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1-10 結局は自己満足

なんか最近書きたいけど書き始めるとすぐストップする…。書けないわけじゃないけど。俺は電車の中でしか書けないのか???

 昨日のことはたぶんしばらく記憶に残るであろう。しかし、やはりというか罪悪感が残る。幼い彼女を押し倒したとかそういうのもあるがそれよりも、安っぽい正義ではあるが環境によって不利益を被るというのが許せないのだ。自分もそうであったように。

 といっても自分ではどうしようも無いことであるので二人に相談することした。


「セイ、ライ。昨日のあの子を助けられないかな?これは俺のわがままだから無視しても構わないけど。」

「へえ、あなたが牢屋に入れたというのにそんなこと言うなんてね。」


 …というよりそれだからというのが大きいのだが。


「冗談はさておき私も彼女の事を助けたいといえば助けたいのよ。彼女のことを考えるとね。ただ、私ではいい方法を思いつかないわね。ライはどう?」

「一応彼女が罪に問われないロジックはあることにはあるのですが、僕のことなので説得できる気がしませんね。そこはライにおまかせできますか?」


しばらく二人が意見を交わしあい、そして終わった。


「それでいけそうなのか?」

「最終的には相手次第としか言えないけど、だいたい確率は半分ぐらいだわね。」

 そうか。…ん?まてよ。これ誰に話せばいいんだ?ここの司法権の構造なんてわからない。…いや、適任の人がいた。ここの主、マズローさんがいる。ならどうしたらいいか聞こうと思ったが既に仕事に出ている。

 つまりコネは今ないということか。帰ってきたら相談しよう。今日は特に何もできないから簡単な依頼を受けてこよう。


銀貨+5枚


 マズローさんたちが帰ってきた。相変わらず騒がしい。


 落ち着いてきたところでマズローさんを呼んで事情を話した。あまり乗り気ではなかったみたいだが、明日話を繋げてもらえることとなった。


翌日

 俺らはマズローさんの後をついて行きこの国における治安維持組織(つまりいわゆる騎士)の詰所へ向かった。詰所は、宿で見る衛士達の人数の割には小さい。

 マズローさんの後に続きどんどん進んでいく。驚いたことに顔パスで中に入れた。そこまで地位の高い人だったんか。これからはちゃんと敬語使わないとだめかな…。

 そして、ある一室にたどり着いた。団長室と札が出ている。部屋の中には事務作業をしてるやや神経質そうな男がいる。一段落ついたのか手が止まり、口を開いた。

「マズロー殿。見知らぬ者達を連れてどのような要件かね?」

「この者達は昨日の盗っ人を捕らえた者達です。その事で申し上げたいことがあるということで連れて参りました。」

「ほう。君もわかっているであろうが私は忙しい。わかるな?」

「はっ。十分承知しております。」

 このやりとりの間に俺は若干不安になった。彼女を助けるというのは俺個人の感情から起こったものだからだ。団長の言う聞くに値するものではないかもしれない。

「よろしい。ならば話せ。」

ここで前に出たのはコミニケーション能力の高いライ。

「お初目にかかります団長様。私はライと申します。私たちがお願いしたいのは昨日私たちが捕らえた子供の解放です。ええ。そうです。団長様の思っていらっしゃる通りそうすべき理由があります。それは騎士団の民衆からの人気が大きく下がる…特に生活水準が低い方々の…ですわね。」

「それはこちらも理解している。だが私達は犯した罪を裁く者。そこに例外はない。」

「もちろん犯した罪は裁かれなければいけませんわ。しかし、私が言いたいのはそういうことではないですの。」

「ほう。ではどういうことだ?そして犯罪者を解放してどう罪を償わせると?まさか監視するとは言うまい。」

「罪の償いについては後で話しましょう。私が伝えたいのは犯罪が起きやすくなるということですわ。」

「もし本当に犯罪が起きやすくなるのであれば阻止したいところだ。しかし犯罪の増加と犯人解放になんの関係があるのだ?犯罪をする奴はするしない人はしないだけであろう?」

「いいえ、関係ありますわ。今回の犯人は、犯行後にお金をばらまいていましたわよね?特にお金が困っていた人に。逆に言えばこれからはその人たちが犯罪を犯すかもしれないということですわ。犯罪は簡単にお金手に入りますもの。」

「施しをするのは領主様の仕事ではないのか?こちらではどうしようもないが。」

「ええ。そこは領主様に意見して欲しいところですわ。それと犯罪の起きやすさとの関連でしたわね。簡単なことです。騎士団の評価が高いと犯罪を起こしづらく、低いと起こしやすいというだけですわ。団長として評価を気にしていますわよね?」

「それだけであるならば解放する必要は無いな。それだけか?」

「そのわけはありませんわ。彼女の生い立ちについては調べたかしら?」

「調べようとしたができなかった。口を割らなかったものでな。」

「正確には裏付けもとれなかった。でしょう?あなた達は余罪を追及するために調べようとしたのでしょうが、間違いですわ。」

「……」

「それよりも背景や動機が重要でなくて?犯罪を無くしていきたいのであればそれらを領主様に申し上げて政策の糧にするのが一番だと思います。話を戻しますわね。今回の犯人についてかいつまんで話させて頂きます。



……と言った具合ですわ。」


ライの見事な話術によって騎士団長だけでなくマズローさんまで「なっ…なんと可哀想な…」という顔をしている。俺は慣れているが、本当に感情を揺さぶるのが上手い。ところでマズローさん、俺たちの話ちゃんと聞いてなかったのか?


「し、しかし、罪は裁かれなければ……。」

「これは誰の罪と言えるのでしょう?こういった状況を生み出した行政側の罪ではないかしら。それに、この話が民衆に知れわたったらどれだけ評判が落ちるのかしら?石を投げられるかもしれないわね。」

 ライは微笑んだ。それを見た団長は絶望に染まった。

「やめろぉ…やめてくれぇ……解放するからそれだけはご勘弁を…!私が悪かった…。」

 団長はライに縋り始めた。見ているこっちが哀れになってくる。マズローさんはさすがに縋りついてはいないが、すぐにでもしそうな雰囲気だ。

「ふふふ。それだけじゃだめに決まってますわ。また、あの子を劣悪な環境に置くのかしら?」

「それは領主様と相談しないことには……」

「そうね。また日程が決まったら連絡よろしくお願いしますわ。」


 後日、領主館で彼女は孤児院に引き取られることに決まり、低所得者への支援が約束された。俺の思っていた最高の結果だ。これでようやくことが終わったという感じだ。偶には孤児院にちょっかいを出しに行ってもいいかな?


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