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20/22

18 百年大計(ひゃくねんのたいけい)

 翌日、学校で一ノ瀬から『魑魅魍魎』についての話を聞かされた。


「カオルがログアウトしたすぐあとにさー、イベントの告知があったんだよね」


「イベントの告知!? 早速初イベントか」


「そうそう。まあ発売してすぐイベントっていうのも、別に珍しくないけど。結構面白そうな感じだったよ」


「へぇー。どんなイベント?」


百年大計(ひゃくねんのたいけい)って名前の、未実装だった敵を三体実装して、それぞれのクエストを攻略させるって感じのやつ」


 未実装の敵キャラかー!

 もしかしたら、昨日の晩、ラジオで村瀬さんが言ってたキャラ原案とは、この新実装の敵キャラクターの事だったのかもしれない。


 学校にいる間、昼休みにスマホで『魑魅魍魎』の情報について調べていた。

 一ノ瀬の言うように、イベントの情報がもうすでに出されていた。

 イベントの開催は二日後。

 攻略するクエストは、全部で三種類あるが、それぞれ初級用・中級用・上級用と、本来の難易度三種に対応してクエストを用意しているらしい。

 イベント開催期間が終わると、それらは一度終了し、また改めて通常クエストとして追加されるようだ。


 クエストクリアによる報酬は、三種類それぞれで異なるアイテムの他、専用の交換所で交換可能なポイント『霊魂(れいこん)』を手に入れることが出来る。

 霊魂で交換できるアイテムの一覧は、イベント開催まで明かされないらしいが、色々なアイテムを入手できるため、いわゆる“おいしい”イベントだという事は間違い無さそうだな。


 まあとりあえず、今日もログインして、情報を集めたほうがいいかもしれない。

 なんなら、先日フレンド登録をした妖族のランカー・グジラメ(とどめきちゃん)にも連絡を取ってみてもいいかもな。

 返事があるかは謎だが……。




――――――――――――――――



 俺は今日も、帰宅後『魑魅魍魎』にログインした。

『極楽浄土』のクエスト受付広場は、相も変わらず怪物達でにぎわっていた。


【フランさん。本日もよろしくお願いします】


(おお、ナビ子さんよろしく。って、そういえばイベント告知来てる?)


【はい。運営からのメールボックスにて、イベント内容の告知が送られてきています。】


 俺はメールマークの項目をクリックした。

 一通り読み終える。

 メールの内容は、大体俺が今日の昼休みに調べて得た情報そのままだった。

 ただ、今回のイベントクエスト三種類については、ここで初めて目にする情報があった。


【魑魅魍魎 新規イベント開幕! 『百年大計!!来世の途中、霊魂の狩り時』】


 今回、三種類のイベントクエストをご用意いたしました。

 以下のクエストを攻略することで、特定アイテムと、一部アイテムとの交換可能な『霊魂』を獲得できます。


絡新婦(じょろうぐも)のいる洞穴

・平安怪奇!無限楼の妖狐

臆病(おくびょう)神の声


 以上のクエストは、初級・中級・上級それぞれに――――




 メールではこのクエスト名だけが明かされていた。

 ふむふむ。

 絡新婦と、妖狐と、臆病神の三体がイベントで実装されるということらしい。

 三体とも、メール本文の後ろに、その姿の影だけが表示されているようだ。

 輪郭(りんかく)だけがわかる影。

 絡新婦と妖狐の影にいたっては、影なのに形が騒がしすぎて不穏だな。 


 イベントの開催は明後日か。

 その前に、一度中級クエストを受けてみたいが…


 そんな事を考えながら、メールの内容をながめていると、


「こんばんは。今日は何かクエスト行きますか?」


「テミス! ああ、こんばんは」


 後ろから声をかけてきたのは、俺の唯一知っている天人族・テミスだった。


「今日は俺よりログイン早かったんだな」


「私もついさっきログインしたばかりですよ」


「あ、そうなの? ていうか、イベントの告知見た?」


「見ました」


 いつものごとく、テミスは落ち着いた(というより感情の欠損のせいだろうけど)口調でそう答える。


「俺達、もうちょっとで中級だよな。イベントも中級受けるか悩みどころだな」


「私はもう中級クエスト受けられますよ。昨日20にあがりました」


「マジか! いいなぁー」


「フランは今いくつですか? プレイヤーレベル」


「今はLv.16だな」


「…………低いですね」


「低いね…」


「うわ! ノセノセ!?」


 テミスと二人で話していると、いきなり背後から小さな蛇が現れ、低いね…、とノセノセの声が聞こえてきた。

 いつも通りの、青肌白髪のきれいな顔立ちをしたメドゥーサがそこにいる。


「二人ともこんばんは~」


「ノセノセさん、こんばんは」


「低いねって、ノセノセ! お前も変わらない、というかむしろお前のほうが低いだろ!?」


「あはははは! それがね、昨日フランがログアウトしたあとにクエストこなして、今Lv.17になったんだよねぇ~」


 マジかー。

 なんだろう、なんていうかさ。

 いや俺が上げてないのが悪いんだが、こうなんていうか、テスト前日まで「あー全然勉強やってねーわー」とか言ってた人に、テスト終了後「そりゃあガッツリ勉強するだろ?」ってすっとぼけられた時の気持ちだな、これ。


「イベント前に、中級行けるようになっておきたいんだよな。レベル上げ手伝ってくれないか?」


「オッケー」


「わかりました」



 それから俺達は、明後日のイベントに向け、レベル上げに(はげ)むことにした。

 レベル上げで効率がいいのは、初級クエストNo.10の『木霊(こだま)を追え!』である。


【初級クエストNo.10 木霊(こだま)を追え!】

【制限時間:60分】

【ステージ:霧の森(朝)】

【クリア条件:木霊20体の討伐】

【失敗条件:プレイヤーの行動不能状態】


【初回クリア報酬:1000ノーツ、回復薬(小)】

【獲得経験値:1000Exp】


 木霊は、霧の森ステージ(朝)に無数にそびえたつ大樹の幹や、根元にその小さな姿を隠しているが、見つけるとものすごい勢いで逃げ出してしまう、気弱な妖怪だ。

 メタ〇スライムかと思うほどだ。


 木霊は、ニワトリのような見た目をしている。

 ただ、足がなく、腹をこするようにして進むのだが、そのキャッチ―な動き方が「きもかわいい」とひそかに人気を博しているらしい。

 俺的には、移動速度がだいぶ早いので「きもい」としか思わないが。


 で、そんなきもかわいい彼らを倒すクエストなわけだが、どうして経験値効率がいいのかというと、それは彼らを倒した際のドロップアイテムにある。

 木霊は、逃げ出す際に『経験値パック』と呼ばれる経験値が一定量得られるアイテムを、低確率でドロップするのである。


 初級クエストの中で、『経験値パック』をドロップする敵キャラクターは、現在この『木霊』しかおらず、それが理由で『木霊』は非常に“おいしい”敵キャラクターとしてもっぱらの評判だった。


 クエストのクリア条件も、【木霊20体の討伐】という、数をこなすだけのものであり、非常に効率よく経験値を手に入れることができる。

 仮に経験値パックを落とさなくても、クエストクリア自体で経験値が1000Exp入るしな。


「テミス、悪いけど頼むな」


「任せて」


 そう。

 いくら相手が早く動こうが関係ない。

 テミスの<ダウンポア>の前では。


「カッコン……カッコカッコン……カッコン……」


 この「カッコン」というのが、木霊の声らしい。

 何かが軽くぶつかったような音であるが…


【それは『木霊』の鳴き声です。彼らは非常に気弱な性格の妖怪です。

 その鳴き声を仲間に聞かせることで、外敵がどこにいるのか情報を全員で共有し、なるべく敵を避けて過ごそうとする習性があります】


「悪いな…、経験値パックを落としてくだ、さいっ!!」


 テミスの<ダウンポア>により、降りしきる豪雨が木霊達の逃げ足を遅くする。

 逃げ遅れる木霊達を容赦なく狩りまくっていった。

 一体、また一体…。

 なんかごめんなさい、と謝りたくなるくらい軽々と倒していく。

 普段は逃げ足の速い木霊も、移動速度が低下すればこちらのものだ。

 と、調子良く木霊狩りを進めていると


「おーい、フランー。大丈夫か? なんか顔色悪くない?」


「ちょっと急ぎめに狩ってる……からかな…」


「激しい動きも血液失いやすいんだから、気をつけないとー。ほら、ガプッと『吸血』いっとく?」


「ああ……助かるよ」


 ノセノセがそういって、右腕を差し出してくる。

『吸血』行為は、基本的には歯を立てられる場所であれば、どこの部位からでも行なうことができる。

 しかし…。

 メドゥーサの特徴的な青い肌に歯を立てるのは、とても新鮮というか、今更ながら不思議な感覚だな。


「……ん? 何ためらってんだよ。吸うならサクッと吸って、クエ再開するぞ。

 このあいだにテミスちゃんが行動不能になったら、全員行動不能扱いになっちゃうんだし」



 フラン・グレース。

 ためらわず、いただきます。

 ガプッ…



【『吸血』を行ないます。

 ……フランさんは、『吸血行為』により、他者の血液を吸い始めました。

 ただし『吸血』のし過ぎにはご注意ください。

『吸血』を長く行うと、吸われた者が完全な行動不能状態に陥る可能性があります。】


 血液の現在値:71


 ああ。なんでノセノセの中身が男なんだろうか。

 誰か、この複雑な心境をうまく表現してくれ。

 一応、顔立ちは綺麗なメドゥーサさんなんだよなぁ……。

 その彼女の青い二の腕に噛みつくとか、本来なら結構なドキドキものよ?

 こいつも、黙ってれば美人さんなわけで。

 …………。

 まあ、いいんだけどさ!!もういい!!



「カッ……カッコン……」


 吸血という名の一服を終え、また木霊を倒していく。

 だがしかし、なかなか経験値パックは落としてくれない。

 まあドロップ率は10%あるか無いか、くらいか。

 正確な数値はまだネットにもあがっていないから、無論体感でしかないが。



……………………


【クエスト達成 おめでとうございます! excellent!! 】

【あなたは 報酬 を受け取りました。】

【報酬:1000ノーツ】


【獲得経験値:1000Exp あなたのLv.16】


【あなたのプレイヤーレベルが Lv:17 に上がりました!】

【あなたのアクションコマンド<ダークネスウィンド>が Lv:14 に上がりました!】



 よしっ。

 初回報酬と変わらず、二回目以降も1000ノーツもらえるのもいいね。



「ほんと、『木霊』は良クエスト。数こなしていけばこれだけでレベル50くらいは余裕でいけるんじゃね?」


「50はさすがに上がりにくそうだけどな…」


「ふー、腕を上げ続けて疲れました」


「テミスちゃんお疲れ~」


「悪いな、テミス。助かる」


 クエストが終わり広場に戻った俺達は、獲得した『経験値パック』の総数を、三人で分配した。

 このレベル上げは、テミスの<ダウンポア>あっての効率化だと、俺とノセノセは重々承知しているつもりだ。


『木霊』狩りによる効率的なレベル上げのかいあって、俺とノセノセはLv.21、テミスにいたってはLv.24にまであげることが出来た。

 一日で、それも初級クエストだけでここまであげれば、上出来だと思う。

 その日の活動は、これにて終了となった。

 そういえば、グジラメと連絡取れなかったが、まあいいか…。


 イベントが待ち遠しいな。

 そう思いながらVRゴーグルを取り外すと、今日は『VRデベロッパーコメンタリーFM』の日だという事に気がついた。

 ちょうどいい時間だな。

 暗くなっていた窓の外を見てから、俺は少しその窓をあけてからラジオを聴くことにしたのだった。

【作者からのお願い】

作品を読んでいて


「続きが気になる!」

「更新楽しみにしてる!」

「応援してるよ~」


と思われた方は、是非【☆☆☆☆☆】から評価を入れていただけると

作者のやる気がアップします。


面白くても、つまらなくても評価は大歓迎です!

お手数でなければ、よろしくお願いしますね!

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