10 三人組
「ノセノセ、ステータス画面にある『欠損』て項目のところ、何になってる?」
俺はノセノセに『欠損内容』を尋ねる事にした。
遊びはじめからいきなり“弱点”をプレイヤーに尋ねるのは少々気が引けるが、共にこのゲームを攻略していく上で、知っておいたほうがいい事だろうと思った。
味方の弱点をカバーすること。
それがどれほどクエストをスムーズに進められる事に繋がるのか。
それは、テミスとの共闘で痛いほどわかっているつもりである。
「あー、マイナスステータスだろ? ノセノセさんの欠損はねー、『発動速度』になってるよ」
「『発動速度』の欠損か……」
発動速度の欠損というのだから、大体は想像がつく。
俺は、テミスの時と同じようにナビ子さんに『発動速度』の欠損について尋ねた。
【『発動速度』の欠損は、ある程度の魔力量を保有する種族に与えられる『欠損内容』の一つです。
『発動速度』が欠損している者は、あらゆるものの発動速度が低下します。
攻撃速度や、魔法発動の速度、また味方からの補助魔法を受ける際の影響速度なども対象です】
おおー。珍しく俺の予想が当たってる!
というか、俺がこのゲームに馴染んできているからか?
【『発動速度』の欠損は、通常の経験値を得ることである程度補うことが出来ます。また、アバターによっては、『発動速度』に関与するアクションコマンドを持つ者も居ますが、その影響も遅れながらに受けることができます。
無論、欠損の無い者と比べると、アクションコマンドによって補えてもまだ遅いと感じる程度ですが。】
なるほどな。
俺の予想は当たっていたが、加えてもう一つ新たな情報。
攻撃速度や魔法発動速度の『速度』に関与する技があるという事か。
俺の回りにはまだいないだろうが、これから、出会う者達の中には、そういう技を持つ者が居るかもしれない。
「発動が遅いとか、もうこれはクソゲーでは?」
メドゥーサのノセノセが肩を落としている。
「ノセノセ。それは工夫次第だと思うぞ。
俺の『欠損』よりまだマシな気がするし、第一これはパーティを組めるゲーム、MMORPGだ。お前の発動が遅いなら、周りがその時間を稼ぐまでだろ」
「ううぅ~……フラーーーーン!!」
「うわっ…た、抱き着くな!! 気色悪い!!」
「ほれほれ~。これが“にょたい”だぞ~? 普段我慢してんだから、たまにはオープンになれよ!!」
メドゥーサのノセノセは、泣いていると見せかけて抱き着き、俺をからかうだけだった。
背中に思い切り胸を押し付けてきている。
「あ、ああ!そうしたいのは山々だよ。相手の中身が男じゃなきゃな!!」
ただ、その豊満とも慎ましいともいいがたい、一般的なサイズのお山ふたつでも、俺には十分すぎる破壊力である。
この中身が男だという事実から、目を背けたい。
魔人の強固な筋肉質の身体(俺)に、ついでと言わんばかりに、ノセノセの髪の毛の先の小さな蛇達がわらわらとすり寄ってくる。
くすぐったすぎる。
本当にくすぐったいからやめろ。
これが本当に女子だったら、まあ嬉し恥ずかしって感じもするが…。
「あの……フラン? そちらは?」
俺(男)とノセノセ(中身は男)がじゃれついていると、すぐ後ろからテミスが声をかけてきた。
「おお、テミス。こんばんは」
「こんばんはー…? フラン、そっちの素敵なドレスの彼女は誰だよ?」
「ああ……」
俺はテミスとノセノセを、お互いに紹介してあげることにした。
「へぇー! 天人族か、いいねぇ。この辺りじゃ全くいないし、結構レアな種族じゃない?」
「……見掛けないですね。私も自分以外、今のところ知りません」
「結構というか、魔族より魔力量多い種族だぞ、ノセノセ」
「え!? 魔族でもレアって言ってたのに、じゃあひょっとして超レアじゃん!?」
あんまりレアレア連呼すると、それはそれでアホっぽいぞノセノセ。
意外とノセノセは人見知りせずに、テミスと話そう話そうとしているようだった。
まあテミスは外見的に惹かれるところがあるからな(主に可愛いせいで)
「二人はもう何度も一緒にクエストやってんの?」
ノセノセが質問してくる。
「そうだな。今のレベルまであげられたのも、大体テミスと一緒にクリアしてきたからって感じ」
「…………その髪…」
「……ん? この蛇の髪のことー?」
テミスは、ノセノセの独特な髪の毛について何か言い掛けていたが、そのあとの言葉は続かなかった。
「……あれ、なんなの? 言い掛けてやめないでよ。なんか気になるんだけど」
「…………」
テミスは黙り込んでいた。
俺は、テミスのその反応が、彼女の『欠損』によるものかもしれないと悟っていた。
なんとなく口にした、メドゥーサの外見で気になるところ。
ただそれだけのような気がする。
テミスは、『欠損』のせいで、感情をほぼ失っているが、あくまで“ほぼ”であって、“すべて”ではないからな。
何か少しだけ思うところがあったのかもしれない。
それさえも、自分では認識できていないのだろうけど。
「ところでさ」
ノセノセとテミスのやり取りに、割って入るようにして、俺はひとつの提案をすることにした。
「この三人でパーティ組まない?」
二人が一緒だとすごく心強い。
単純にそう思ったのだ。
魔族が二人に、天人族が一人。
これこそまさしく向かう所敵なしになるんじゃないか?
そう思わずにはいられないほど、このメンバーは粒ぞろいな気がしていた。
ノセノセとテミスの二人は、俺の誘いに二つ返事で同意してくれた。
テミスは、俺の時のように、一度はノセノセを拒むかもしれないという可能性もあったが、どうやらそれは無いようだった。
もしかしたら、一度はペアを組んでいる俺がいるため、その辺りの整理がおいついていないのかもしれない。
よかったな、ノセノセ。
「それでー? 早速三人でパーティ組んで、何のクエスト行く?」
「多少手ごわいほうがいいかもしれない。
三人で遊べるタイミングの時は、レベル上げよりも新しいクエスト攻略に時間を使ったほうがいいんじゃないかと思うんだが」
「じゃあ、これは…?」
テミスが、俺達のやり取りを聞いて、具体的な候補をあげたらしい。
広場にあるクエスト掲示板の、とある一枚の貼り紙を指差す。
【初級クエストNo.12 言霊使いと白昼夢】
【制限時間:60分】
【ステージ:五色沼のほとり(昼~夕)】
【クリア条件:言霊使いの討伐】
【失敗条件:プレイヤーの行動不能状態】
【初回クリア報酬:1300ノーツ、カラスビシャクの種】
【獲得経験値:1000Exp】
「あー……言霊使いね。なんか厄介な敵らしいよー」
「ん? ノセノセ、この敵知ってるの?」
クエストの貼り紙を眺めるノセノセの顔色があまり芳しくない。
「うーん、噂だけどね? 大体初心者はここで挫けるらしいから」
「…………」
(ナビ子さん。言霊使いってそんな強い敵なの?)
【クエストにて現れる敵キャラクター:言霊使いは、通常の戦闘中に、プレイヤーの精神状態をかき乱す因子である言霊を扱うキャラクターです。言霊使いは、その言霊により、プレイヤーの戦闘時のパフォーマンスを一時的に下げ、攻略を困難なものにさせます。】
(うおぉ…。なんというか、アクション系とコラプス系のハイブリットだな)
【クエスト自体はアクション系に分類されます。言霊使いを討伐する事でクリアとなりますから。】
要するに幻覚とかをお見舞いしてくる敵なのだろう。
まあ三人もいればなんとかなるだろう。
魔族二人と、天人族一人いるパーティだしな。
(このパーティでダメだったら、本当に誰もクリアできないんじゃないか。)
【参考までにですが、初級クエストNo.12をクリアできた者は、現在の所確認出来ていません。】
「はあ!?」
「うわ! フラン、どうしたんだよ急に」
「いや……、今音声ナビがちょっとな……」
不穏すぎる。
三人いても、なんとかならないんじゃないか。これは。
急に不安になってきたんだが…。
「とりあえず、やってみないとわからないし、やってみるか」
俺の言葉に、テミスはただ無言でうなずき、ノセノセはやるぞー!と息巻いていた。
【初級クエストNo.12 言霊使いと白昼夢 が受注されました。】
【制限時間:60分】
【ステージ:五色沼のほとり(昼~夕)】
【クリア条件:言霊使いの討伐】
【失敗条件:プレイヤーの行動不能状態】
【初回クリア報酬:1300ノーツ、カラスビシャクの種】
【獲得経験値:1000Exp】
言霊使いが厄介そうだなという点の他に、報酬の【カラスビシャクの種】が少し気になっていた。
種という事は、おそらく植えて、育てることが出来るのだろう。
少なくとも、装備品や装飾品ではないようだ。
何はともあれ、気になる報酬も何もかも、クリアしなければ取らぬ狸の何某と同じ。
意味がない。
俺とテミス、ノセノセの三人でこのクエストを攻略するんだ。
【作者からのお願い】
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