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鏡 Der Spiegel  作者: Siberius
12/15

死とは

スラオシャは葵についていってある場所を訪れた。

葵は思いつめた表情をして、淡々としていた。

今は天気が悪くなった。

雨が少し降ってきた。

「私はどうしてもここに来たかったんです」

そこは墓地だった。

その墓地は仏教式だった。

「…………」

スラオシャはただ葵の後をついて行く。

「ここです」

葵は一つの墓の前で止まった。

「ここは?」

「ここはほのかちゃんのお墓です」

「ほのか?」

「はい。前にほのかちゃんは私の親友だったと言いましたよね? そのほのかちゃんです。彼女は突然、自殺しました」

「自殺……?」

しばらく言葉が途切れる。

しばし沈黙が訪れる。

葵は重い口を開いた。

「それがなぜかはわかりません。私も電話で知らされた時には絶句しました。私は何もわからなかったんです。ずっといっしょにいたのに、彼女の苦しみに気づいてあげられなかった……一言も苦しいっていう相談がなかったんです……」

葵の口調は自分を責めているようにスラオシャは感じた。

葵は震えていた。

「葵、あまり自分を責めないほうがいい。ほのかはきっと親友だったからこそ、君には相談できなかったんだ。親友だからってなんでも言えるわけじゃない。むしろ言えないこともある」

「そう、ですね」

葵は力なくつぶやいた。

「私は思うんです。彼女は今、一体どこにいるのか……どうしているのか……死んだあと何をしているのか……ごめんなさい、変なことを言っていますよね……」

「彼女が仏教徒なら、それは仏教のテリトリーだ。俺が知る限りでは仏教徒は死後、西方にあるという極楽浄土に行くという。俺も行ったことはないが……そこは仏教のテリトリーだからな。シベリウス教に責任はない」

「私は少し、怖くなる時があるんです……彼女は時を止めて、私だけが時を刻んでいる……ほのかちゃんは子供のままで、私だけが大人になっていく……それが怖い……」

スラオシャの側から葵の顔は見えなかった。

でも、スラオシャにはわかった。

今、葵は泣いているということに……

「葵、君は幸せになっていいんだ。ほのかの分まで幸せに、ね」

スラオシャは葵を振り向かせて抱きしめた。

「あ!?」

そして葵の耳元でつぶやく。

「葵、俺は君を愛してる」

「!? ずるいです、スラオシャさん……私もあなたを愛しています」

スラオシャは葵の唇に自分の唇を重ねた。

雨の中でのキスだった。

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