悩み
雑草は思う。
もっと背が高ければ、日の光をいっぱいに受け取れるのに。
全身で新鮮な空気を受け取れるのに。
ああ神様。来世は、あのそびえ立つ大きな木にならせてください。
大木は思う。
足や羽があれば、自由気ままに移動できるのに。
好きな景色を、好きなだけ見れるのに。
ああ神様、来世は、あの飛び回る蝉にならせてください。
蝉は思う。
もっと寿命が長ければ、ゆっくり遊んでいられるのに。
毎年季節をめぐっては、空の高さを、雲の形を、川のせせらぎを、感じられるのに。
ああ神様、来世は、あの長寿と言われる亀にならせてください。
亀は思う。
もっと背が低くて、足もなくて、寿命が短かったら、
雑草の、大木の、蝉の気持ちがわかるのだろうか。
この何度も見た景色は、違ったように見え、感じられるのだろうか。
ああ神様、来世は、全てを知る神様にならせてください。
神様は思う。
悩むとは、何だろうか。
ああ、来世は、雑草にでもなろうか。