葵の家
スラオシャは葵と共に葵の家に行った。
葵の家は古風な木造建築で、今は使われていないが道場が併設されていた。
「へー! 昔ながらの家って感じだな」
スラオシャは家の瓦に注目した。
「私の家は古くから続く武家の家なんです。さあ、どうぞ入ってください」
葵がスラオシャを促した。
「お邪魔します」
葵が玄関のドアを開けた。
「今は父と母はいません。単身赴任で月都まで行っています」
「じゃあ、俺と葵の二人きりというわけだ」
スラオシャが口元を緩めた。
葵はほおを赤らめた。
葵は靴を脱いで家の中に入った。
スラオシャもそれに倣って、靴を脱いで家にあがる。
「今、着替えてくるので、少し居間でお待ちください」
「わかった」
葵は自分の部屋に行ったようだった。
葵は一体どんな服で現れるだろうか?
スラオシャはそれが楽しみだった。
スラオシャはテーブルの前であぐらをかいて座った。
しばらくすると、葵が戻ってきた。
「お待たせしました」
スラオシャは息をのんだ。
葵は藍色の着物に着替えていた。
スラオシャは葵の着物姿に魅了された。
「あの、どこか変ですか?」
葵が照れながら尋ねてくる。
「いや、そんなことない。すごく似合っているよ。すごくきれいだ……」
スラオシャは見とれた。
「あの、あまり見られるとはずかしいのですが……」
「ああ、すまない……」
「私はお茶をご用意しますね」
葵は台所に入っていった。
スラオシャは葵が入っていった方を見つめる。
しばらくすると、葵が湯飲みを持って出てきた。
「お待たせしました」
葵はお茶をテーブルに置いた。
「確か、お茶は一分待たせるんだったか?」
「よくご存じですね」
「じゃあ、いただくよ」
「はい、どうぞ」
葵は笑顔になった。
スラオシャはお茶に口をつける。
緑茶の成分がスラオシャの舌に広がる。
「うん、うまいな!」
「ありがとうございます」
「今晩のお食事はどうなさいますか?」
「食事? 作ってくれるのかい?」
「私は料理の腕には自信があるんです。よかったら食べていきませんか?」
「いいのかい?」
「はい」
葵は座布団の上に服を正して、座った。
それを見てスラオシャは平安な気分になった。
その夜、スラオシャは葵の料理をおいしく頂いた。
夕食が済むと葵は台所で洗い物をしていた。
その時スラオシャは鐘のような音を聞いた。
これは天使同士のテレパシーで、呼び出すときに使われるのだ。
スラオシャは庭に出た。
そこにはレミエルが立っていた。
「レミエル……どうかしたのか?」
「スラオシャ、あの娘は狙われています」
「誰から狙われているかわかるか?」
冷たい空気が肌に伝わった。
「大悪魔アエーシュマ(Aeeschma)があの娘を狙っているようです。どうか気をつけてください」
「アエーシュマ、か……俺とは因縁深い相手だな」
「どうか用心してくださいね」
「ああ、わかっている。今夜はここに泊まることになった。いっしょにいるほうが彼女も安心できるだろう。ありがとう、レミエル」
「スラオシャさーん? どこですかー?」
葵がスラオシャのことに気づいた。
「それじゃあ、俺は戻るよ」