に付いて来ていたポンティ、騎士、武闘家も空を見上げた。


「さすが大聖者様!」突然ポンティが言った。「ずっと空を燃やしていれば、誰もがそっちに注目する!」


「なるほど!」騎士がポンと手を打つ。「我々が安全に逃げるための布石でもあったのですね!」


「ああ。そういうことだ」


 俺は話に乗っかった。

 今のところ、被害はなさそうだし。


「おい、さっさと逃げようぜ」


 武闘家が言って、俺たちは色々な魔法を駆使してコッソリと城を出た。

 その後、ニナと待ち合わせている山へと向かう。

 なんでニナと待ち合わせているかと言うと、単純にニナが【ゲート】を使えないので、俺かポンティが連れて帰ってあげる必要があるから。

 まぁ、家も近所だし俺が連れて帰るのがいいだろう。


 特に問題もなく待ち合わせの山に到着し、ニナと合流。

 山の中腹の泉の前だ。

 ニナは暇だったのか、泉でバシャバシャして遊んでいた。

 全裸で。

 実にマイペースな奴だな、と俺は思った。

 いや、知ってたけどさ。


「あ」と俺たちを確認したニナが固まった。


 騎士と武闘家が頬を染めてニナをガン見。

 ポンティが2人をぶん殴って、それで2人は正気に戻って後ろを向いた。


「アルト、乾かして!」


 ニナが泉から上がって両手を広げた。


「やれやれ。お前、いつまでガキのつもりなんだよ」


 俺は風の魔法と炎の魔法を混ぜた【温風】を使用。

 一瞬でニナの身体に付いていた水滴が消える。

 俺の村の近くに川があって、そこで遊ぶ子供たちの身体をこの【温風】でよく乾かしてやった。

 もちろんニナや弟のリクも。


「でも身体は成長したと思わない!?」


 ニナが自分の胸を揉みながら言った。

 ふむ。

 俺的にはまだまだ若いように見えるが、そもそも俺からしたら自分以外の全ての生命体が若い。

 では女性として魅力的な肉体であるか、という観点でニナの身体を見てみよう。

 ふむ。


「微妙だな」

「がーん!!」


 ニナがショックを受けたようにフラッとした。

 俺はもっとこう、大人というか、やや豊満な女性が好みなんだよ。

 デブという意味ではなく、出るところが出ているというか。


「コホン」ポンティがわざとらしい咳払いをして言う。「勇者、とにかく服を着なさい」


「はぁい」


 ニナは脱ぎ散らかしていた服を集めて、ゆっくりと着た。

 まぁ服と言ってもパジャマだが。

 ニナが服を着たところで、騎士と武闘家が寄ってくる。


「ありがとう勇者、助けに来てくれて」と騎士。


「ああ、マジで助かったぜ。オレは処刑されるところだったからな」


 武闘家がカラカラと笑った。

 それ、笑い事じゃなくね?

 そう思ったけれど、俺は何も言わない。


「2人が無事で良かった」ニナが笑顔を浮かべる。「次は聖女を助けなきゃね!」


 そうだった!

 聖女の存在を忘れていた!

 俺はもう家に帰る気満々だった。

 てゆーか、勇者パーティほぼ揃ってるわけだし、俺はもういらないよな?


「よし、じゃあ……」


「大聖者様! またお力を貸してくれるのですね!」とポンティ。

「大聖者様がいれば、聖女を救うのも容易いでしょう」と騎士。

「アルトはあたしの仲間を見捨てたりしないもんね?」とニナ。

「さすが大聖者様! その役職に偽りなしだぜ!」と武闘家。


 偽りしかねぇよバカ野郎。

 俺はヴァンパイアだぞ?

 あとお前ら、俺が魔王軍四天王だって忘れてないか?

 しかしみんなの瞳がキラキラと輝きを放って俺を見ている。

 断りにくい。

 むしろ断れない。

 これを断れる奴は魔王ぐらいのものだ。

 いや、魔王ですらそんな精神力は持っていないかも。

 ケイオスなら可能だろうか?

 っと、くだらないことを考えてしまった。


「……聖女は神殿だっけか?」


「はい大聖者様!」ポンティが両手を胸の前で組んで言う。「この国の主神殿に囚われているかと!」


「……そっか、じゃあ行くか」


 こうなったら、さっさと救出して早く家に帰ることを目標にしよう。

 作業着もそろそろ着替えたい。

 俺は溜息を吐いてから、天を仰ぐ。

 あ、白炎がほとんど消えてる。

 スッカリ忘れていたけど、消えて良かった。


「あの白い炎、すごかったね!」


 俺に釣られて空を見たニナが笑顔で言った。


「ああ。古代魔法ってやつさ」俺は少し自慢気に言った。「ロマンの塊みたいな魔法だ」


 ふふっ、白炎を自慢できたのは素直に嬉しい。


「絶対に弟子にして貰うわ……」


 ポンティが小さい声で言った。

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