16 保留
クエストには、初級・中級・上級の、大きく分けて三種類のクエストがある。
それぞれ、プレイヤーレベルによって受注が可能となるのだが、上級クエストはそのレベルが50からだったはずだ。
ということは、この『とどめき』は、少なくとも50以上のプレイヤーレベルという事になる。
ソロで余裕だというのだから、60、70あたりでもおかしくないかもしれない。
待て待て。
まず『魑魅魍魎』が発売されてから、一週間と少ししか経過してないんだが、どんな廃人プレイをすればそんなレベルになるんだよ……。
リアルに解脱した世捨て人の可能性が…?
「上級ソロって……。まだこのゲーム始まって少ししか経ってないと思うんだが…」
「う~ん? その疑問に答えるには、もうちょっとお互いのことがわかってからにしたいかなー!」
とどめきはニコニコとしながらそんな風に会話をにごした。
謎多き少女だな、ほんと。
「まあ、欲しいものが決まったらまたここへやってくるっていうのでもいいけど、アタシがいつまでもここにいると思わないほうがいいよ~?
アタシは根無し草のようにふらふらとどこかへ行ってしまうようなタイプだからね~!」
「それは困る!!」
ノセノセがとどめきのセリフに被せるように声をあげる。
「俺も困るな。一応、有力候補は見つかってるんだけど…」
「え? なになに~? このとどめきちゃんに教えてみなさいよぉ!」
身体を揺らすとどめき。
その揺れに合わせて、サラシの巻き付けが弱いのか、下に隠されたおっぱいが揺れているのがわかる。
なんてことだ。
「……蜃気楼って技の強化に使うアイテムで【プロメテイオン】っていう名前らしいんだが、そもそも技の強化をするのが初めてだから、急いでするべきなのかもわからないという」
「あれ? フラン、技の強化まだしたことなかったのか」
「ん? そうだけど?」
とどめきとの会話の途中で、ノセノセが横から口を出してくる。
「あー。俺が一つの技ばっかり使ってたからかな? 俺のほうが、フランより持ち技中の最高レベルは高いのかもしれないね~」
「最高レベルいくつ?」
「<マージナルリング>でLv.13。一度強化してるから本当は<マギカリング>って名前なんだけどね。<マギカリング>はLv.3」
「強化してたのかよ!!!」
「そうだよ!笑 というか、強化してたから『言霊使い』戦の時、足を拘束しつつ<ペトリフコード>が使えたわけだし。未強化のままだと、拘束が独立しないからねあれ」
言われてみれば、確かにそうだ。
あの時はノセノセの新技にばかり注目が行ってしまったが、<マージナルリング>を発動しながら、いきなり<ペトリフコード>を使うなんて、ノセノセの『欠損』を考えれば本来不可能な話だ。
「<マギカリング>なら、拘束した瞬間から使い手側のプレイヤーは手が空くからね。結構俺の『欠損』と噛み合ってるってわけー」
俺に自分の技の内容を話してくれていたノセノセ。
ただ、そんなノセノセを、とどめきはジロジロと眺めこうつぶやいた。
「君は、ひょっとして……俺っ娘なのかなぁ?」
「俺っ娘じゃないし! 中身が男なんですよ、俺はね」
「私も騙されましたよ」
「……悪かったってばテミスちゃん」
とどめきの疑いの眼差しにテミスが同調する。
というかテミスはまだ根に持っているらしい。
ウケる。
「えぇ~! その白い髪の毛のヘビちゃんとかすっごく可愛いし。
君、顔も結構いいのに、そのアバターで中身男とかなんなんだよ~! ずるいぜ全く!!」
とどめきは中身が女性なのかもしれない。
リアル女性の立場がないよ!とでも言いたげな表情だった。
「…まあ嫉妬はさておいてね、それじゃあ一角の君は『プロメテイオン』で決定ってことで?」
「いや、待って、待ってくれ! 大体、他二人決まってないし、とりあえず保留にしていい?」
「もー、いいけど、早めに決めてね?」
「とどめきさん、どこかへ行く予定でもあるんですか?」
テミスがとどめきの様子を見て尋ねる。
「まぁねー。これでも“ランカー”なので!! こんな可愛い子でも“ランカー”なので!! はぁ、忙しいってわけですよねぇ~!」
……ランカーなので、って二回言ったよな?
「…ランカー?」
「あ、そうだった。まだ中級クエやってないんだっけ? それならわからないかー。このゲームね、中級クエストをクリアすると、ステータスにランクってのがくっつくんだよねぇ。
アタシはそのランクのだいぶ上の方にいるんだよ~」
上位ランカー。
他のゲームでも耳にする、やり込みの激しいランキング上位者が自称したり、そう呼ばれていたりするあれか。
この人はその上位ランカーらしい。
「じゃあ、どうしてここに?」
「それは通知が来たからだってー。通知が来てなきゃ今頃、上級の『ダイダラ』とか『さとり』とかやって経験値稼ぎしてるよねぇ~」
ほうほう。
ダイダラ、さとり…。俺にはあまり妖怪の知識はないが、そういう敵キャラが上のほうにはいるらしい。
そのうち、俺達もやることになるのだろうか。
今から少し楽しみにしている俺がいる。
「悪かったな、なんか」
「ううん、気にしなくて全然オッケーだよ! よくいるんだぁー、欲しいの決まらない人ー。てっきり特定のものがもらえると思って、アタシのところ来るみたいだから!」
一瞬ギクッとした。
俺の心を読まれでもしたのかと思った。
しかしそれはそうだろう。
まさか、自由になんでも一つあげる! なんて言われると思ってないからな。
それならそうと、あの掲示板の下にでも書いておけばいいのに……。
あえてそれを隠さないといけない、伏せないといけない理由でもあるのか?
まあ、俺達には関係ないことか。
「とりあえず、フレンド登録しておこっか! 三人共するのダルいから、一角の君だけでいい? 連絡したくなったら君を通す感じで」
とどめきは、俺に向けてビシッと指をさし、そう言った。
「俺は全然いいよ、フラン」
「私もそれで問題ないです」
「そうか? そういう事なら登録するが」
――――――――――――――――――――
【グジラメ(ID:000051) さんをフレンドに登録しますか?】
Yes No
――――――――――――――――――――
俺は表示されたフレンド登録画面の“イエス”を押した。
「オッケーィ。こっちも承認になったよ! へぇ~、君、フラン・グレースっていうんだ! プレイヤー名に苗字まで入れてる人、初めてみたよ! 名前ガチ勢ってやつ?笑」
とどめきの視界には、俺のプレイヤー情報が表示されているのだろう。
一応、名前はさっきから見えてたはずなんだがな。
「そんな、すっとんきょうなガチ勢に俺を混ぜないで」
名前ガチ勢ってなんだよ。
「私も、フランの“グレース”にはずっと引っかかっていました」
ん? テミス今日どうかしたか?
「俺も引っかかってたんだよな~、うんうん」
ノセノセ。お前は知ってるだろ。
二回もうなずくな、二回も。
「俺はとどめきの『グジラメ』に引っかかってるけどな。グジラメってなんだよ。とどめきちゃんにしなかったのか?」
「無茶でしょっ。笑 アバターに名前つける段階で、プレイヤーの種族も階位もわかるわけないじゃ~ん!!」
「このゲーム唯一最大の欠点だな」
「このゲームは欠点だらけだと思います」
「テミスちゃん、手厳しいねぇー」
「あっかっかっか! でもネットだとそれが良い味になってるとも言われてるけどねぇ~。 アタシもその“味”に魅了された化け物だと思うし」
とどめきが頬を指で軽くかきながらそう話す。
そういえば最近、匿名掲示板覗いてないな。
今日終わったら覗こう。
「まぁ、確かにな。涙流して血液欠乏・行動不能、からのクエスト失敗とか、斬新過ぎて一瞬何で失敗したのかわからなくなるからな」
はぁ…、と嫌なため息が出る。
「まだ初級クエストでしょ? あー、それってもしかして【濡れ女子の話】かな。コラプス系は他も出てくるけど、インパクト強いよね、あれはー」
「【濡れ女子の話】なら、俺はクリアしたけどねぇ~。確かにフランには厳しかったかも?」
「私も余裕でした」
うっ……。みんなクリアしてるらしい。
というか、テミスに至っては『欠損』のおかげで逆にめっちゃ有利だったんじゃないだろうか。
むしろああいうコラプス系で、テミスの右に出るやついるのか疑問じゃん。
『欠損』がむしろ『増強』に繋がってるわ。
あれ? でもそういえば、『言霊使い』戦の時、テミスが一度感情を乱した時があったような……。なんだったっけ?
「……じゃあ三人、保留ってことでいいんだねぇー? 次ここに来た時に、アタシが居れば報酬を渡してあげるか、もしくはフランから連絡ちょうだいなのよ~」
とどめきのその言葉に、俺達三人はうなずいた。
それから俺達はクエストの受付広場に戻ると、今日のところは一度ログアウトして、また明日遊ぼうという事になった。
ナビ子さんに確認すると、現在の日本時間は午後十時過ぎとのことだった。
もういい時間だ。
いつものラジオも聴きたいところだし。
今日も新しい情報をいろいろ集められた。
俺は、とどめきに何を要求するのが一番いいのか、そのことを頭の片隅に置き、忘れないようにしながらその日は『魑魅魍魎』からログアウトしたのだった。
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