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あにまるろーど!  作者: 御剣蒼矢
1章 三武華純編
3/96

さん! 三武華純

いえあ……

「悪いな健二、ロイの家族の人が明後日ならって言ったから」

「全然いーんよ」

健二はヒラヒラと手を振った。


「にしても一日経たずに見つかったのか?すげえな」

健二が大仰に両手を上げて見せた、なんのポーズだよそれは。

「風呂上がったら直ぐきてびっくりだよ」

「相当心配してたんだろな」

「ああ」

多分いなくなった事を心配し、藁にすがる思いでSNSを漁っていたのだろう。


「俺だってボスがいなくなったら焦るなんてもんじゃなくなるわな」

「俺もだ、パー太郎達がいなくなったら死ぬ」

「……パー太郎?」

どこぞの漫才師だそれは。

うちの鳥だぞ」

「パー太郎て……」

お前は自分の鳥を漫才にでも出すつもりかよって感じの名前だ。


「あ、横溝君達おはよ」

「やっほ三武」

後ろで健二も「おはー」と手を上げる。

「なんか元気ないのかお前?」

挨拶をした三武の様子が少しだけ暗く感じ、つい聞いてしまった。こういうのは聞かない方が良いのではなかったか。


「うん、ちょっと色々あって。ありがとう心配してもらって、でももう大丈夫なの」

「そっか、なら良かった」

軽く手を振り三武を見送る。

「そういうとこだぞ」

健二から怒涛の小突きアタックがきた。

「何がだよ」


ちら、と三武を見ると机に座り熱心にスマホの画面を見ていた。朝にイケメン俳優でもいたのだろうか。


「ま、いっか」



-----



「ボス、ロイ、ただいま」

だーっとボスが駆け寄ってくる、忠狼だ。ロイはとてとてと歩いてきた。


「ロイ、明日会えるからね」

わしゃわしゃとロイを撫でる、それが分かるのかすりすりと身を寄せてきた。ボスもすりすりとロイに身を寄せる。

明日は土曜日、本当なら猫カフェに行く予定だったのだが一刻も早くロイと家族さんを会わせてあげたい。


その後はいつもの様にあそんだ、ロイは矢張り歳なのか直ぐに疲れて寝てしまった。



-----



「はぁ……」

三武華純はぽす、とソファにダイブする。

「ロイ……」

突然何かに興奮して歳に見合わずリードを振り切り走っていってしまった時は本当に焦った。

死にものぐるいでSNSなどを漁りまくり、その日の夜にはロイ見つける事が出来た。


明日にはロイが帰ってくる、それは分かっているのだけれど、それでも悲しい。

いつもならご飯が入っているお皿も今はからだ。

遠くの高校に入るという事で4月から始めた一人と一匹暮しも早くも3ヶ月が経つ。

その間、というか物心がついた時からずっとロイがいた、例え一日であってもいないことなんて考えられない。


「見つけてくれたのが横溝君ならなあ」

もしそうならば何か会話のきっかけになるかもしれない。

「あ、でも今日変化に気づいてもらっちゃったし、欲張りはだめだね……」

それに今はロイが帰ってきてくれるだけで良い。

ロイも今年で15歳、本来ならばいつ亡くなってもおかしくない。あんなに元気だがいつ弱ってしまうか分からない、今はずっと一緒にいたい。


「早く明日にならないかなあ……」



-----



「ん……」

ぺろぺろと顔を舐められる感覚に目を覚ました。ぱちぱちと瞬きをしてから時計見る、朝6時。

「ありがと……ボス」

いつもボスは6時に起こしに来てくれる、優秀な忠狼だ。

そこで体の横に何か暖かい物があるのに気づく、横を見るとロイが丸まって暖めてくれていた。

ロイは矢張り老犬なのか結構な時間を丸くなって過ごしている。

「ロイもありがとうね」

ロイをなでなでとする、まだ二日だというのにすっかりうちの犬みたいになってしまった。


「今日だからな……」

長い様で短な二日だった、何にせよ二日で家族のところに帰してあげれたのは奇跡だろう。

ぷるぷると首を振り眠気を吹き飛ばす、ボスに退いてもらいベットを降り、着替えを済ませるべくクローゼットへ向かう。


着替えを済ませてから二匹に向き直る、先ずはボスから。

お座り、お手、待て、良し。の順で行う。

おやつは小さなササミ。

「ボス、お座り」

ぴっ、とボスが座る。「お手」というと、もう分かってますよという風に手を置く。

待ても、良しよ余裕でこなす、めっちゃ良い子。


「ロイ、お座り」

ロイも育ちが良いのかぴっ、と座る。

お手も、待ても良しも出来る。

「良い子だなロイ」

横溝家の朝のルーティンだ。


その後は自分の朝ご飯を作って、犬達にも朝ご飯をあげた。待ち合わせの場所に行くため何時頃に出ようか。


「電車まで20分くらいで電車が10分くらい、そこから目的地まで更に10くらい分だよな」

本来なら大型犬や中型犬は電車に乗れないのだが、ここは田舎だからか頼んだらキャリーに入れるならとOKをもらえたのだ。


「確かコロコロ付いてるの中型犬用のキャリーあったから、ロイにはそれに入ってもらおうか」

昔小さかったボスを入れていたキャリー、懐かしいものだ、ボスは1歳過ぎればもう大型犬になってしまった。因みに今は1歳と4ヶ月。

まあそれは置いといて、柴犬なら大体8kgくらいだ、8kgならば楽ちん。

そうと決まれば準備だ。


こういう時に持っていく物は色々ある。

水を入れた500mlペットボトルを多めに三~四本、水を飲む用とおしっこを流す用だ。それと犬用のお皿を二つ、おやつを少々、排泄物用の袋を数枚。

お金とウェットティッシュもあるといい。

首輪、リードは勿論のこと。

ハーネスや服もあると良い、ボスは余り着たがらないのだけど……。


11時半には着いておきたい。

「移動時間が多めに見積って1時間半くらいか、じゃあ10時だな」



-----



「あと少し……」

そわそわ、そわそわ。

「あ……12時って駄目だったかな。お昼ご飯の時間だよ……でも言っちゃったし……。10時にはいた方が良いかな……?でも早すぎも良くないよね……」

三武華純のそわそわ度はもうマックスに達している、どんな人が来るのかとか、迂闊に会っていいのかとかを考えては心配になり。でもロイに会える事を思うとどうでも良くなったり。


「家からちょっと遠いいし……11時に家を出よう……」

然し覚悟を固め、そう決めるのであった。



-----



「行くよボス」

ボスの首輪にリードを付けて、くいくいと引く。

「待ってたぜ!」と言わんばかりにだーっ!と走ってくる。

「ロイ、これ入ってくれる?」

ロイの背中をぽんぽんと叩くと素直にキャリーに入った。

れっらごーだ。


「あ、ボス走るの禁止ね」

コロコロキャリーを速く引くと揺れるのでそれは禁止。ボスは「ま、しゃーなし」という風に鳴いた。

「良い子だ」


家を出て、鍵を閉める。

バック良し、キャリー良し、ロイの首輪とリード良し。ボス用の折りたたみキャリー良し。

「時間は……10時半ちょうど」

完璧!花丸だな。


ボスは良い子だ、散歩の時は必ず横を歩いてくれるし、水を飲みたい時などはぴたっと止まって一度鳴く。

今も横を歩いてくれている。


のどかな田舎道を歩いていると「あら慎也くんじゃないの、ボスちゃんも一緒でお散歩かしら?」とおばさんが話しかけてきた。

この人は近くに住む雪恵ゆきえさん御歳65歳。

はっさくという10歳のトイプードルが家にいる。


「ちょっとお尋ね犬がいまして」

「あらそう、親切ねえ。ボスちゃんも今日もかっこよくて」

ぺこりと頭を下げその場を後にする、心做しかボスが誇らしげに歩いている。

「分かりやすいな、ボスは」

しっぽがぶんぶんだ、褒められた事は分かるのだろう。


「暑いなあ」

もう7月下旬、梅雨明けとまではいかないが晴れの日が段々多くなってきた。

ボスも最近毛を少し刈るというか減らした、毛が結構もっさもっさなので夏は暑くなってしまうのだ。

もっさもっさだと熱中症になりかねないからだ。

見栄えはそのままかっこよく、それでいてもっさもっさにはならないくらいにカットした。

我ながら良い腕。


自分用の水筒を開け水を飲む、もう少ししたらボス達にも水をあげよう。


歩いて歩いて、やっと駅に着いた。

ボスにはキャリーに入ってもらう、ボスのは折りたたみ式のため持ち上げるしかない。

先にロイを電車に入れ、次にボス。


「よいしょ……っ」

ボスのキャリーは結構重い、ボスはまだ1歳なのにこんなに大きくなって……成長スピード恐ろしいよ。





(´Д` )イェァ……

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