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鏡 Der Spiegel  作者: Siberius
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エンディング

アエーシュマが倒されて、スラオシャと葵の日常が戻ってきた。

二人は愛し合い、至福の日々が続くかと思われた。

そんな時、葵が倒れた。

葵の病名は不明だった。

医者が来たがさっぱり、原因がわからなかった。

スラオシャは葵をベッドまで運んだ。

ひそかにレミエルが現れて、スラオシャに告げた。

「あの娘は、葵さんは招かれています。天国への旅に」

「……」

「スラオシャ、これは神が望んだことです。我々には変えられません。彼女は神から特別に愛された。ゆえにこの世に別れを告げねばなりません」

「ああ、わかっている」

スラオシャは葵のもとを訪れた。

気息きそくが流出している……)

「スラオシャさん、私はいったいどうなるんですか?」

葵がスラオシャに尋ねた。

「君はこの世と別れなければならない」

「この世と別れる?」

葵が力なくつぶやいた。

葵の目は辛そうだった。

「つまり、君は死ぬ。君の気息が肉体の外に出ようとしているんだ」

「気息?」

「気息とは精神の上位領域であり、自発的活動の源、そして人間の中の不死なる部分だ。神は人間を創造した際、息を吹き込んだ。そうして、人間は動くようになったという」

「私は死ぬんですか? いやです。せっかくスラオシャさんと結ばれたのに……死にたくないです……怖い……」

「いいかい、葵。人は死すべきものであり、いずれ誰もが死を迎える。シベリウスの教えでは神から特別に愛された人は若くして神のもとに行く。魂は肉体から分離して、善き人は天国に行く……」

葵は泣き出してしまった。

自分が死ぬという事実を受け止められないのだ。

「死んだら、それで終わり、ではない。ほかならぬ俺がそうなんだ」

「? スラオシャさんが?」

「俺はかつて人間だった。死後に気息の肉体を与えられ、大天使の一人となった。君にも死後の生がある」

「スラオシャさん、約束してくれますか?」

「ああ」

「私が死んでも、死んだ後も、ずっといっしょにいてくれますか?」

「もちろん。俺は葵を愛しているからな」

スラオシャは葵の手を取り、握りしめた。

「なんだか、ふしぎですね。私は死ぬのに、なぜか眠いんです」

「安心しろ。俺がいっしょにいる」

「はい……」

その日の夜、鏡 葵は眠りについた。

18歳であった。


葵の死後、友人や家族が集まって葬儀が営まれた。

列席者は、葵のあまりの早すぎる死に涙を流した。

葵の肉体は火葬されて、シベリウス教の墓地に埋葬された。

それを気息体となった葵は見ていた。

彼女は着物を見ていた。

「ふしぎですね。自分で自分の葬儀を見るというのは」

気息は目に見えない。

それゆえ、気息体となった葵の姿もほかの人たちからは見えなかった。

「葵、そろそろ行こうか」

葵の隣にはスラオシャがいた。

彼は白い衣を着ていた。

「スラオシャさん、私を連れて行ってください」

「ああ。君と俺はずっといっしょだ。さあ、行こう、天へ」

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