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13 とどめきちゃん!

「うわ! 何? いきなり、俺の名前呼んだりして、何なの!?」


「……?」


 二人とも、突然叫んだ俺の声に驚いた様子だった。

 俺も、ナビ子さんとの会話に夢中で、すぐ横に二人がいた事をすっかり忘れていた。



「いや、実はさ、言霊使いが倒せるかもしれない重要な事がわかったんだ」


「重要な事?」


「ああ…。それが、ノセノセ、お前の攻撃だよ」


「……え? どういう事だよ」


「ノセノセの『欠損』は『発動速度』だ。

 普通は、攻撃速度、魔法の発動速度が遅いなんて、どう考えても不利な『欠損』だろ?」


「そうだね」


「そんなわかりきった事聞くなよ…つら」


「いや、それでいいんだ!」


「「??」」


テミスも、ノセノセも、両者とも未だによくわかっていなさそうである。


「言霊使いはテミスの<天雷>を避けた。でもそれは、攻撃が発動されてから避けたわけじゃなく、攻撃の発動を予測して避けているんだ」


「発動の予測…?」


「そうだ。あいつは別に、雷を見て動くなんて超人的な反応をしたわけじゃない。

『欠損』のせいで発動時間の予測が立てられなかった。だからノセノセの<マージナルリング>は受けてしまった。

 そういう事だ。

 これが事実なら、ノセノセの攻撃は“仕掛け得”って事になる」


「ああ、そういう事か」


「だから、一緒にもう少しレベル上げようぜ。

 現状、技は<マージナルリング>だけなんだろ?」


「そうなんだよねー。

 それと通常攻撃だけだからね。もっとバリエーションほしいんだよな。

 せめて、二人と同じように二、三個くらいにしておきたい」



「……言霊使いの攻撃は、どうしますか?」


 テミスの危険視しているとも取れるその質問はもっともだった。


 言霊使いの攻撃は、『白昼夢』だけじゃない。

 俺の血液を抜いたり、ノセノセにとどめを刺したりした、あの飛び道具や針も使う。

『白昼夢』で惑わされても、それ自体ではクエストは失敗しないが、実際の身体にダメージを与えてくる手段もある。


『白昼夢』の手のひらで踊らされている本人以外が、何かしら手助けしなければ、どの道例の『寝ぼけ』を利用されかねない…。


「まあー、そう難しく考えなくていいんじゃない? 俺達がレベルを上げる。それでアクションコマンド増やして挑めば、今までなかった余裕も生まれる」


「…攻撃が最大の防御ってやつか」


「そうそうー。結局、今よりレベルを上げながら、策を練っていくのが一番だと思う」






――――――――――――――――――――――


 俺達はそれから、自分達でクリアできるクエストをたくさんこなしていった。

 現実世界との都合もあり、二日ほどかけてレベルあげをしていく。

 無論、こなすのはすべて初級クエストだ。

 二度目以降のクリアでも、経験値とノーツは獲得できる。

 こなせばこなすほどレベルが上がり、クリア時間がちぢまり、サクサクと経験値が手に入っていく。



【クエスト達成 おめでとうございます! excellent!! 】

【あなたは 報酬 を受け取りました。】

【報酬:600ノーツ】


【獲得経験値:600Exp あなたのLv:15】


【あなたのプレイヤーレベルが Lv:16 に上がりました!】

【あなたのアクションコマンド<ダークネスウィンド>が Lv:12 に上がりました!】

【あなたのアクションコマンド<蜃気楼>が Lv:4 に上がりました!】


 ふう……。

 またレベル上がったな。

 


 当然だがレベルは徐々に上がりづらくなっていく。

 初級クエストだから、獲得経験値が今のレベルに対して少ないのだろう。

 だんだんと、回数をこなさなければレベルが上がらなくなっていった。


 ただ、こうして徐々にレベルも積み重ねていけば、あの言霊使いを倒すのに適した技を覚えるかもしれない。

 それでなくても、攻撃力や防御力の基本的なステータスは伸びているから、自然とクリアには近づいているはずだろう。


 

 ところで、最近気が付いたことがある。


 あるプレイヤーが、他のプレイヤーにこんなことを言う。


「やっぱ“ナンバリング”おかしかったわ…」



そう、『ナンバリング』というものについてだ。

 ナンバリングというのは、クエストの受付広場のだいぶ隅のほうにある、小さくてあまり存在感のない、もう一つの掲示板のとある内容のことである。


 その名も『とどめきちゃんは見た! 難易度詐欺クエストにナンバリング!!

以下のクエストをクリアしたプレイヤーには、こちらの掲示板でもとどめきちゃんから別報酬をあげちゃうから、よろしくなのよ~』という題目の掲示板。


 通常のクエスト依頼が閲覧できる公式の掲示板ではなく、どうやらこれは個人がやっている掲示板らしい。


『とどめきちゃん』という謎の存在Aが、勝手にクエストを選び、そこに報酬を設けているようだった。


 内容は、初級クエストから上級クエストまでの中で、特に、難易度詐欺しているだろこれ!という感想になったクエストを、一気に並べているらしい。


 一種のお遊び的なノリなのだろうと思う。

 難易度詐欺だ!という感想自体は、この『とどめきちゃん』自身の感想らしい。


 ……というか、自分を「ちゃん」付けしてるプレイヤーがいるんだな。

 まあ、別にいいけど。


 この『とどめきちゃん』の難易度詐欺だとする評価の正確さには、どうやらある程度の信頼があるらしい。

 そのせいか、プレイヤー達のあいだではいつの間にか、この難易度詐欺だとされるクエスト達のことを『ナンバリング』と呼ぶようになっていたようだ。


 そして、ナンバリングの第一号は、ご存じ



  ~~難易度詐欺クエスト一覧だよ~~   『とどめきちゃんの一言』


【初級クエストNo.12『言霊使いと白昼夢』】 ←強い。中級クエストに謝れ



 となっている。

 もはや中級クエストに謝らないといけないレベルらしい。


 そんな事になっていたクエストだとは知らず、俺達はごく普通に挑んでいた。

 こんな評価がされてるクエストなら、諦めて別のクエストで遊ぶか…?


 そうだ。

『魑魅魍魎』のいいところは、別にそのクエスト一つクリアできなくても、上の階級のクエストで遊べるという点である。

 クエストの階級の解放は、プレイヤーのレベルによって行われている。

 何も、この『言霊使いと白昼夢』にこだわる必要なんて、無い。


 無いのだが……。


「一度乗りかかった船だし、クリア目指そうよー」


 というノセノセの言葉に、俺とテミスも、異論はなかった。

 この初級クエストNo.12『言霊使いと白昼夢』のクリアを目指す事が当然だと、三人とも思っていた。


「あの失敗から、結構レベルあげたし、そろそろいいんじゃね?」


「よーし、『言霊使い』待ってろよ!」


「…………」


 俺達三人は、以前の失敗していた頃に比べると強くなっていると思う。

 だが、三人がお互いのステータスのすべてを把握しているというわけではなかった。

 この二日間、時間の都合が合わなかったときもあったし、それぞれが自分のステータス強化に励んでいたとはいえ、その詳細結果をいちいち報告はしていなかった。


 他者のステータスをのぞけるのは、せめてプレイヤーレベルくらいだ。

 ただ、それを見ても十分、俺達は以前より強くなっているとわかる。

 俺達三人のレベルは以下の通りである。



『フラン・グレース プレイヤーレベル:Lv.16』


『テミス プレイヤーレベル:Lv.18』


『ノセノセ プレイヤーレベル:Lv.13』



 正直、中級クエストの解禁がLv.20からなので、こだわらずにそのまま『言霊使い』を避けてレベル上げに専念しててもいいけどな……。


「フラン、何か新技覚えた~?」


「うーん? 秘密にしとくわ」


「…んだよーそれ! お互いのステータス知っておいたほうが戦闘が楽って言ってたのお前の持論じゃなかったっけ?」


「ノセノセのその顔見てたら、いじわるしたくなったわ」


「なんだと~?」


 マジで、なんでこいつ中身が男なんだよ。

 そう思うほど、メドゥーサのノセノセの身振り手振りは女の子らしかった。

 髪の毛の蛇さん達も可愛いしな。あれずるいよな。俺もほしい。


「テミスは何か新しい技覚えたりしたか?」


「前から覚えてた二つはそのままだけど、それぞれレベルと効力は上がってます。あと『ダウンポア』という雨を降らせる技を覚えました」


(『ダウンポア』? ナビ子さん、どんな効果なんだ??)



【天人族のプレイヤーが覚えられるアクションコマンド:『ダウンポア』は、ステージに特殊な豪雨を降らせる補助系魔法です。】


(……特殊な豪雨って?)


【はい。物体の重量化を進める特殊な水質の雨です。

 相手はその雨を浴びるほど身体が重たくなっていき、移動速度を低下させていきます。

 発動時間に比例して、相手の移動速度はどんどん落ちていきます。

 最終的には移動速度が最低値まで落ちるというものです。一種の拘束ですね】


(おお、便利そう!!)


【ただ、このアクションコマンドは、使用している間しか豪雨が降りません。そして、コマンドをやめた瞬間、雨は止み、それまで落ちていた相手の移動速度も一瞬で元通りに戻ります。


 また、使用中はずっと魔力を消費しつづけるので、魔力量の多い天人族だからこそ使えるようなコマンドだといえます。

 元々、天人族しか覚えないアクションコマンドですが】


(え、じゃあそれを使ってる間しか効果がないのか。)


 補助系の魔法にしては結構使いにくいかもしれない。

 複数人で攻略に挑むなら問題なさそうだが、ひとりの時はあまり使えなさそうだなと感じた。


「『ダウンポア』いいじゃん! 俺、ちょっと音声ナビに聞いてみたけど、複数人でクエストやるなら、かなり便利そう!」


「やっぱり魔力量多いって、かなりアドバンテージあるよな~」


「……そうでしょうか」


 テミスは相変わらず感情のこもっていなさそうな反応だったが、こうして新しい技も覚えてきた。


 アバターから直接は感じなくても、そのプレイヤーレベルや技の話を聞けば、彼女が俺達と『言霊使い』を攻略しようとする意志がそこにあるのだとわかった。


 人によっては、やっぱりこの反応だけでイライラしそうな気もする。

 自分が一生懸命にレベルをあげて、必ずクリアしてやるんだ!という気持ちを持っていても、テミスから「はい!絶対クリアしましょう!!」という力のこもった反応は返ってこないからだ。


 今後長くクエストを一緒にやっていく、ということは、こうした些細(ささい)なやり取りのひとつから起きる気持ちのすれ違いに、気をつけなければいけない。

 テミスはこうして誤解を受けるんだな、と俺は思っていた。

【作者からのお願い】

作品を読んでいて


「続きが気になる!」

「更新楽しみにしてる!」

「応援してるよ~」


と思われた方は、是非【☆☆☆☆☆】から評価を入れていただけると

作者のやる気がアップします。


面白くても、つまらなくても評価は大歓迎です!

お手数でなければ、よろしくお願いしますね!

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