猫獣人の1日
思い付いたので仕事前に書きました。初投稿ですがお気に召されましたら幸いです。
「ふぅ」尻尾を揺らしつつため息をつく。
世界が変わったあの日から、ため息をつくことが増えた気がする。
だが、地球という世界のここ、日本という国ではヒト種以外の受け入れが早かった分、他の国にたどり着いた者達より幸せなのかもしれない。
「うーっす、お先ー」ヒト種の先輩、中森さんが帰る。お疲れ様です。早く帰れるのは羨ましい。
「さて、これでどうかな」と、一人つぶやきながらプリンターで見積書を印刷する。
うむ、これなら手直しにはならないだろう。では、提出して帰るとするか。
「田中係長、お待たせいたしました。権藤商事への見積書が出来上がりましたので、ご確認いただけますか。」
後はこれだけなので、合格が出れば今日の分は終わりだ。
「・・・ふむふむ・・・うん、ありがとう。今日は上がって良いよ」
「ありがとうございます。ではお先に失礼します。」
「お、猫は上がりかー?、お疲れー。」
「お疲れさまですー」
猫て。安直なあだ名だなー。内心、同僚の佐武さんに苦笑しつつタイムカードを押して、今日は帰って晩酌をしよう。
最近の楽しみである新緑酒造の焼酎が、我ながら馴染んだものだと思わせてくれる。
風呂に入って飯を食べ、それから酒を手に取る。
「ふぅ」呑みながらまたため息。
ただの猫獣人ではあるが、かくいう私も転移してきた者達の一人だ。
ほんの1年と少し前、私たちの星から大勢の人達が地球へ落下した。歩いていた人も、座っていた人も。皆もれなく海に落っこちた。近くにいた軍艦が助けてくれなかったらと考えるのは怖いので止めておく。
で、まあ、後は、ご想像の通り、日本が真っ先に我々を受け入れてくれた。
どうやら日本では尻尾や耳がヒト種とは違う方が人気が有るらしい。
不思議な文化だ。
最初こそ竜人やオーガが力加減を間違えたり、九尾やエルフが火事を起こしたりと問題も出たが、それも慣れれば問題は無くなっていった。
今では皆、仕事に就いて生活をしているので、昔ほど自由とはいかないが、それほど悪くもないと思う。
また、明日も頑張ろう。と気持ちを入れ、布団に入る。
おやすみ。
ご覧いただきありがとうございます!
追記:感想や評価もありがとうございます!楽しんで頂けたら幸いです!