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鏡 Der Spiegel  作者: Siberius
13/15

アエーシュマ

次の日、葵は風邪を引いた。

「熱は38℃か……安静にしていないといけないな」

葵はベッドの中で寝ていた。

スラオシャが体温計で葵の熱を測った。

「やれやれ……俺がおかゆを作ってくる。葵はそれまで寝ていろ。わかったな?」

「はい……」

スラオシャは台所でおかゆを作った。

容器に入れて葵の部屋に持っていく。

スラオシャは初めて葵の部屋に入った。

床はタタミで、大きな勉強机があった。

シングルのベッドがあり、部屋を大きく占領していた。

スラオシャは葵のもとに行き、おかゆをスプーンで食べさせた。

「どうだ?」

「はい、柔らかくていい感じです」

「まあ、おかゆだからな。それとここに水を置いておく。水分を取りたくなったら飲むといい」

「何から何まですいません」

「気にするな。俺が好きでやっていることだ」

「うふふ……」

「何だ?」

「いえ、こういうのも悪くないなって」

「いつもは俺が料理を作ってもらっているからな。非常時はこういうことくらいするさ。俺は買い物に行ってくる。一人で休んでいろ」

「一人で、ですか……?」

「どうした?」

「その、眠るまで、手をつないでいてほしいのですが……」

葵は顔を赤くした。

「フフッ、いいぞ。そのくらいならな」

スラオシャは葵の手をつかんだ。

外では雨が降っていた。


その後葵の熱は下がり、葵は聖智校に通うことができた。

クラスメイトたちと楽しくおしゃべりしたり、授業を受けたりして忙しく過ごした。

哲学の授業が聖智校にはある。

葵は哲学が苦手だった。

ほかの生徒も、哲学は苦手という人も多い。

哲学の教師は内宮 哲夫先生である。

葵は哲学の授業についてスラオシャに相談したことがある。

スラオシャは宗教書か哲学書を読んでいたこともある。

スラオシャは難解な哲学思想をすらすらと披露してみせた。

スラオシャは言った。

哲学の本質は「疑うこと」だと。

一方、宗教の本質は「信じること」である。

授業が終わった後、葵は内宮先生から呼び止められた。

「鏡さん、ちょっといいかな?」

「はい、何でしょうか?」

内宮のメガネが妖しく光った。

「あ……」

葵は意識を失った。

葵は倒れた。

「クックック、これでいい」

「あなたが悪魔でしたか、内宮 哲夫?」

「フェヴローニヤ・ガヴリーロヴナ……」

内宮はフェヴローニヤを凝視した。

「教師の誰かが悪魔ということはわかっていました。それが誰かまでは突き止められませんでしたが。あなただったのですね? 内宮先生?」

フェヴローニヤが毅然と言い放った。

「それはご名答。この私の正体も悪魔だ。しかし、あなたの正体も私は知っている。そうだろう、天使よ? いや、正確には大天使レミエル?」

「!? 私も気づかれているとは思いませんでしたよ、大悪魔アエーシュマ?」

「クックック」

内宮が、いや、アエーシュマが目を光らせる。

「葵さんをどうするつもりですか?」

「この娘はスラオシャが来るまで預かっておく。心配するな。スラオシャとの決着を私はつけたいだけだ。大天使スラオシャを連れてこい。そうすればこの娘を返してやるぞ?」

「私が何もしないと思いますか?」

「お互い、この人の姿では真の実力を出せない……そうだろう?」

「…………」

フェヴローニヤは押し黙った。

その表情が苦渋くじゅうを表していた。

「今のおまえにできることはスラオシャを連れてくることだ。それに戦いはおまえの本文ではあるまい?」

アエーシュマは自信たっぷりに告げた。

その口が嘲弄ちょうろうしている。

「確かにそうでしょう。しかし、あなたは重大な過失を犯していますよ、アエーシュマ?」

「ほう、それはなにかな?」

「私はたった一人でアッシリア軍を退けたこともあるのですよ。私は幻視の天使ですが、もう一つ名があります。それは雷光の天使レミエルと」

フェヴローニヤの言葉を受けてアエーシュマのメガネが妖しく光った。

「私を恫喝どうかつしても無駄だ。私は学校の地下に作った亜空間『魔洞まどう』でスラオシャを待っているぞ。それではレミエル、さらばだ」

そう言うとアエーシュマは葵と共に姿を消した。

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