寝待ち月
私が、月を描くと。
どうしてこう、しみったれたものになるんでしょう?
ぜんぶでは、ないですけど。
かぴかぴの練りからし チューブからひねり出して
あの黄色に胸がすっぱくなったんで
皿のふちになすりつけた
無い袖は振れぬなら 富める者でも七分袖
果報は寝て待て もうしばし
欠けていく月が じきに登るよ
ひたいに浮かぶ汗 馬鹿にするわけじゃない
ただおれの性にはあわないだけ
機は熟すまで 雲を裂くまで
このてのひらに乗るものだけ ころがして遊ぶ
せかす気もないから 今宵は寝待ち月
瓶詰めの梅ジャムを スプーンでかき集めて
その香りに舌をすっぱくさせながら
焦げたパンになすりつけた
薄氷を渡るなら 厚さを問わず綱渡り
阿呆は寝て待つ まだしばし
満ちきった月も いずれ欠けるよ
ぬぐえど浮かぶ汗 軽んじるわけもない
でもおれの辞書には載らないだけ
木が茂るまで 花が咲くまで
このてのひらにあるものだけ ほしいならやるぜ
惜しむのも疲れた 今宵は寝待ち月
そのうち、またしみったれてない月を描きたいなぁ。