1-9 牢屋にて
はぁ。なんでこんなことになったんだろう。私は牢屋に入れられてからというものの暇で、過去のことを思い出していた。
私が生まれた時は普通のかぞくだったらしい。だったらしんだけど、物心つく前に父親は事故で死んだからわたしは父親を見たことが無い。
親といって思いうかぶのはお母さんしかいない。だけどお母さんもすぐに死んじゃったからおぼろげにしかおもいだせないけど。お母さんは頑張って働いていた。けど、お母さんひとりじゃ私を養いきれずどんどん貧乏になっていった。
そして、周りの家との付き合いがなかったから、私は外を知らずに育った。
お母さんは必死に働いた。そして、働きすぎた。だんだんお母さんがつらそうに見えてきたある冬の日だった。お母さんははやり病にかかって動かなくなった。その時の私は死ということを理解していなくてお母さんがかまってくれないって泣いていたっけ。
数日後に来た家賃取り立ての人が動かなくなったお母さんを見て嫌な顔をしてどこかへ持っていった。今なら教会へ送ったと想像できるけど、その時は違う。周りに付き合いのある人たちもいないから、葬式とかもなかった。
そして私は何もわからず、住んでいた家を追い出されて外を歩き回った。
どれだけ歩き回ったのだろう、気づいたときにはスラム街にいた。今もだけど、スラム街は小さい。本当によく見つけたなと思う。そして私は、幼く、数日間着替えず一日中歩き回って汚くなっていたこともあり、住人として迎えられた。といっても向こうは一人増えたなぐらいにしか思ってなかったと思う。それでも、今までの中で一番ここの人たちが暖かかった。
ここでの生活は本当に大変だった。基本的に食べるものにも困るぐらいだった。大人の人達のお手伝いをして食べ物をわけてもらうのだけど、たまにわけてくれない人もいて皆であの人を手伝わないように共有したっけ。
そんなあるとき、私はなにも前触れなく倒れた。三日間私は高熱にうなされてたらしい。皆は私を諦めていたらしい。私もほんとよく生きていたと思う。だいたいそういう風になったらみんな死ぬ。目を覚ますと感覚的にいつもとなにか違う感覚があった。そして、本能に導かれるままに動くと…アイテムボックスが使えた。
ここから私の運命は変わる。
仲のいい友達皆で、どうすれば使えるか話し合った。このスラムの人たちも成人する時に教会の洗礼をかならず受ける。だから、アイテムボックス自体は大人ならかなりの人が使える魔法ということは知っていた。そこである一人が言った。
「盗賊になればいいんじゃない?」
それからどんどん話が進んでいった。実行はもちろん私。計画を立てるのや、足のつかない売却ルートも一部の大人の人たちも手伝って決まった。
初めては緊張した。できるだけ普通の客と同じようにするように心がけた。私が子供ということもあってか、全く怪しまれなかった。盗むこと自体はやり慣れていたけど。
それからも順調で、怪しまれることがあっても子供だからアイテムボックスは気づかれなかった。盗むものも変わっていった。だんだん高いものを狙うようになった。そしてお金をスラムで必要な分だけとり、残りを普通の住人だけど貧しい人が多いところにばらまくようにした。私達は悪いことをしていない、正義だという感覚がよかった。本当にそのときが楽しかったな。
昨日は、ねらう候補だった商会が新人を冒険者ギルドで雇ったということを聞き、盗みに入ることが決まった。人が増えて油断しているし、新人だからなれていないということで盗みやすいの。そのはずだったのに。
私が盗んだところを見て、私を取り押さえたのは驚いたけど問題はなかった。いつものようにアイテムボックスで隠して、これで気のせいだったと終わるところだったのに……。
こうして私は牢屋にいる。くそ。くそ。どうすればよかったのよ。この町ではこれほどのことをしたら死罪だ。私は死ぬしかなかったの?
こんな世界なんか大嫌いだ。