殺人犯の行き先
何かと忙しく話の更新が遅れました。すみません。
自分と同じ思想を持つ仲間と組んでオマー・リオをリンチという形で殺めたランディ・ウィルソンに下された刑は懲役四十年。ランディの刑に対して世間では「一人の移民を複数で暴行して殺した奴の刑が懲役四十年は短過ぎる」とか、「こんな奴、終身刑にしてしまえ」と批難の声が上がっていた。
ランディが犯した悪行は惨たらしく残酷なものだった。
たった一人の移民を、仲間と組んでリンチという形で殺めるなど人間として許されないことだ。
それ故にランディに下された判決に対して批難の声が上がってもおかしくはなかった。
「あいつの判決が懲役四十年? 裁判所はいったい何を考えてこんな判決を言い渡したのかしら…」
ジョナサンは新聞を読みながら声に怒りを露にする。今日の朝刊にはランディのことが載っている。ジョナサンはランディが懲役四十年の判決を受けた記事を読んで憤りを抱いた。仮に可能であれば、裁判所に足を運んでランディの判決に対して抗議してやりたいほどであった。
「確かに奴に下された判決は甘いかもな。しかし、だからといって我々が裁判所に不服を申し立てることはできない」
ジョナサンの近くでコーヒーを飲んでいたジャックは、ジョナサンをなだめる。
「そりゃあわかっていますよ。ですが…」
警察の役目はあくまで犯罪者の逮捕。どんな悪辣な犯罪者を逮捕したとしても、その犯罪者に対して刑を下すのは警察でなく、裁判官と判事なのである。
しかし、ジョナサンはランディに殺められたオマー・リオとその遺族の立場になって考えてみると、裁判所がランディに下した判決はあまりにも手緩いではないか、と思った。
「君が奴の判決に対して手緩いと思うのは理解できる。俺も奴の判決は手緩いと思う。しかし、違う角度から考えてみれば奴の刑は極刑だ。何せ奴は仮釈放が与えられないまま刑務所に収監されるのだから、生き地獄を与えられたのも同然だ」
ジャックの言葉通りランディはこれから四十年間刑務所で過ごさなくてはならない。それも仮釈放が認められず、四十年間も刑務所に収監されるのだから生き地獄といえば生き地獄だ。
だが、ジョナサンは何も答えない。ジョナサンは一人の移民をリンチで殺めたランディに仮釈放無しの四十年間の刑期は当然の罰だと思った。
「それに奴がこれから行く先は英国の刑務所の中で、極悪人を多く収監しているバーミンガム刑務所だ」
ジョナサンは、
「バーミンガム刑務所? 奴はあの刑務所に収監されるのですか?」
と、ジャックに尋ねる。
ジャックはコクリと首をたてに振る。
ジャッグが言うバーミンガム刑務所は、殺人犯、強姦魔、ストリート・ギャング、マフィアの大物幹部、といった極悪な収監が多く収監されており、世間でバーミンガム刑務所は「英国で最も恐ろしい刑務所」と言われている。
「たった一人の移民を仲間と組んで殺めたんだ。奴には相応しい刑務所だよ。こんなことは言いたくないが、奴は恐らくバーミンガム刑務所で骨抜きにされるだろうな。バーミンガム刑務所には奴より、屈強な極悪人が多く収監されているからな」
ジョナサンはバーミンガム刑務所のことは知っている。イギリスの刑務所の中でも最も恐ろしい刑務所と、言われている刑務所に四十年間の刑期はつとめなければならないのは生き地獄だ。
四十年経てば釈放されるとはいえ、極悪な犯罪者が収監されている刑務所に四十年間も収監されるランディの移民殺しの代償は大きいものであったのだ。